大学受験の出願書類の一つである高等学校の「調査書」をめぐり、「出願前に生徒や保護者がその内容を確認できるのか」、「担任の先生が内容を見せる義務があるのか」がしばしば議論になります。調査書は高校生活での成績や活動状況を記録した重要書類ですが、その中身はブラックボックスになりがちで、「中身がわからないのに人生を左右する」といった印象を持たれることが多かったようです。ここでは、調査書の役割や法的な位置づけ、生徒、保護者の閲覧権や教師の開示義務の有無について、制度的、法的、倫理的観点から考察します。生徒、保護者と教師双方の立場に配慮し、公正で中立的にまとめます。
目次
調査書とは何か
調査書(いわゆる内申書)とは、受験生が高校時代にどのような学校生活を送ったかを記録した書類です。高校在学中の担任などの教員が作成し、他の出願書類とともに志望大学へ提出されます。内容には学業成績(各科目の評定や修得単位数)、全体の成績平均(評定平均値)、特別活動の記録(委員会・生徒会活動や学校行事での役割)、総合的な探究の時間の取り組み、部活動や資格取得・表彰歴、出欠状況など高校での学習、活動状況が幅広く記載されます。これら多くの項目は高校の「指導要録」(在校中の公式記録)に基づき転記されますが、とりわけ「指導上参考となる諸事項」や「備考」欄には各生徒の特徴や特記事項が記述され、調査書の中でも教師の所見が反映される重要な部分となっています。
大学入試では原則としてすべての大学で調査書の提出が義務付けられており、高校から大学への進学には欠かせない書類です。高校受験(中学校から高校への進学)では都道府県ごとに様式が異なりますが、大学受験向けの調査書様式は文部科学省が全国共通の様式を指定しており、毎年その様式に沿って各高校がの教員が作成します。つまり、調査書は高校側が公式に発行する生徒の証明書であり、出願先大学に生徒の学業、人物像を伝える資料として重要な役割を担っています。
学校教育法と個人情報保護法
法律上、調査書は学校が作成、提供すべき公式文書として位置づけられています。例えば、学校教育法施行規則では、中学校卒業後に生徒が高等学校等に進学する場合、校長が進学先の校長宛てに調査書等を送付しなければならないと定めています。これは高校入試に関する規定ですが、高校から大学への進学時についても、各高校長が生徒の調査書を作成し提出することが事実上求められており(大学入学者選抜実施要項に基づく)、調査書は進学過程において公式に取り扱われる非情に重要な書類です。
一方、調査書に記載される内容は生徒本人に関する個人情報であり、その取り扱いには個人情報保護の観点も関わります。日本ではプライバシー権の一内容として「他者が保有する自己の個人情報の開示を求める権利」が認められると解されています。2003年に制定された個人情報保護法の施行以降、一定規模以上の民間学校や国の機関に対し、生徒は自分の情報の開示請求ができるようになりました。公立学校についても各自治体の個人情報保護条例によって、生徒、保護者は教育委員会や学校に自己情報の開示を請求する権利を有しています。
もっとも、そうした開示請求権にも例外や制限が設けられる場合があります。多くの自治体の個人情報保護条例では、「開示すると事務の適正な執行に支障が生じる恐れがある場合」などに情報の非開示(開示拒否)が認められています。学校現場ではこの規定を根拠に、「調査書を本人に見せると教師と生徒の信頼関係が損なわれ、適切な評価ができなくなる」などとして、生徒本人への調査書開示に消極的な対応をとるケースが多いようです。
しかし近年、個人情報保護の意識向上や生徒・保護者からの開示請求増加を受けて、自治体ごとに対応が分かれ始めています。例えば成績や出欠記録など客観的な項目のみ開示に応じる自治体、あるいは担任所見欄も含めて全面的に開示する自治体も増えてきています。これは調査書があくまで生徒本人の情報であり、その正確性や公平性を期すためには本人確認が望ましいとの考え方が広がっているためです。後述するように、誤記載の発見や信頼性向上の観点から、生徒本人への開示を積極的に進める動きも見られます。
生徒・保護者が調査書を事前閲覧する権利は?
生徒本人や保護者が調査書の内容を事前に確認する権利については、法的にも議論のある問題です。基本的に、生徒本人は自分の個人情報である調査書の開示を請求することができますが、それが出願前に閲覧できるかとなると運用は自治体や高校によってさまざまです。
過去の裁判例では、生徒が自分の調査書(内申書)内容の開示を求めたケースがあります。大阪府高槻市では、中学3年生の生徒が高校受験の志望校選びのために、自分の内申書を市の個人情報保護条例に基づき開示請求しました。この生徒は校則に反して私服登校を続けていたため、「そのことが調査書の所見欄にどう書かれているか気になった」ということでした。当初、市教育委員会は「文書不存在」(まだ調査書が作成されていない)として請求を退けましたが、生徒側は実質的な非開示決定だとして不服申立てを行いました。市の個人情報保護審査会は「調査書は近い将来必ず作成される予定文書であり、作成後に開示請求しても目的が達成できない」として、作成前であっても開示を認める答申を出しています。さらに審査会は「開示しても教師の教育評価権は侵害されない」「評価基準が適切なら、生徒・保護者との信頼関係も損なわれない」とも述べ、生徒本人への開示を全面的に支持しました。
このケースでは、一審の大阪地裁判決(平成6年12月20日)は最終的に「総合所見欄(担任の主観的所見部分)以外は開示すべきであった」と判断し、生徒に対する慰謝料の支払いを命じました。成績や出欠など客観的な情報は本人に見せないのは違法と認めたことになります。一方、担任の所見が書かれる総合所見欄については「本人に知らせないことが正当である情報」に該当するとされ、非開示もやむを得ないと判断されました。裁判所も調査書の中でも主観的評価部分と客観的事実部分を分けて考えていることが判断されます。
その後、生徒側は非開示処分自体の取消を求めて控訴しましたが、控訴審の大阪高裁(平成8年9月27日判決)も「調査書は既に高校に提出済みであり、取消の実益がない」として訴えを退けます。一方、非開示が違法だった部分(所見欄以外の開示)についての慰謝料命令は確定し、この点は行政も受け入れました。つまり「成績・出欠などは本人に開示すべき」という判断が事実上確立した形といえます。
その後、別の裁判例では所見欄も含めた全面開示を認める高裁判決(大阪高裁平成11年11月25日)も出ましたが、最終的には最高裁判所が2003年11月11日の判決で「全面開示は必要ない」との立場を示しました。最高裁は、小学校の指導要録の所見欄等の開示拒否処分取消訴訟において、「所見欄や行動・性格の記録は教師の主観に左右される人物評価情報であり、これを開示することによって記載内容が形骸化・空洞化して今後の適切な指導に支障を来す恐れがある」として、非開示を適法と判断しています。この最高裁判決により、教師の主観的評価部分については生徒本人でも閲覧できない場合があり得ることが示されたと言えます。
生徒・保護者には調査書の内容(特に成績など客観的事項)を知る権利があると解されてきていますが、担任所見など主観的評価部分については必ずしも事前閲覧が認められないのが現状です。ただしこれは法的義務として一律に禁止されているわけではなく、あくまで「非開示も許される」という判断です。実際には自治体や学校の裁量で所見欄も含め見せても差し支えないという方針をとるところも近年増えており、生徒側から見れば自分の調査書を事前に確認する道は少しづつ広がりつつあると言えるでしょう。
教員が調査書を見せる義務はあるか?
では、担任教師や進路指導担当の教員が生徒に調査書を見せる義務はあるのでしょうか。この点について、現行の法令で明示的に「事前に見せなければならない」という規定はありません。調査書はあくまで校長が進学先に提出する公式文書であり、作成にあたって担任教員の所見や評価が含まれるとはいえ、法令上は「生徒への交付義務」は規定されていません。したがって、全国一律のルールとして教師に開示義務が課されているわけではなく、各学校や設置者(教育委員会など)の方針によって対応が分かれているのが実情です。
個人情報保護法や自治体条例に基づき生徒本人から正式な開示請求があれば、公立学校であれば教育委員会等が開示可否を判断することになります。この場合でも多くは「所見欄以外は開示」「所見欄は非開示」といった対応を取ってきました。一方、近年では学校側が独自の判断で積極的に生徒本人に内容を見せるケースも増えています。例えば学校によっては、調査書を作成した段階で担任が生徒と面談し、記載内容(成績や活動記録、提出書類への添付ミスがないかなど)を確認する運用を行っているところもあります。これは教師に法的義務があるからというより、生徒との信頼関係を重視し「隠し事をしない」姿勢を示すためや、後から誤記載が発覚してトラブルになることを防ぐための自主的な取り組みといえます。
自治体レベルで教員に調査書を事前開示させることを事実上義務付ける動きも出ています。大阪府堺市教育委員会は、高校入試で中学校が作成する内申書(調査書)の誤記載問題が相次いだことを受け、再発防止策として高校出願前に生徒と保護者に内申書を開示する方針を打ち出しました。具体的には、中学校長、担任に対し出願前に生徒本人へ内申書内容を確認させることを指示しており、2023年度入試より実施されています。このように自治体が方針を示した場合、当該地域の公立学校教師には実質的に事前開示の「義務」が課されることになります。逆に言えば、そうした方針がない地域では、生徒から求められても「見せるかどうかは学校・教師の裁量」となり、対応が分かれている状況です。
私立高校の場合も、学校ごとに対応は様々です。個人情報保護法のもとで生徒(本人)から開示請求があれば応じなければならない立場にはありますが、出願前に生徒が任意で閲覧できるかは学校の方針によります。進路指導上、生徒と調査書記載内容について事前に話し合う学校もあれば、提出後に希望があれば写しを渡すという対応の中学校や高等学校もあります。一部では「学校が発行する正式文書なので、生徒には渡せない」として厳格に非開示を貫く学校もあるようです。教師が事前に調査書を見せる義務があるかどうかは、制度上明文化はされていないものの、実際には所属する学校や地域の方針によって異なるというのが実態です。
調査書をめぐる課題・問題点
調査書の事前開示をめぐっては、開示しない運用による課題と、開示することの利点および懸念がそれぞれ指摘されています。
まず非開示を貫いていたこれまでの運用では、調査書の内容が生徒に知らされないことから生じる不信感やブラックボックス化が問題視されてきました。調査書は生徒の進路を左右する重要資料であるにもかかわらず、生徒本人が内容を知らないまま提出されることで、「本当に正しく書かれているのか」、「主観的な評価で不当に低く書かれていないか」といった不安を生徒、保護者に与えていました。評価の透明性が欠けることで、生徒と教師の間に見えない溝が生じたり、進路指導への不満が高まるケースもあります。
さらに深刻なのは、調査書の記載ミスによる不利益です。近年、情報開示請求などをきっかけに調査書の誤記載が発覚する事例が各地で報告されています。堺市のケースでは、ある生徒が入試後に成績の開示請求を行った際、自分の内申点の誤りに気づいたことから調査書誤記載問題が明るみに出ました。調査の結果、過去6年間で市内27校、約300人分の調査書に記載ミスが発覚しました。そのうち「本来は合格だったのに記載ミスで不合格になっていた生徒」が2人いたことも判明しました。愛媛県でも2006年、県立高校入試で不合格だった生徒が開示請求した結果、内申書のミスが判明して追加合格になった例があります。このように、非開示のままだと誤りが検証されず、最悪の場合生徒の進路に取り返しのつかない影響を及ぼす可能性があります。事前に生徒本人が内容確認できていれば防げたはずのミスで不合格になってしまうのは大きな生徒の将来に大きな影響を与える問題であり、公平・公正な入試制度の観点からも改善が求められます。
一方、調査書の内容を生徒に開示することには多くのメリットがあります。まず通り上に述べた通り、記載ミスの防止につながります。生徒自身が確認することで、担任教師も緊張感を持って記入ミスを防ごうというインセンティブが生まれます。さらに、生徒から指摘を受けて誤りに気付くことも期待できます。実際、堺市教委は事前開示の方針を打ち出すとともに、「従来は学校現場でミスは起こる可能性があるという前提で点検する仕組みが不十分だった」と反省点を述べています。ダブルチェックに生徒本人も加わることで、調査書の信頼性が高まるでしょう。
評価の透明性が高まることで、生徒の納得感、安心感が得られます。自分の努力や成果が正当に評価され調査書に反映されていることを確認できれば、生徒は安心して受験に臨むことができます。もし調査書に記載された自分の記録と自己認識にギャップがあれば、事前に担任と話し合うことで誤解を解いたり、残りの学校生活で改善に努めたりする機会も得ることもできます。教育的観点から見ても、評価内容をフィードバックすることは生徒の成長につながる可能性があるのではないでしょうか。
生徒・保護者との信頼関係の向上も期待できます。過去には、調査書非開示の理由として「生徒に見せると信頼関係が崩れる」という指摘がありました。しかし、現代では「隠さず見せることで信頼を得る」方向に社会の感覚は変わりつつあります。教師が胸を張って評価した内容であれば、生徒に開示して説明することで相互理解が深まり、評価の納得感も高まるでしょう。もし生徒側に不満や質問があれば受け止めて議論することで、教師自身の評価姿勢を見直すきっかけにもなります。教育の本来の目的は「生徒の成長を助けること」です。そのことを考えれば、評価を一方的に密室で行うより、透明性のある評価と対話が望ましいのではないでしょうか。
しかし、調査書の全面開示には慎重論もあります。最大の懸念は前述の最高裁判決が指摘したように、教師が記載内容を自己検閲してしまい、調査書そのものが形骸化する可能性です。生徒に見られることを前提にすると、教師がネガティブな情報を書きづらくなり、本来伝えるべき情報が省略されてしまう恐れがあります。「良いことしか書かれない調査書」になってしまえば、大学側にとって資料価値が下がり、入試で調査書を参考にする意義が失われかねません。また、教師と生徒の関係が必ずしも良好でない場合、開示によってかえって軋轢が生じるリスクも指摘されています。評価をめぐってトラブルになったり、保護者から評価内容にクレームがついたりすれば、学校現場の負担が増す可能性もという可能性もあります。
以上のように、調査書の事前開示には「公平性・透明性の確保」という利点と、「評価の萎縮や現場負担」という懸念の両面があります。理想としては、生徒も教師もお互いの立場を理解し、調査書に生徒・保護者と教員とのあいだいに乖離がないよう日頃から十分なコミュニケーションを取っておくことが重要でしょう。日常的に成績や生活態度についてフィードバックし合っていれば、調査書に書かれる内容もおおよそ生徒の予想通りとなり、事前に見せる・見せないという問題が起こる場面も少なくなるはずです。
実際の運用例、行政の見解
調査書の事前開示をめぐる実際の運用は、地域や学校により様々です。その中で近年注目された例をいくつか紹介します。
大阪府堺市のケース
前述の通り、堺市教育委員会は2022年、内申書の記載ミス問題を受けて「高校出願前に生徒、保護者へ内申書を開示する」ルールを決定しました。具体的には、中学校で内申書を作成後、出願用に提出する前に生徒と保護者が内容を確認します。この取り組みについて、堺市教委の検証委員会報告書は「内申書(調査書)の開示は記載ミスの防止に加えて評価の透明性を高める」と意義を述べています。実際、事前開示の結果として生徒から指摘があれば修正が可能になり、誤記載による受験機会の不利益を未然に防げるようになりました。報告書はあわせて「内申書はこれまで中身がブラックボックスだった」と指摘しており、開示によって生徒にとっても安心材料になることが期待されています。堺市の例は自治体主導で透明性向上策を講じた先進事例と言言えます。
茨城県のケース
茨城県教育委員会は2024年度の県立高校入試から、受験後に生徒本人が自分の調査書を閲覧、コピー取得できる制度を開始しました。これは入試結果公表後、希望する受験生に対して出願時に提出された調査書を本人提供するものです。法的には個人情報保護法第69条2項1号(行政機関による個人情報の本人提供)に基づく措置であり、「受検者が提出された調査書を速やかに確認できるようにすることで入試の適正化を図る」目的としています。期間を限定し閲覧のみ許可する形ですが、公的機関が生徒本人への調査書提供を明文化した例として注目に値します。茨城県教委は、「公平、公正な選抜のため、生徒に自身の調査書を確認させることは有益」と判断したと言えます。
生徒・保護者の声
実際に調査書を見たいと願う生徒や保護者の声には切実です。冒頭で紹介した高槻市の事例の生徒のように、「校則違反が調査書にどう書かれるか不安」という生徒もいれば、「納得のいく受験をするために内容を確認したい」と願う保護者もいます。特に、医学部の推薦入試などで調査書の占めるウェイトが大きい場合、「部活動や資格取得などアピールすべき事項が漏れなく書かれているか確認したい」、「欠席日数について備考欄にどのように記載されているか知りたい」という要望があります。調査書は生徒の努力の集大成とも言えるため、それを自分の目で確かめたいと思うのは自然な感情だと思います。
他方、「教師の立場も理解できる」とする声もあります。教師側からすれば、「評価を書いても生徒にすぐ見られるとなると、本音を書きにくい」という懸念や、「生徒に遠慮して甘い評価になれば、それはそれで他の生徒との公平性を欠く」という板挟みです。「先生が自由に評価できるよう、調査書は見ない方がよいのでは」という意見を持つ保護者もいます。生徒の知る権利と教師の評価の自由のバランスについては、教育現場でも意見が分かれます。
文部科学省や教育専門家の見解:
文科省は調査書様式の統一や電子化推進など制度整備に力を入れていますが、「生徒への事前開示」について明確な通達は出していません。これは調査書は、各学校設置者(自治体や学校法人)の裁量事項と捉えているためと思われます。ただし近年、調査書の信頼性確保という観点からも、第三者による点検や電子システムによるミス防止などは奨励されています。調査書の電子化に関する文科省資料でも、個人情報保護法制の遵守を各教育機関に求める一文があり、法に則った適切な扱い、つまり必要なら本人への開示も含め検討すべきことを示唆しているとも読めます。教育社会学者など専門家からは、「調査書の透明性向上は時代の流れ」「生徒・保護者と学校との協働による進路選択が重要」といった提言も見られます。総じて、情報公開と公正な評価のバランスを取りつつ、生徒の納得度を高める方向へ議論は進んでいる印象です。
誠実で透明性の高い進路指導のために
高等学校の調査書をめぐる生徒の閲覧権と教師の開示義務について、制度的、法的、倫理的に考察してきました。結論として、生徒が自分の調査書を事前に確認することは「権利」として根拠があり、少しずつ認められつつあるものの、担任教師に一律の「見せる義務」が課せられているわけではないというのが現状です。法制度上は、生徒本人の開示請求権が認められ情報公開の流れも拡大していますが、教師の評価権との調整から主観的評価部分の事前開示には慎重な姿勢が維持されています。
教育の場においては、生徒の将来に関わる重要情報をできる限りオープンにし、公平、誠実に向き合うことが求められます。調査書の内容を共有することは、生徒・保護者との信頼関係を築き、誤解やミスを減らし、ひいては教師自身の評価の公正さを高めることにつながることは間違いありません。各学校、教師が法的義務の有無に関わらず誠実な対応を心掛け、生徒もまた自らの学校生活を客観的に振り返る姿勢を持てば、調査書は単なる進学資料に留まらず教育的な成長のツールともなると思えます。
今後、調査書の事前開示に関する全国統一のルールが整備されるかは現時点では不透明です。っしかし、少なくとも「中身がわからないまま未来が決まる」という不安を取り除く方向で議論が進むことが期待されます。生徒の知る権利と教師の評価権の調和を図りながら、透明性の高い進路指導体制を築いていくことが重要です。これによって、生徒、保護者、教師の三者が納得のいく形で進路選択に臨み、誰もが公平に受験に臨むことのできる教育環境が実現されることが望まれます。
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