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2026年2月、ついに「世界初」の製品承認へ
2026年2月19日、厚生労働省の専門部会において、iPS細胞から作られた再生医療製品2品目の製造販売が了承されました。これは、2012年に山中伸弥教授がノーベル賞を受賞してから約14年、ついにiPS細胞が「薬」として一般の医療現場へデビューすることを意味します。
パーキンソン病治療薬「アムシェプリ(ラグネプロセル)」
- 開発: 住友ファーマ
- 内容: 他人のiPS細胞から作った「ドパミン神経前駆細胞」を、 パーキンソン病患者の脳に移植します。
- 効果: 治験では、薬の効果が弱まった患者において、手の震えなどの運動機能の改善が確認されました。
- 意義: 進行性の難病に対し、脳内の神経細胞そのものを補うという革新的なアプローチが実用化されます。
- 「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」において安全性と有効性が示唆 (京都大学附属病院)
- 日本における「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」(アムシェプリ)の審議予定について (住友ファーマ)
重症心不全治療用シート「リハート」
- 開発: クオリプス(大阪大学発ベンチャー)
- 内容: iPS細胞から作った心筋細胞をシート状にし、重症心不全患者の弱った心臓に貼り付けます。
- 効果: 治験に参加した全症例で、息切れや動悸などの症状が改善し、心機能の回復が認められました。
- 意義: 重症の心不全に対する「心臓移植」や「人工心臓」以外の新たな選択肢として期待されています。
他の疾患への広がり:2025年〜2026年の注目トピック
今回の承認以外にも、多くの分野で実用化が秒読み段階に入っています。
- 目の再生医療(角膜・網膜):大阪大学のチームによる「角膜上皮細胞シート」は、2024年末に臨床研究の結果が英医学誌『ランセット』で発表され、良好な視力回復が確認されました。現在は治験への移行が進んでいます。また、神戸アイセンターでは網膜再生の先進医療Bが継続されています。
- iPS細胞から作製した角膜上皮細胞シートを移植する世界初の臨床研究を完了~安全性の問題が発生せず、患者の視力回復に成功~ (大阪大学)
- がん治療(キラーT細胞):2025年末、順天堂大学などがiPS細胞由来の「キラーT細胞」を用いた子宮頸がん治療の治験で、第1例目の投与を完了しました。免疫細胞をiPS細胞から大量生産することで、がん免疫療法のコストダウンと普及が期待されています。
- 脊髄損傷:慶應義塾大学を中心に進められている臨床研究も着実にステップを重ねており、リハビリテーションとの組み合わせによる機能回復のデータ蓄積が進んでいます。
今後の課題:条件付き承認とコスト
今回の2製品は「条件付き承認」というスピード優先の制度が適用されています。
条件付き承認とは?:有効性が「推定」された段階で早期に承認し、市販後に最大7年かけて安全性と有効性を改めて確認する制度です。
そのため、今後も長期的なデータの蓄積が求められます。また、製造コストの低減も大きな課題です。現在は非常に高額な治療になることが予想されますが、自動培養技術の進展などにより、将来的に「誰もが受けられる治療」にしていけるかどうかが次の焦点となります。
再生医療の新時代
2026年は、iPS細胞が「研究室の成果」から「病院で選べる選択肢」へと変わった、再生医療元年とも言える年です。特に大阪大学(クオリプス)や住友ファーマなど、日本発の技術が世界に先駆けて実用化されたことは、日本の医療界にとって大きな誇りとなるでしょう。病気に苦しむ患者さんにとって、この「希望の細胞」が当たり前の治療として普及する日は、もうすぐそこまで来ています。
