2026年2月4日に開催された厚生労働省の「医師国家試験等改善検討部会」での議論に基づき、医師国家試験のCBT(Computer Based Testing)化に関する最新動向を整理しました。
厚生労働省は、現行の紙筆試験(PBT)形式で実施されている医師国家試験について、CBT方式への移行に向けた具体的な検討を開始しました。2026年2月4日の検討部会では、導入の目的、技術的課題、および今後のロードマップについて重要な議論が行われました。
CBT化導入の主な背景と目的
医師国家試験のCBT化は、単なる試験媒体の変更にとどまらず、医学教育の質的向上と試験の妥当性確保を目的としています。
- 評価の高度化(マルチメディア問題の導入):従来の静止画では困難だった心音・呼吸音などの音声、心エコーや身体診察の動画を用いた出題が可能となり、より臨床実践に近い能力を測定できると期待されています。
- 医学教育の一貫性の確保:2025年度より公的化された「共用試験(CBT・OSCE)」との整合性を図り、大学教育から国家試験、その後の臨床研修までを一貫した評価指標でつなぐ狙いがあります。
- 試験実施の柔軟性:年に複数回の実施を可能にすることで、受験機会の確保や、不合格となった受験者の浪人期間の短縮などが検討課題となっています。
検討部会における主要な議論のポイント
2026年2月の会議では、実務面での課題についても詳細な意見交換がなされました。
- 段階的導入の検討:すべての問題を一斉にCBT化するのではなく、一部のブロックや特定の出題形式から段階的に移行する案が浮上しています。
- インフラ整備と公平性の担保:全国数万人の受験生が同一条件で受験できるよう、テストセンターの確保やPC端末のスペック統一、ネットワーク負荷への対策が不可欠です。
- IRT(項目応答理論)の活用:試験回数が複数回に及ぶ場合、試験回ごとの難易度差を統計的に補正するためのIRTの導入についても議論の対象となっています。
今後のロードマップとスケジュール
検討部会では、2026年末までに報告書を取りまとめる方針が示されました。
今後のスケジュールとしては、この報告書に基づき、早ければ2020年代後半の試験実施分から試験形式に何らかの変更(パイロットテストの実施や部分的な導入など)が加えられる可能性があります。現時点では、直近の受験生に即座に影響が出るものではありませんが、制度の大きな転換点にあることは間違いありません。
残された課題:受験者の負担とシステムリスク
客観的な視点からは、以下の課題が依然として残されています。
- 視覚的・精神的疲労への配慮:長時間のPC操作が受験生のパフォーマンスに与える影響の検証。
- システム障害時の対応:試験中のフリーズや通信遮断といった技術的トラブルに対する、法的な救済措置や予備日の設定。
- コスト負担のあり方:CBTセンターの利用料やシステム維持費が、受験料や国費にどう反映されるかという議論。
医師国家試験のCBT化は、医学教育をより実践的かつ合理的なものに変える可能性を秘めています。一方で、国家資格の認定に関わる重要な試験であるため、その移行には高度な公平性と安定性が求められます。2026年末の最終報告書において、具体的な実施時期や運用ルールがどのように定義されるかが、今後の焦点となります。
