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「2025年最新版|全国医学部の第二外国語選択傾向と人気言語ランキング」

医学部における第二外国語の位置づけ

医学部では英語が第一外国語として重視されますが、英語以外の「第二外国語」も多くの大学で初年次のカリキュラムに組み込まれています。これは、医学知識の習得だけでなく幅広い教養と国際的視野を身につける意図があるためです。特に国公立大学では全学教育の一環として1~2年次に第二外国語を履修するのが一般的で、伝統的にドイツ語やフランス語が重んじられてきました 。しかし近年は医学研究や臨床の現場で英語の重要性が飛躍的に高まっており、各大学で第二外国語の扱いにも変化が見られます。

歴史的背景と伝統

日本の医学教育では明治以来、欧米の医学書を読む必要からドイツ語やフランス語が重視され、戦後もしばらくは英語と並んで必須科目でした 。例えば昭和中期までは「ドイツ語9コマ・英語3コマ」という比重で授業が行われていた記録もあります。この名残で、多くの医学部で第二外国語=ドイツ語・フランス語という伝統が根付いていました。

現在のカリキュラム上の位置づけ

現代の医学部では第二外国語は教養教育の一部として位置づけられています。特に国立大学では全学共通の語学科目として英語に加え、ドイツ語・フランス語・中国語などから1言語を選択する形式が一般的です。必修としている大学もあれば、選択必修(指定の中から1つ履修)という形もあります。第二外国語の履修により、異なる言語圏の文化理解やコミュニケーション能力の基礎を養うことが期待されています。

英語重視へのシフト

グローバル化に伴い、英語教育を強化するために第二外国語を必修から外す動きも出ています。例えば奈良県立医科大学では第二外国語の履修を必須とせず、その時間を「医学英語」や「コミュニケーション英語」に充てています。また千葉大学医学部でも第二外国語は「必修ではないが履修を推奨」と変更され、6年間一貫の医学英語プログラムに力を入れています。このように「英語+α」の位置づけに再編する大学も増えてきました。

第二外国語の意義

実際の診療や研究で直接第二外国語を使う機会は英語に比べれば限られますが、多言語に触れることは医師としての国際感覚を養い、海外の文献や異文化への理解を深める上で意義があります。特に将来海外研修や国際協力を志す学生にとって、学生時代に第二外国語に取り組むことは有益な準備となるでしょう。また医学用語の由来(ラテン語やドイツ語由来の専門用語など)を学ぶ過程で、言語そのものへの理解が医学知識の定着を助ける面もあります。

主な選択言語

現在、医学部で履修される主な第二外国語には以下のような言語があります。多くの大学では7~8種類程度の言語から選択可能で、地域性や大学の方針によって提供言語に特徴が見られます。

ドイツ語

伝統的に医学部生に人気の高い言語です。日本の医学は歴史的にドイツ語文献に学んできた経緯があり、多くの大学で開講されています 。医師の間で今なお使われる専門用語(解剖学用語など)にドイツ語由来のものもあることから、「医学部ならドイツ語」というイメージが根強く存在します。例えば東京大学でも医学部進学予定の学生が「将来医学部に行くのでドイツ語にした」と回答している例があります。

フランス語

ドイツ語と並ぶ伝統的な第二外国語です。医学・生物学の分野でフランス発祥の知見も多く、過去には多くの医学部で選択肢に含まれてきました。現在でも主要大学では開講されており、同じアルファベットを使うため日本人には親しみやすいヨーロッパ言語として人気があります。

中国語

近年履修者が増えている言語の一つです。話者人口の多さや経済的台頭から「実用的で役立つ」という理由で選ぶ学生が多い傾向があります。漢字圏であるため日本人には読み書きで有利な面もあり、将来中国への留学や中国人患者とのコミュニケーションを視野に入れて選択する医学部生もいます。

スペイン語

世界的な話者数の多さから非常に人気が高まっている言語です。実際、東京大学では新入生の第二外国語としてスペイン語履修者が近年最多となっており「多くの人と話せるから」という動機が挙げられています。医学部生にとって直接医療で使う機会は多くないものの、グローバルヘルスや中南米への関心から選ぶ学生もいます。

朝鮮語(韓国語)

韓国・朝鮮語も選択可能な大学が増えています。日本語話者にとって文法構造が似ており学びやすい点や、近年の韓国文化ブームもあって履修希望者が一定数います。例えば香川大学医学部ではフランス語・ドイツ語・中国語・韓国語から選択できるなど、主要言語の一つとして扱われています(学生の質問例より)。

ロシア語

伝統的に開講されている大学も多いですが、文字(キリル文字)の習得が必要なこともあり履修者は限定的です。理系学生ではあえて難易度の高いロシア語に挑戦する人もいますが、医学部では「ロシアの医学に興味がある」「個人的関心が強い」場合に選ばれる傾向があります。

イタリア語

イタリア語を選択肢に含める大学もあります。スペイン語と同じラテン系で発音が比較的易しく、音楽・美術といった文化への憧れから履修する学生もいます。医学そのものとの直接的関連は薄いものの、選択肢が豊富な大学では一定の人気を集めています。

ポルトガル語

非常に限られた大学でしか開講されませんが、地域事情によっては提供されています。例えば群馬大学医学部では在日ブラジル人コミュニティが多い地域性を反映し、第二外国語にポルトガル語が用意されています 。ブラジル人患者対応など実利的な理由で履修する学生もいますが、開講大学は少数です。

その他の言語

一部の大学ではラテン語を教養科目として選択できるケースもあります。ラテン語は会話言語ではありませんが、医学用語の源流として学習する意義があります(富山大学では自由単位でラテン語講座を開講し、興味ある医学生が受講する例があります )。また大学によってはヘブライ語やアラビア語など独自の言語を提供することもあります が、医学部生の履修としては稀です。

人気傾向と理由

第二外国語の選択傾向は時代や学生のニーズによって変化しています。最近の医学部生の間で特に人気が高まっているのはスペイン語と中国語で、逆に伝統的なドイツ語・フランス語離れも指摘されています。もっとも、どの言語を選ぶかは最終的に個人の興味・将来計画・難易度など様々な要因に左右されます。主な傾向とその理由を以下にまとめます。

実用性・話者数重視の傾向

「より多くの人と話せる」との観点から、スペイン語や中国語の人気が高まっています。これらは世界的に話者人口が多く、将来医師として海外で活動したり多国籍の患者と接したりする上で役立つ可能性があるためです。特にスペイン語は近年教養課程全体でも履修者が急増しており、その流れは医学部生にも及んでいます。

伝統や専門性を意識

医学部では今なおドイツ語を選ぶ学生も少なくありません。「先輩医師から『医学部ならドイツ語』と勧められた」「医学の古典も読めるように」といった動機や、理系学生として漠然とドイツ語を選ぶケースがあります。医学部進学予定者が多い東京大学理科三類でも、中国語と並んでドイツ語の履修者が多いというデータがあり 、依然として一定の支持があります。

学習難易度への考慮

第二外国語は限られた時間で習得するため、「できるだけ楽に単位を取りたい」という本音も存在します。例えば「新しい文字を覚えなくて済む」という理由でフランス語やドイツ語を勧める意見があります (ロシア語のキリル文字や中国語の漢字学習を避けたい場合)。一方で「日本語と文法構造が似ていて覚えやすい」との理由から韓国語を選ぶ学生もおり、「中国語や韓国語は簡単」という噂が一般的に語られることもあります。実際の難易度は教員や個人の適性にもよりますが、こうした先入観が選択に影響することも少なくありません。

個人の興味・将来像

大学の語学は貴重な教養の機会でもあるため、自分の関心に沿って選ぶ学生も多いです。例えば「将来国際医療ボランティアで中南米に行きたいからスペイン語」「ヨーロッパ文化に興味があるのでイタリア語」「留学生と交流したいので日本で人気の韓国語」といった具合です。興味がある言語の方が勉強のモチベーションを維持しやすく、忙しい医学部生活でも頑張れるという考えから、自分に合った言語を選ぶことが推奨されています。

履修後の到達度

多くの学生に共通するのは、「一年程度大学で学んだだけでは第二外国語で専門的な会話や読解を自在に行うのは難しい」という認識です。そのため「実際には将来使わないかもしれない」と割り切って、あまり深刻に考えすぎず気楽に選ぶ人もいます。特に医学部の専門科目が本格化する前提で、語学は基礎的な教養と位置づけ、卒業後に使う場面がありそうかよりも「履修しやすさ」や「興味の持続」を重視する傾向が見られます。もっとも、選んだ言語をきっかけに留学や国際交流へと視野を広げる学生もおり、履修後の活用は本人の努力次第とも言えます。

国公立・私立別の傾向と特徴的な大学例

医学部の第二外国語については、国公立大学と私立大学でカリキュラムの位置づけや選択肢に違いが見られることがあります。それぞれの傾向と、特徴的な取り組みを行っている大学の例を紹介します。

国公立医学部の傾向

国立大学や公立大学の医学部では、一般教養課程において第二外国語の履修が半ば標準化されています。多くの場合、全学共通で開講されている7~8言語(ドイツ語・フランス語・中国語・ロシア語・スペイン語・イタリア語・朝鮮語など)から1つを選び、1年次通年で学ぶ形です。例えば大阪大学医学部ではドイツ語、フランス語、中国語、ロシア語、朝鮮語、スペイン語、イタリア語の7か国語が第二外国語として提供されており、学生はいずれか1言語を選択して必要単位を取得します。また東京大学でも全新入生がドイツ語・フランス語・中国語・スペイン語・イタリア語・ロシア語・韓国朝鮮語の中から必ず1つ履修する決まりで、医学部進学予定者も例外ではありません。一方で、地域のニーズに応じた特徴もあります。先述の群馬大学のようにブラジル人住民の多い地域ではポルトガル語が選択肢に含まれるケースもあり 、熊本大学のようにヘブライ語やラテン語まで開講している大学も存在します。

英語重視への改革例(国公立)

国公立の中でも近年カリキュラム改革で第二外国語の位置づけを見直す大学があります。千葉大学医学部(国立)はその例で、従来は必修だった初修外国語を「自由選択科目(履修推奨)」に切り替え、代わりに全6年間を通じた医学英語教育(English for Medical Purpose)を充実させています 。奈良県立医科大学(公立)も独自色が強く、第二外国語を一切課さずに英語の授業を増やしています。1年次から「毎日英語の日記提出」や専門的語彙の習得など徹底した英語教育を行い、外国語は英語一本に集中するという割り切った方針です。このように国公立でも従来の形式にとらわれず、実践的な語学運用能力(特に英語)を重視したカリキュラムに移行する大学が出始めています。

私立医学部の傾向

私立大学の医学部では、第二外国語の扱いに大学ごとの個性が現れます。伝統的な私立医大では1年次に英語以外の外国語科目を配置し、ドイツ語・フランス語など主要言語を学ばせる点は国公立と共通です。ただし、開講言語の数は大学規模により様々で、必要最低限の言語のみ提供しているケースもあります。例えば北里大学医学部ではカリキュラム上、1年次に「言語と文化A」という科目枠でドイツ語またはフランス語を履修できるようになっており(英語は別途必修) 、選択肢は欧州2言語に絞られています。このように私立では提供言語が絞られる一方、授業の少人数制や独自教材の採用などできめ細かい指導を行う大学もあります。

革新的な取り組み例(私立)

私立医学部の中には語学教育で独自の工夫を凝らす大学もあります。東京の日本医科大学では2016年度にカリキュラム改革を行い、従来のドイツ語・フランス語の必修授業を廃止して「世界の言語と文化」という新プログラムを導入しました。これは特定の一言語を深く学ぶのではなく、世界の様々な言語や文化に触れる講義形式の科目で、将来医師として必要な幅広い国際教養を身につけさせる試みです。国際医療福祉大学(私立)の医学部では、英語を主媒介語とした講義が大半を占め、在学生の約7人に1人が留学生という環境を実現しています。授業のほとんどを英語で行うことで、英語そのものと医学知識を統合的に学ぶ内容言語統合型学習(CLIL)を取り入れており 、結果的に第二外国語の比重は極めて小さくなっています(必要に応じ日本語補習や他言語講座もありますが、カリキュラムの軸は英語)。また杏林大学医学部では「グローバルに活躍できる医師の育成」を掲げ、在学中に海外研修プログラムへの参加機会を豊富に用意しています。こうした大学では語学科目としての第二外国語よりも実地での語学運用(留学・国際交流)が重視される傾向があります。さらに兵庫医科大学では4年次に「英語で学ぶ臨床推論」という科目を開講し、将来海外からの患者に対応できるコミュニケーション力を養うユニークな試みも行われています。このように私立医学部では、それぞれの建学の精神や教育目標に沿って第二外国語や語学教育の位置づけが工夫されているのが特徴です。

受験生へのアドバイス

医学部志望の受験生にとって、入学後の語学履修はあまり直接の合否要因ではありませんが、大学生活や将来像を考える上で知っておきたいポイントです。最後に、これから医学部に進む皆さんへの第二外国語に関するアドバイスをまとめます。

大学ごとのカリキュラムを把握

志望大学のカリキュラムを事前に調べ、第二外国語が必修か選択か、どんな言語が選べるかを確認しておきましょう。大学公式サイトのカリキュラム表や履修要項に記載があります。例えば「英語以外にドイツ語とフランス語から選択必修」「第二外国語の履修なしで英語集中」など大学によって方針が異なります 。自分が興味のある言語が選択可能かも含め、入学後のイメージを持っておくと良いでしょう。

言語選択は興味と目的を優先

入学後に第二外国語を選ぶ際は、自分の興味関心や将来の目標を第一に考えてみてください。好きな国の言語や文化であれば学習意欲が続きやすく、忙しい医学部の勉強との両立もしやすくなります。また将来「この国で研修したい」「○○語圏の患者さんに対応したい」といった明確な目的があるなら、その言語を選ぶのは大いに意味があります。逆に特にこだわりがなければ、興味を持てそうな言語を直感で選んでも大丈夫です。大学の第二外国語は基本的な文法と会話の初歩を学ぶ場なので、どのみち高度な専門会話まで習得するには至りません。したがって深刻に悩みすぎず、「これなら頑張れそう」と思える言語を選択するのが良策です。

難易度や評判も参考に

とはいえ履修後の負担も考慮したいところです。先輩の話や大学生協のアドバイスによれば、「アルファベットを使う欧州語はとっつきやすい」「漢字のおかげで中国語の読みは取り組みやすい」等の声があります 。一方でロシア語のように新しい文字体系を覚える必要があるものや、ドイツ語のように文法変化が複雑なものは苦戦しやすいとも言われます。ただし実際の履修のしやすさは「どの先生に当たるか」や授業の進度にも左右されます。入学後に上級生から「この言語はテストが優しい」「課題が大変」など生の情報を集めるのも有用です。語学は評価方法が筆記試験中心か会話課題中心かで相性もありますので、自分の得意なスタイルに合いそうか見極めるのもいいでしょう。

英語力の土台を疎かにしない

第二外国語を何にするにせよ、医学部生にとって英語が最重要であることは言うまでもありません。英語論文を読んだり海外の最新医療情報を得たりする機会は今後必ず訪れます。まずは英語の基礎力をしっかり固めつつ、第二外国語はプラスアルファとして楽しみながら学ぶという姿勢がおすすめです。中には第二外国語をきっかけに第三外国語、第四外国語へと興味を広げる学生もいますが、それも英語あってこそ活きてきます。奈良県立医科大のように最初から英語一本で勝負する医学部もありますが 、多くの大学ではせっかくの機会ですので新たな言語との出会いを積極的に活用してください。

将来的な活用法を考える

学んだ第二外国語を将来どう活かすか、現時点で明確でなくても構いませんが、漠然とでも考えておくと学習に張り合いが出ます。例えば「将来、学会でドイツに行くかもしれないからドイツ語を読めるようにしよう」「留学生と交流する場でフランス語が話せたら楽しそうだ」など、小さな目標設定がモチベーション維持につながります。仮に卒業後すぐ直接役立たなくても、第二外国語に取り組んだ経験は語学の勘や勉強法の習熟といった形で必ずプラスになります。医師となった後も、必要に迫られてから新しい言語を学ぶ場面(海外研修や国際学会など)は出てきます。その時に学生時代の経験が自信となるでしょう。

第二外国語は医学部生活を豊かにするスパイスです。深い専門知識を身につける医学部だからこそ、異なる言語と文化に触れる時間を大切にしてください。どの言語であれ、習得を通じて培った国際的な視野やコミュニケーション力は、医師となったとき必ずあなたの糧になるはずです。ぜひ前向きにチャレンジしてみてください。  



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