医学部を目指す中学生・高校生やその保護者に向けて、医師の仕事や医療現場の実情、社会における医療の意義、命に関わる職業としてのやりがいがわかる書籍を10冊ご紹介します。どれも中学生でも読みやすい平易な文章や構成で書かれており、医師を志すきっかけを与えたり、志を持つ受験生が目標を再確認して努力を継続する力になったり、保護者の医学部進学への理解を深める助けとなる内容です。それぞれの本の概要やおすすめポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
『医者をめざす君へ』(山田倫太郎)
心臓に重い病気を抱えた中学生が、医師や医療者へ向けて綴ったメッセージ集です。病と向き合う当事者の視点から、医師になろうとする人が「人を治療する上で忘れてはいけないこと」を教えてくれる感動的な一冊です。医学部生にも繰り返し推薦されており、医学部入試前に必ず読んでおきたい必読書として知られています。医師志望の中高生にはもちろん、まだ医師に関心がない中学生にとっても、人の命と向き合う医療の意味を深く考えさせられるでしょう。
『医者になってどうする!』(小鷹昌明)
現役の大学病院勤務医が医学部を目指す若者に向けて本音で語るメッセージ本です。医療現場のリアルな実情や、医師が日々抱える葛藤・想いを赤裸々に綴っており、理想と現実のギャップを知ることで逆に医師への憧れを健全な形に導いてくれます。無条件の憧れを良い意味で崩し、冷静に「医師という仕事」を見つめ直す機会を与えてくれる一冊です。志望動機の確認にもなり、親御さんにとっても医師という職業の現実を理解する手助けとなるでしょう。
『未来の医療で働くあなたへ』(奥真也)
医療未来学者の医師である著者が、10~20年後の医療の姿を展望しながらこれから医師を目指す10代に伝える指南書です。ロボットと協働するのが当たり前になる近未来の医療現場を紹介し、AIや遺伝子医療など進歩する医療技術と、未来の医師に求められる心構え・進路について優しく解説しています。中高生向けシリーズ「14歳の世渡り術」として書かれており、平易な語り口で医学・医療の最前線を知ることができます。医療者を志す若者が将来像を描き、保護者も今後の医療業界の変化を理解する上で役立つ一冊です。
『医療のこと、もっと知ってほしい』(山岡淳一郎)
医療ジャーナリストが中高生に贈る医療入門書で、地域医療から救急まで現場の姿を臨場感たっぷりに伝えています。長野県の佐久総合病院を舞台に、ドクターヘリで高度救急医療に当たる一方で在宅介護を支える地域医療の日常が描かれます。様々な現場で働く医療従事者たちがどんな思いで毎日仕事をしているのか、現行の医療制度の問題点を解説しつつ理想の医療像を探っていく内容です。章構成も「なぜ医者になるの?」「あるべき医療の姿は?」といったテーマで、中高生にも理解しやすく、医療の意義を社会的な視点から学べます。医師志望の子どもと保護者が一緒に読むことで、日本の医療の課題と可能性について話し合うきっかけにもなるでしょう。
『医の希望』(齋藤英彦 編)
最新の医療技術と制度の未来を第一線の専門家たちが語る、明るい希望に満ちた医療の最前線レポートです。ロボットによる介護、AIを用いたゲノム医療、ナノテクノロジーとがん研究、iPS細胞による難病治療など、近年目覚ましい革新的技術によって医療がどう変わりつつあるかを紹介。さらに骨髄バンクや超高齢社会での介護システム、発展途上国への医療支援まで幅広いテーマを網羅し、「医療を必要とする人たちのために今できること」を問いかけます。医学会総会の記念出版として信頼性も高く、医療の未来に対する前向きな展望が示されているので、医師を目指すモチベーションを長期的に支えてくれるでしょう。保護者にとっても、医療界の今後の方向性を知ることでお子さんの将来像をイメージしやすくなる一冊です。
『まんが医学の歴史』(茨木保)
医学の発展の歴史を楽しく学べる漫画仕立ての医療解説書です。一見子ども向けの教育マンガかと思いきや、医学の偉人たちの発見から現代医療の課題まで驚くほど細かい内容を網羅しています。解剖学の黎明期からワクチン開発に至るまで、医学の研究がどのように行われ発展してきたかがストーリー仕立てで理解でき、専門知識がなくてもスラスラ読めます。医学部入試や面接で役立つようなトiviaや背景知識も多く含まれており、医学を志す前にぜひ知っておきたい教養が身につくと評判です。中高生が読んでも飽きない面白さで、親御さんにとっても医学史を通して医学への理解を深める良い機会になるでしょう。
『選べなかった命 — 出生前診断の誤診で生まれた子』(河合香織)
出生前診断を巡る現実と葛藤を描いたノンフィクションで、第50回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した話題作です。出生前診断で「問題なし」と言われ産んだ子が実はダウン症児だった──そんな繊細で重いテーマを当事者や医療者、支援者など様々な立場の証言から綴ったルポルタージュで、読む者に命の選別について深く考えさせられます。医学・医療の分野では、人の命や健康に関わるからこそ避けられない難しい倫理的テーマがあるという事実を突きつける内容です。医師を志すならこうした問題から目を背けずに向き合う必要があると気付かされ、実際に医学部の入試問題や面接でも問われることが多いテーマでもあります。中高生にとってはショッキングな部分もありますが、命の重みと医療者の責任について学ぶ貴重な一冊です。保護者の方にも命と向き合う医療の現実を知る本としておすすめします。
『ゆりかごにそっと — 熊本慈恵病院「こうのとりのゆりかご」に託された母と子の命』(蓮田太二)
日本初の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を設置した熊本慈恵病院の前院長・蓮田医師による手記です。赤ちゃんポスト設立までの想いや苦悩、世界の匿名出産の現状などが語られ、実際に赤ちゃんを託しに来る人々の背景やそれが必要とされる理由についても綴られています。「命を何よりも大切にし、当事者に寄り添い、前例がなくても信念を貫く」著者の姿勢には、読んでいて何度も胸が熱くなり涙しそうになります。医師という職業の社会的使命と、困難な状況下で命を救おうとする情熱に深く心を打たれるでしょう。人として大切なこと、医療者としての覚悟を学べる感動の一冊で、中高生にも平易な文章で読みやすく、保護者世代にも強い印象を残す内容です。
『「国境なき医師団」になろう!』(いとうせいこう)
作家・クリエイターのいとうせいこう氏が、国境なき医師団(MSF)に取材してまとめた人道援助の現場ルポです。「誰かのために世界のために何かしたい──でもどうやって?」という序章に始まり、MSFでは医師や看護師だけでなく多様な職種の人々が活躍していることを伝えます。ハイチ地震やギリシャ難民キャンプ、フィリピン台風被害、ウガンダ・南スーダン内戦地域といった世界5か国の現地ルポと、日本人スタッフへのインタビューを通じて「人道主義の最前線」が具体的に描かれます。組織のリアルな姿(派遣先や危険性、待遇、どんな人が参加できるのか等)についてもQ&A形式で明らかにされており 、グローバルな視野で医療に携わる意義を考えさせられます。国際医療協力に興味のある中高生には刺激的で、保護者の方にとってもお子さんの視野を広げる一冊になるでしょう。「医師の仕事は病院だけじゃない」ということを教えてくれる本です。
『診断 謎の症状を追う医学ミステリー』(リサ・サンダース著〈松村理司 訳〉)
米国の医師による人気医療ドキュメンタリーを元にした一冊で、難解な症状に立ち向かう診断医の推理プロセスをスリリングに描いた医学ノンフィクションです。原因不明の奇妙な症状の患者に対し、医師たちがどのように考え、手がかりを集め、診断に至ったかを一般向けにわかりやすく解説しています。医学的な専門知識がなくても読める工夫がされており、読者は医者になったつもりで謎解きに挑む感覚を味わえます。次々と展開する臨場感あふれるケーススタディはまるで推理小説のように面白く、医師の思考法や診断の重要さを学ぶことができます。現役医師である著者の体験談でもあり、医学部生や医療者にも愛読されています。医師志望の中高生には「病気の真実を見抜く」ことの難しさと醍醐味を知る絶好の機会となり、保護者にも医師という職業の知的探求の側面を知っていただけるでしょう。
各書籍とも、医療への興味関心を高めモチベーション維持につながるだけでなく、人の命を預かる仕事の尊さや大変さについて多くの示唆を与えてくれる良書です。ぜひ手に取って読んでみてください。将来の医師への道のりにきっとプラスになるはずです。
