「大学校(だいがっこう)」という名称の施設は、日本国内に数多く存在しますが、制度上は一般的な「大学」とは明確に異なる区分にあります。
ここでは、大学校の定義、設置目的、法的な位置付け、および卒業後の学位取得の仕組みについて客観的に解説します。
目次
大学校の定義と法的根拠
「大学」は文部科学省が所管し、学校教育法に基づき設置される教育機関です。これに対し、「大学校」という名称を用いる施設の多くは、各省庁や独立行政法人が、自組織の専門職員の養成や特定の技能習得を目的として設置しています。
主な相違点
| 項目 | 大学 | 大学校 |
| 根拠法 | 学校教育法 | 各省庁設置法、独立行政法人法など |
| 所管 | 文部科学省 | 厚生労働省、国土交通省、防衛省など |
| 主な目的 | 学術の研究および教育 | 実務家の養成、高度な技能の習得 |
| 学生の身分 | 学生 | 学生(※一部は国家公務員) |
大学校の主な分類
大学校はその運営形態や目的により、大きく2つのタイプに分類されます。
① 省庁直轄の養成機関(省庁大学校)
国の機関が直接運営し、将来の幹部候補や専門職員を養成するための施設です。
- 防衛大学校・防衛医科大学校(防衛省): 自衛隊の幹部および自衛官である医師・保健師を養成。
- 気象大学校(気象庁): 気象業務に従事する職員を養成。
- 海上保安大学校(海上保安庁): 海上保安官の幹部を養成。
これらの機関の多くは、入学者に「国家公務員」の身分が与えられます。そのため、授業料が免除されるだけでなく、在学中に給与(手当)が支給されるのが特徴です。
② 職業能力開発・資格取得のための機関
実務に即した高度な技術・技能の習得を目的とする施設です。
- 職業能力開発大学校(厚生労働省所管): 高度な技能を有する技術者の養成。
- 航空保安大学校(国土交通省): 航空管制官などの専門職員を養成。
- 水産大学校(農林水産省所管): 水産業における専門的な技術者・研究者を養成。
学位(学士)の取得について
学校教育法上の大学ではないため、大学校を卒業しただけでは自動的に「学士」の学位は授与されません。
しかし、一定の教育水準を満たしていると認められた特定の大学校(防衛大学校、気象大学校、水産大学校など)については、独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構に申請し、審査に合格することで、大学卒業と同等の「学士」の学位を取得することが可能です。
一方、学位取得が想定されていない短期的な研修施設や、民間が運営するスクールが「大学校」の名称を冠しているケースもあり、その実態は多様です。
大学校を選択する際の検討事項
大学校への進学は、一般的な大学進学とは異なる特性を持っています。
利点
- 経済的負担の軽減: 国立大学よりも授業料が低く設定されているケースや、給与が支給されるケースがある。
- 実務に特化した環境: 現場に即した最新の設備や、特定の職種に直結したカリキュラムが用意されている。
- 進路の明確化: 卒業後のキャリアパスが各省庁の職員などに固定されている場合が多く、就職活動のプロセスが特殊。
留意点
- 生活の規律: 省庁系の大学校では全寮制を採用していることが多く、一般的な学生生活と比較して規律が厳格である。
- 進路の変更: 特定の職業人を養成する目的が強いため、他業種への進路変更を希望する場合、一般的な大学卒業者とは異なる評価を受ける可能性がある。
まとめ
大学校は、国や特定の業界が必要とする「専門性の高い人材」を育成するための重要な教育機関です。経済的なメリットや実務スキルの習得という点では非常に効率的な選択肢となりますが、その一方で独自の規律やキャリアパスの制約が存在します。
進路を検討する際には、その施設が「学位の取得が可能か」「卒業後の身分はどうなるか」を正確に把握することが重要です。
