医学部専門個別予備校

医学部受験生必見!共通テスト模試は本当に受験すべきか

私立医学部を目指す受験生にとって、「共通テスト模試を受けるべきかどうか」は大きな悩みの一つです。

共通テスト(旧センター試験)は国公立大学受験では必須ですが、私立医学部の一般入試では課されないケースも多く、準備に時間を割くべきか迷う方もいるでしょう。

ここでは、高校生・浪人生・再受験生やその保護者の皆様に向けて、私立医学部専願の受験生が共通テスト模試を受けるメリット・デメリットを多角的に考察します。

共通テスト模試の役割と私立医学部受験における位置づけ

まず、共通テスト模試とは大学入学共通テスト(以下、共通テスト)を想定したマーク式の模擬試験です。全国規模で実施され、偏差値や合格可能性判定が出るため、自分の学力位置を知る指標になります。河合塾・駿台予備校・代々木ゼミナール・東進など大手予備校が年に複数回開催しており、高校3年生や浪人生の多くが受験します。実際、2024年に実施された河合塾「第2回 全統共通テスト模試」には現役生・既卒生あわせて30万人以上が受験しており、日本最大規模の模試となっています。このように共通テスト模試は大学受験生全体では一般的なイベントですが、私立医学部志望者にとってはその重要性が志望校戦略次第で変わる点に注意が必要です。

国公立大学医学部を目指す場合、共通テスト(5教科7科目程度)の受験は避けられません。そのため国公立志望者は共通テスト模試も必須の位置づけになります。一方、私立大学医学部の場合、一般入試では英語・数学・理科(二科目)・小論文・面接が課されるのが一般的で、共通テストの得点を利用しないケースが多々あります 。私立医学部では共通テストが不要なため、受験生は必要な科目(英数理など)に集中して対策を立てることが可能です。この違いから、「私立専願なら共通テスト模試を無理に受ける必要はないのでは?」という考えも生まれます。

しかし近年、私立医学部の約半数(2025年度は17校)が「共通テスト利用入試」を導入しており、共通テストの成績で合否判定を行う私立医学部も増えてきました。共通テスト利用入試には「少ない科目で受験できる」、「試験機会が増える」といったメリットがあり、多くの受験生が毎年活用しています。そのため、たとえ私立大が第一志望でも共通テストを併用して合格のチャンスを広げる戦略は一般的になりつつあります。実際、河合塾の分析によれば共通テストの平均点難化や新課程への不安から、「不安定な共通テスト頼みの国公立より安定した私立」を選ぶ層が増加しており、私立医学部志望者全体が増える傾向も見られるそうです。このような背景から、「私立専願」とはいえ全く共通テストを無視するのではなく、共通テストも視野に入れた模試受験や学習計画が必要になるケースも出てきます。

そこで次章から、主要な医学部予備校が共通テスト模試についてどんな指導方針を示しているかを比較し、それを踏まえて模試受験の是非や戦略を考えていきましょう。

医学部専門予備校による共通テスト模試の扱い比較

医学部受験対策に特化した予備校では、在籍生の志望校や方針に合わせて共通テスト模試の活用度合いが異なります。京都医塾、メビオ、メディカルラボ、メルリックス学院の4校について、公式サイトやコラムで確認できる見解をまとめました。

京都医塾の見解:「私立専願なら不要科目は割り切り」

京都医塾は関西を中心に展開する医学部予備校で、基礎力養成から実戦まで手厚い指導で知られています。京都医塾では、私立医学部専願の場合には国語や社会など共通テストでしか使わない科目の学習は基本的に不要だと明言しています。つまり、私立医学部志望者は英語・数学・理科の3科目(+小論文・面接)に絞って学習を進め、共通テストの文系科目に時間を取られないようにするという方針です。この割り切った戦略によって、科目数の多い国公立医学部志望よりも効率的なスケジューリングが可能になるとしています。

とはいえ、京都医塾が共通テストを完全に無視しているわけではありません。共通テスト利用入試のメリットも公式コラムで紹介しており、「受験のチャンスが増える」「科目数が少ない」利点から私立医学部でも共通テスト利用は大変人気で、多くの受験生が活用していると解説しています。実際、京都医塾の入試情報コラムでは2022~2024年度の私立医学部共テ利用入試のボーダー得点率が上昇傾向にあることに触れ、共通テスト利用組のレベルの高さに注意を促しています。

指導面でも、京都医塾は本番シミュレーションとして模試を重視しています。年間行事として「入試演習会」を開催し、医学部の入試問題や共通テストの問題を用いて、本番さながらの環境で模擬試験を実施しています。これは時間配分や休憩時間の過ごし方まで含めて当日のパフォーマンスを最適化する訓練であり、共通テストを受験予定の生徒には良い実戦練習となります。要するに京都医塾では、「私立専願で共通テストを使わないなら無理に勉強しない。ただし共通テストを利用する場合や国公立併願の場合は、その対策として模試などでしっかり経験値を積む」という柔軟なスタンスだと言えます。

メビオの見解:「共通テスト模試は受験必須級」

メビオ(Mebio)は大阪に本拠を置く医学部予備校で、「医学部受験一筋」を掲げた専門指導が特徴です。メビオは模試の活用に関する公式コラムで、「共通テストの模試は今後、必須と言ってもいいほど受験しなければいけない模試の1つとなるでしょう」と非常に明確な表現で述べています。特に、国公立医学部志望者や私立大の共通テスト利用入試を検討している受験生にとっては、共通テスト模試でしっかり経験値を積むことが必要だと強調しています。

メビオが共通テスト模試を重視する理由の一つに、新しい大学入試制度に対応した教材や情報がまだ不足している現状があります 。共通テストは思考力・判断力を問う新傾向の試験であり、本番形式の問題演習素材が限られるため、市販教材だけでなく模試を積極的に活用して実戦練習を積むことが大切というわけです。「直前期の練習材料としても使える」ので、できるだけ多く共通テスト模試を受けておきましょうとも述べています。つまりメビオでは、共通テストを受ける可能性があるなら模試受験は半ば「必須科目」であり、早い段階から複数回受けて場慣れするよう指導していることが伺えます。

もっともメビオも、「私大専願の受験生であれば(共通テスト模試を)利用しない可能性もあるかもしれません」と一言触れており、純粋な私立専願で共通テストを全く使わないケースも想定はしています。しかし総じて見れば、メビオは共通テスト模試の受験を強く推奨する立場であり、実際に生徒にも河合・駿台など他社の模試を含め積極的に受験させていると考えられます。なお、メビオは私立医学部志望者向けには「全国統一医学部テスト」の活用も推奨しています。この全国模試は東進ハイスクール主催で複数の医系予備校が提携して行う私立医学部専門の大型模試ですが、「私立医学部受験生にとって欠かせない模試」として紹介されており、出題傾向網羅や判定精度の高さから志望校決定や合格可能性判断に大いに役立つと解説しています。2週間ほどで成績表が返却されるスピードも利点で、メビオは私立大志望者にはこのような専門模試も含めて積極的に活用するよう指導しているようです。

メディカルラボの見解:「共通テスト対策は必要に応じマンツーマン」

メディカルラボは河合塾グループの医系専門予備校で、全国に校舎網を持ち完全個別授業を売りにしています。メディカルラボでは生徒一人ひとりの志望や学力に合わせてカリキュラムを組むため、共通テスト対策も必要な科目・範囲だけをマンツーマン授業で受講できる柔軟性があります。公式サイトでも「共通テスト対策講座」を案内しており、共通テストを攻略し医学部合格を勝ち取るための特別講座を1科目・1回から受講可能としています。これはつまり、共通テストを受ける生徒には専用の対策を用意し、受けない生徒には無駄な負担をかけないという方針といえます。

模試への姿勢についてメディカルラボ自体が直接言及した資料は多くありませんが、その母体が河合塾であることから、河合塾の全統模試を積極的に活用していると考えられます。実際、メディカルラボは公式サイトで「模試」の項目を設け、「受験校選定に役立つ模試」を用意していると説明しています。中でも年2回実施の「私立医学部模試」は河合塾と共同開発したオリジナル模試で、受験生の学力特性と全国の私立医学部の出題傾向をマッチングさせて合格可能性を判定する内容となっており、偏差値だけでなく得意・不得意分野も分析して志望校提案までしてくれるとされています。メディカルラボは「模試を選んで受験することが重要です」とも述べており、共通テスト型模試・私立医学部模試・記述模試など目的に合わせて適切な模試を選択し受けるよう生徒に促しているようです。

推測される指導方針としては、国公立併願や共通テスト利用を考える生徒には河合全統共通テスト模試等の受験を勧め、本番までに数回のマーク模試で練習させるでしょう。一方、純粋な私立専願で共通テストを全く使わない生徒には、代わりに上記の私立医学部模試や大学別模試で実戦演習を積ませるでしょう。メディカルラボ名古屋校の合格体験記では「センター試験直前期は共通テスト対策問題集をたくさん…」との記述も見られ、希望者には直前期まで共通テスト演習を取り入れている様子です。総じてメディカルラボは生徒個々の戦略に合わせて模試受験計画も最適化する予備校と言えそうです。「6つの合格メソッド」の一つに「徹底した受験情報分析」を掲げており、河合塾模試のビッグデータを活用しながら、必要な生徒には必要な模試を組み込むカリキュラムを提供していると考えられます。

メルリックス学院の見解:「専願への切り替え判断もケースバイケース」

メルリックス学院は東京・名古屋・大阪で展開する医歯学部専門予備校で、特に私立医学部志望や再受験生へのノウハウに定評があります。メルリックス学院の代表は公式ブログで「国公立医学部第一志望でも私立医学部を併願する場合、共通テスト利用入試を活用することが最も有効な手段」だと述べています。共通テスト利用入試を使えば、共通テスト後に個別学力試験(一次試験)を課さない私立医学部も多く、共通テストが終われば私立二次試験(主に面接・小論文)対策に専念できるためです。特に西日本の上位私立医学部では共通テスト利用枠の定員割合が高く、国公立受験層を取り込もうという姿勢が見られるとも分析しています。したがって、メルリックスでは国公立併願者には共通テストもしっかり対策して得点を取り、私立医学部併願合格を確実にする戦略を推奨していると言えます。

一方で、「私立専願に切り替えるべきか」という相談も多いようです。秋が深まる頃になると、メルリックスには「国公立医学部対策をどこまでやるべきか」という悩みがよく寄せられるとのこと。具体的には、「共通テストの国語や地歴公民、今年からは情報科目の勉強が追いついていない。それでいて二次試験科目(英語・数学・理科)の対策も十分ではない。この状況で共通テストを捨てて科目数の少ない私立専願に切り替えるべきか否か」という切実な内容です。この問いに対し、メルリックス学院のアドバイスは極めて慎重で、「ケースバイケースで個々の状況を聞かなければ判断できない」としつつも、「共通テスト対策に費やしてきた時間がもったいない(から国公立を諦めきれない)というコンコルド効果に注意すべき」だと述べています 。つまり、これまでの勉強投資に囚われず合格可能性を冷静に見極める必要があるということです。

結果的にメルリックス学院では、生徒一人ひとりの成績推移や模試結果を見ながら、最終的に国公立も受けるか、私立専願に絞るかを秋~冬にかけて判断する指導をしているようです。実際、メルリックスのブログには「今年度は共通テスト高得点が取りにくくなったことや新課程入試への不安から、地方国公立志望だった層が早くから私立専願にシフトしているようだ」との分析もあり、状況によっては共通テスト(国公立)を思い切って捨てて私立集中に切り替える決断もサポートしていることが窺えます。

このように、メルリックス学院は「共通テストを活用できるなら最大限活用し、難しいと判断すれば見切りをつけて私立対策にリソースを集中する」という効率重視の戦略をとっています。共通テスト模試についても、国公立併願予定者には当然受験を促し、本番さながら自己採点して出願戦略を立てる訓練までさせるでしょう。一方、私立専願に切り替えた生徒には無駄な共通テスト模試は受けさせず、代わりに私立医学部模試や過去問演習に注力させるはずです。メルリックス学院は毎年、河合塾や駿台など各模試の結果分析から入試動向を詳細に発信しており、生徒にはそれらデータを共有しつつ自分の成績位置と合格可能性を冷静に判断させる材料として模試を位置づけていると言えるでしょう。

以上、4校の比較から見えてくるのは以下の点です。

  • 京都医塾:私立専願なら共通テスト科目は省略可。ただし必要な場合は本番想定の模試演習で鍛える。
  • メビオ:共通テスト模試受験を強く推奨。国公立・共テ利用組は経験値を積むため「受験必須級」の位置づけ。私立向けには専門模試の活用も。
  • メディカルラボ:生徒個別に対応。共通テストを使う生徒にはマンツーマン対策と全統模試等を組み込み、使わない生徒には私立医学部模試など別の模試を提供 。
  • メルリックス学院:共通テスト利用で私立併願を有効活用する一方、状況次第では共通テストを捨て私立専願に舵を切らせる判断もサポート。模試結果を見てケースバイケースで戦略変更。

それぞれ方針は多少異なりますが、「共通テストを実際に受けるなら模試で練習すべき」「使わないなら無理に受けなくても良い」という点は共通しているようです。要は、自分の志望校や得意不得意を踏まえて共通テスト模試を戦略的に取捨選択することが大切だと言えるでしょう。

共通テスト模試を受けるメリットとデメリット

では、共通テスト模試を受験すること自体のメリット・デメリットにはどのようなものがあるでしょうか。ここでは医学部受験生にとっての一般的な利点・欠点を整理してみます。

  • メリット1:全国規模で自分の学力位置を把握できる
  • 共通テスト模試は受験者数が非常に多く、偏差値や順位といったデータの信頼性が高いです。大手予備校の模試結果から得られる全国レベルでの偏差値・判定は、自分の現在地を客観的に知る指標になります。特に現役生は学校内や小規模模試だけでは測れない実力を全国のライバルとの比較で確認でき、危機感やモチベーションの喚起につながります。「模試はペースメーカー」という言葉通り、定期的に受けることで学習の進捗をチェックする節目にもなります。
  • メリット2:試験本番のシミュレーションができる
  • 本番さながらの時間割・問題量で受験することで、長時間の試験に対する体力・集中力を養えるのも模試の利点です。共通テストは朝から夕方まで複数科目をこなすマラソンのような試験です。模試を経験しておけば、科目間の休憩時間の過ごし方や昼食の取り方まで含めたシミュレーションになり、当日の緊張感を和らげる効果があります。また、マーク式試験特有の時間配分や解答テクニック(見直しの時間配分、マークミス防止策など)も模試を通じて身につけることができます。駿台の入試資料では「高校で毎回同じ主催の模試しか受けていないなら、他流試合として別主催の共通テスト模試も受けた方が安心」と専門家が述べており、新傾向の共通テストでは様々な問題に当たっておく価値があるとされています。
  • メリット3:弱点把握と学習修正に役立つ
  • 模試結果はただ合否判定を見るだけでなく、科目ごとの得点や設問別の正答率から自分の弱点を発見するツールとして役立ちます 。例えば、「時間内に解き切れなかった」「ケアレスミスが多かった」「特定分野(例えば数学の確率)が全滅だった」など具体的な反省点が浮き彫りになります。医学部受験では苦手科目の克服が合否を分けるため、模試を受けっぱなしにせず復習することで自分の弱点補強や今後の勉強方針の修正が可能です。メディカ東京のコラムでも「模試で解けなかった問題は入試本番までにしっかり復習し、弱点や原因を分析して次に活かすこと」が大切だと述べられています。このように模試を学習改善サイクルの一環として捉えれば、受験勉強を効率化する強力な手段となるでしょう。
  • メリット4:共通テスト本番への実践的備え
  • 言うまでもなく、実際に共通テストを受験する予定の人にとって模試は本番対策そのものです。共通テストは独特の傾向がありますが、模試の問題内容は本番とほぼ同等のレベル・形式で作られているため、模試を解くこと自体が重要な予行練習です。特に共通テストでは試験後すぐ自己採点を行い、その結果で出願戦略を決める必要があります。マーク模試受験後には自己採点をする習慣をつけておくことで、本番でも落ち着いて自己採点・出願判断ができるようになります。野田クルゼも「マーク模試でも試験後には必ず自己採点するクセを付けましょう」とアドバイスしています。こうした実践的なシミュレーションができるのは、模試を受ける最大のメリットと言えます。

一方、共通テスト模試を受けることにはデメリットや注意点もあります。

  • デメリット1:不要な科目に時間を取られる・学習負担が増える
  • 私立医学部専願で共通テストを全く利用しない場合、模試で課される国語や社会などは本来勉強しなくても良い科目です。それらに時間を割いたり模試で解いたりするのは、貴重な勉強時間を志望校に直結しない科目に費やすことになります。京都医塾も「私立医学部志望なら国語や社会の学習は必要ありません」と断言している通り、こうした科目は割り切って省く方が効率的です。共通テスト模試を受けるとなると結局それらも回答することになり、対策していなければ白紙同然で提出するストレスもあります。特に浪人生や再受験生で私立専願の場合、共通テスト型の勉強まで手を広げると肝心の英数理の対策時間を圧迫しかねません。自分にとって不要な科目まで含む模試は思い切って受けないという選択も合理的でしょう。
  • デメリット2:成績結果に一喜一憂し、戦意を喪失する危険
  • 模試の判定や偏差値はあくまで一時点の指標ですが、受験生心理としてどうしても振り回されがちです。特に共通テスト模試は科目数が多いため、私立専願の人だと対策していない科目が足を引っ張って総合成績が低く出る傾向があります。その結果判定がE判定ばかりだと、自信喪失してしまう人もいるでしょう。しかし当然ながら共通テスト型模試の合格判定は私立大専願には当てはまらない部分があります。駿台の石原氏も「私立大専願なら共通テスト模試を受けても合格可能性など細かいところは気にしなくていい」と述べており、判定よりも各科目の得点や出来具合に注目して活用すべきとしています。メディカ東京も「模試結果を気にしすぎないこと」が大切と説き、「共通テスト(センター試験)利用なら模試成績はかなり当てになるが、私立医学部の入試では傾向が異なるので一概に通用しない」と注意喚起しています。したがって、私立型の勉強を積んでいる人にとって共通テスト模試の判定はミスマッチも多く、過度に落胆したり模試の点数に振り回されたりすると本来の勉強ペースを乱す恐れがあります。模試結果は参考程度に留め、冷静に活用しなければデメリットにもなり得ます。
  • デメリット3:受験料・時間などコストがかかる
  • 模擬試験は無料ではありません。1回あたり数千円の受験料や遠方の会場への交通費がかかる場合もあります。共通テスト模試は年に大手予備校で2~3回ずつ行われますが、全部受けていると費用面の負担も無視できません。また日曜まる1日潰れることも多く、学校行事や他の勉強計画との兼ね合いも考える必要があります。もちろん得られるものも多いのですが、浪人生など時間に限りがある場合は「模試を受けるより苦手単元の復習をしたい」と感じることもあるでしょう。模試の受けすぎで疲弊したり、本業の学習リズムを崩すことがないよう、自分に必要な回数・タイミングを見極めることが大切です(この点、後述の「タイプ別の戦略」で触れます)。

以上のように、共通テスト模試には多くの利点がある一方で、使い方を誤るとデメリットも生じます。ポイントは、自分の目的に照らして取捨選択することと、結果の受け止め方を間違えないことです。特に医学部受験生は、模試結果の偏差値や判定に一喜一憂しすぎず、「模試から何を学び次に繋げるか」という視点で活用することが重要でしょう。

受験生のタイプ別:共通テスト模試の意義と戦略の違い

続いて、受験生の属性(現役生・浪人生・再受験生)や志望状況によって、共通テスト模試の位置づけがどのように変わるかを考えてみます。読者ご自身やお子様がどのタイプに当てはまるかを意識しながらお読みください。

現役高校生の場合:学校模試を活用しつつ志望に応じたメリハリを

現役生(高校在学中の受験生)の多くは、学校経由で共通テスト模試を受験する機会が設けられています。高3生対象の共通テスト模試は年間数回実施されるため、「周りの同級生と一緒に受ける」という形で半ば強制的に参加するケースも多いでしょう。現役生にとって共通テスト模試は進路判定資料として学校側が重視することもあり、私立医学部志望でもとりあえず受けているという人は珍しくありません。

このように現役生は模試機会に恵まれていますが、肝心なのはその結果をどう活用するかです。もし第一志望が国公立医学部であれば言うまでもなく共通テスト模試は重要度MAXで、毎回の目標得点(医学部志望なら本番85%以上が目標ラインとの指摘もあります)に届いているかチェックし、弱点科目を補強していく必要があります。一方、第一志望が私立医学部で国公立は受けない現役生の場合でも、共通テスト模試を全く無駄にはしないようにしましょう。学校で受けさせられる以上は、英語・数学・理科については真剣に取り組み、自分の基礎学力を測る場と捉えるのがおすすめです。偏差値や順位はあまり気にせずとも、各科目の得点率が上がっていけば学力向上の指標になりますし、時間内に解き切る練習にもなります。

ただし、現役生の中には「私は絶対私立医学部だけ受けるから、共通テストは全く勉強しない」という人もいます。その場合、学校の授業で扱う共通テスト範囲の科目(地歴公民など)は最低限の履修に留め、深追いしない勇気も必要です。例えば、夏以降の共通テスト模試で社会を全く白紙提出するのは心理的抵抗があるかもしれません。しかし私立医学部には社会が不要である以上、割り切って医学部の過去問演習や記述模試対策に時間を充てた方が合格に直結します 。学校の先生とも進路について早めに相談し、私立専願で行くと決めたなら内申対策以外では共通テスト科目に労力を掛けすぎないようにしましょう。

現役生は学業や行事との両立もあり時間管理が難しいですが、模試の復習まで含めて計画的に取り組めれば確実に力が付きます。定期テストや部活引退時期などと模試日程が重なって大変なときは、無理せず一部科目だけ受験することも検討してください(実際、共通テスト模試は科目選択が可能で、文系科目を選ばないという受験も可能です)。学校の先生からは「医学部志望なら共テもしっかり勉強しろ」と言われがちですが、自分の志望校配点を第一に考え、うまく学校模試をペースメーカーに使いつつもメリハリをつけた勉強を心がけましょう。

浪人生の場合:目標に合わせて模試計画を最適化

浪人生(既卒の受験生)は、現役生以上に自分の裁量で模試受験計画を立てることができます。大手予備校の模試には個人申し込みで受けられるものが多く、また医学部専門予備校に通っている場合は校内テストや提携模試を受ける機会が用意されていることもあります。

浪人生で私立医学部専願の場合、共通テスト模試を受けるかどうかは本人の戦略次第です。例えば、在籍する予備校が「うちは私立コースなので共通テスト模試は受けなくて良い」と指導することもありますし、逆に「学力確認のため全員河合の模試を受けてもらいます」と指定する場合もあります。自分一人で勉強している浪人生であれば、なおさら受ける・受けないの判断を自分でしなければなりません。

浪人生の強みは時間を自由に使えることですが、裏を返せば模試の頻度も増えがちです。様々な予備校の全国模試(全統、駿台全国、代ゼミ共通テスト模試、東進模試など)を掛け持ち受験する人もいます。メリットはそれだけ多くの問題演習と順位データが得られる点ですが、デメリットは模試の復習だけで精一杯になり肝心の知識定着が疎かになる恐れがある点です。浪人生活は1年と限られていますから、模試漬けになってしまわないよう注意しましょう。各予備校の模試スケジュールを一覧にして、自分に必要な回だけ申し込むといった計画性が求められます。

国公立医学部も視野に入れる浪人生であれば、共通テスト模試の活用は必須です。少なくとも河合塾の全統共通テスト模試(年3回程度)と駿台・ベネッセ共催の模試(年2回程度)は受け、秋までに安定して高得点が取れるよう目指しましょう。もし夏の時点で共通テスト模試の得点率が思わしくない場合、秋以降に私立専願へ戦略変更する判断も出てきます。先述のメルリックス学院のように、浪人中盤で方向転換をするケースも珍しくありません。共通テスト模試の結果を見て「このままでは国公立は厳しい」と感じたら、無理に次の模試まで全科目対策するのではなく、思い切って共通テスト対策科目を減らし私立向け教科に集中する決断も必要です。これは難しい判断なので、独学浪人の方は信頼できる第三者(予備校の先生や家庭教師等)に相談すると良いでしょう。

一方、私立専願の浪人生であっても、共通テスト模試を1~2回は試しに受けてみる価値があります。というのも、浪人生活序盤に共通テスト型の基礎問題を解いてみることで、高校内容の穴を発見できるからです。英語の長文読解力、数学I・Aの計算ミス癖、理科基礎知識の抜けなど、共通テストレベルで取りこぼしがあると私立医学部の応用問題には太刀打ちできません。ある再受験生の体験談では「4月時点で共通テスト模試を受けたら5割程度しか得点できず、その後基礎固めに注力して8割まで伸ばした」という例もあります。基礎力チェックとして共通テスト模試を活用し、弱点を洗い出してから本格的な私立医学部の過去問演習に入るのは有効な勉強法です。

浪人生は秋以降になると各予備校の医学部実戦模試や大学別模試が増えます。それらは私立医学部志望者にとって直接的に役立つ模試なので、共通テスト模試より優先順位が高くなるでしょう。したがって、夏までに共通テスト模試で基礎力チェック→秋以降は私立型模試に注力という流れが一つの理想形です。繰り返しになりますが、浪人の方は模試結果を過度に恐れたり信用しすぎたりしないことも大切です。模試の点数はあくまで改善材料と捉え、合格可能性の最終判断は過去問演習の出来具合など総合的に判断しましょう。

再受験生の場合:共通テストを武器にするか見極め、効率重視で挑む

再受験生とは、以前に大学などを卒業・中退して再び医学部を目指す人や、社会人経験を経て受験に戻ってきた人を指します。20代後半以上の方も多く、ブランクがある分勉強の感覚を取り戻すのに苦労する反面、人生経験から来る精神的な強みも持ち合わせています。

再受験生にとって共通テスト模試の意義は、その人が国公立大学を目指すか否かで大きく異なります。仮に「どうしても地元の国立医学部に入り直したい」という場合、年齢に関係なく共通テストで高得点を狙う必要があります。その場合、他の浪人生と同様に共通テスト模試を複数回受けて感覚を掴むことが不可欠です。久々の勉強で最初は思うように点が取れなくても、模試を受験することで試験の勘が戻り、徐々に点数が伸びるケースも多いです。特に理系科目などは体で解法手順を思い出すまで時間がかかるので、模試で強制的にアウトプットする場を設けるのは有効です。

一方で、再受験生の多くは私立医学部を中心に受験する傾向があります。理由としては、年齢的に国公立より私立の方が入りやすい(面接で経歴を評価してくれる場合もある)ことや、社会人からの受験だと仕事を辞めて早く合格する必要があり合格枠の多い私立に賭けることが多いことなどが挙げられます。また一部の国公立医学部には年齢差別がないとは言えない現実もあり、再受験では安全策として私立を複数併願する人が多いようです。

もし再受験生で私立専願と決めているなら、基本的には共通テスト模試は無理に受けなくても構いません。特に地歴公民・国語・英語リスニングといった科目は、長く勉強から離れていた再受験生にとってハードルが高く、時間対効果が見合わないことがあります。限られた時間と体力を考慮し、自分が勝負する科目(英語・数学・理科)に集中して勉強することが最優先です。共通テスト模試に参加しても、対策していない科目ばかりでストレスを感じては本末転倒でしょう。

ただし、再受験生にこそ共通テスト利用入試は狙い目という側面もあります。例えば私立医学部の中には一次試験免除で共通テストの成績(高得点)だけで勝負できる大学も複数あります。再受験までした学力と執念で共通テスト高得点を叩き出せれば、筆記が苦手な大学(たとえば英語の長文が非常に難しい私立など)でも共通テスト経由で合格を拾える可能性があります。実際、聖マリアンナ医科大学が2025年度から共通テスト利用入試を新設したように、チャンスは広がっています。ですから、もし自分が共通テストで高得点を狙える素養がある(例えば文系科目も割と得意だった)なら、再受験でも共通テスト利用を積極活用する価値があります。その場合は年齢に関係なく共通テスト模試をフルに受験し、本番同様の時間配分で挑戦するべきでしょう。共通テスト模試では最近新科目の「情報Ⅰ」も追加されましたが、2025年度入試から私立医学部でも藤田医科大学など情報を課す大学が出てきています。再受験生だからと敬遠せず、新分野にも挑戦する姿勢が求められます。

再受験生は自己流で勉強している人も多いため、模試結果の分析を独力で行うのが難しいかもしれません。その場合、メルリックス学院やメディカルラボなど再受験生を多く指導している予備校の個別相談会や成績分析サービスを利用するのも一手です。例えばメディカ東京は「現役・再受験問わず模試結果の捉え方をしっかり覚えておこう」と呼びかけており、必要に応じて専門家のアドバイスを仰ぐ重要性を説いています。再受験生は特に、模試結果に落ち込みすぎて諦めてしまうケースも散見されます。年齢的な不安もある中でメンタルを維持するのは簡単ではありませんが、模試はあくまで現状把握と今後の指針づくりの材料と割り切り、ポジティブに活用してください。

模試を戦略的に活用するポイントと結論

最後に、これまでの内容を踏まえて共通テスト模試を戦略的に活用するためのポイントを整理します。

  • 自分の志望校・受験方式を明確にする: まず、国公立医学部も視野に入れるのか、私立医学部専願なのか、共通テスト利用入試も使うのか、といった受験戦略の大枠を決めましょう。それによって共通テスト模試への取り組み度合いが大きく変わります。戦略が定まっていないと模試の結果に翻弄されてしまいます。
  • 必要な模試と不要な模試を取捨選択する: 模試には共通テスト型以外にも記述模試・大学別模試など種類があります。闇雲に全部受けるのではなく、自分に必要なものを見極めて受験計画を立てることが大事です。例えば私立志望者は秋以降の医学部専門模試や大学別模試を重視し、共通テスト模試は基礎固め用に夏まで受ける程度にするなどメリハリをつけましょう。
  • 模試結果は冷静に分析し活用する: 模試の偏差値や判定は一つの参考データですが、そのまま合否が決まるわけではありません。特に私立医学部の場合、模試の判定が悪くても過去問で合格最低点を取れる実力があれば合格可能性は十分にあります。模試結果票は弱点科目や時間配分の課題を発見するツールと捉え、できなかった問題を復習して次につなげることが肝心です。「模試結果を気にし過ぎない」ことが有効活用のポイントであり、数字に一喜一憂するより成績の推移や科目間のバランスに注目して総合的に判断する習慣をつけましょう。
  • 本番を想定した手順で受験する: 共通テスト模試を受ける際は、本番と同じように臨みましょう。前日はしっかり睡眠をとり、当日は開始30分前には着席、休憩時間の使い方もシミュレーション通りにするなど、模試自体を本番の予行演習と位置づけます。自己採点まで含めて本番同様に行い、各科目の得点率をチェックして出願プランの検討材料にします。こうした習慣は本番で必ず役立ちます。
  • 必要に応じて方針転換も検討する: 模試の結果次第では、志望校や受験計画の見直しも必要です。例えば、共通テスト模試でどうしても思うように点が伸びなければ国公立志望を取り下げ私立に集中する、逆に模試で安定して点が取れるようになったので共通テスト利用入試枠も積極活用する、といった判断です。これはデリケートな問題なので、独りで悩まず予備校の先生や信頼できる人に相談しましょう。メルリックス学院のように「コンコルド効果(これまでの勉強が無駄になるのが惜しい心理)に注意して、合格可能性で判断を」と助言してくれるプロもいます。柔軟な戦略修正も合格へのプロセスの一つです。

結論として、「私立医学部志望生が共通テスト模試を受けるべきかどうか」は一概にイエス・ノーを言えるものではなく、各人の志望校状況・学力状況によります。

しかしここで見てきたように、主要予備校はいずれも“共通テストを受ける可能性があるなら模試でしっかり練習すべき”という点では一致しています。その一方で「私立専願で本当に必要ないなら無理に受けなくて良い」という現実路線も存在します 。要は、自分にとって必要な経験値かどうかを見極め、メリットが上回るなら積極的に模試を活用するのが賢明です。

医学部受験は長丁場であり、模試はその道中で自分を高めてくれる良き伴走者になり得ます。模試を受けて終わりではなく、結果を分析して戦略を修正し、次の努力につなげることで合格に近づくことを忘れないでください。皆さんが模試を上手に使いこなし、志望校合格への道筋を確かなものにされることを心より願っています。

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