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全体的な志願者数の傾向
2025年度の医学部医学科一般選抜の志願者数は全体で21,957人となり、前年度(2024年度)の23,036人から1,079人減少(前年比95%)とやや減少しました。これは2024年度に続き2年連続の志願者減少であり、7年連続減少だった2014~2021年度の流れに一時歯止めがかかった後、再び減少傾向に転じた形です。
志願者減少の背景には、前年度までの志願者増加による難易度上昇への敬遠傾向、18歳人口減少による浪人生の減少、さらには一部大学で後期日程廃止や推薦入試への定員移行が進んだことなどが指摘されています。
入試日程別に見ると、前期日程の志願者は15,306人(前年比96%)で前年度比667人減と5年ぶりに減少し、後期日程も6,651人(前年比94%)で412人減と2年連続の減少となりました。その結果、平均志願倍率(志願者数/募集人員)は前期日程で4.47倍→4.31倍、後期で20.12倍→19.22倍と、ともに前年より低下しています。
国公立大と私立大の志願動向
国公立大学医学部(一般選抜)の志願者数は上記のように微減傾向となりました。一方、私立大学医学部でも概ね志願者数は前年より減少した大学が多く、2025年度入試では全体的に志願者減の大学が目立ちました。
前年(2024年度)は新課程入試への移行直前ということもあり私立医学部で志願者が大幅増となった大学が多かったため、その反動で志願者数が減少したケースが多かったと考えられます。
例えば、藤田医科大学(私立)は一般前期で1,963人と前年比17.2%減少するなど、主要私立医学部でも志願者減少が見られました。ただし一部には志願者増の大学もあり、志願者数ランキング上位校では獨協医科大が日程変更の影響で増加、久留米大・福岡大(いずれも私立)は志願者を増やすなどの例外も報告されています。
地域別の志願動向と特徴
国公立大前期日程の地域別動向を見ると、地域ごとに志願者数の増減に差が見られました。
九州・沖縄地区(指数104)と近畿地区(103)では前年よりやや志願者増となった一方、その他の地区はすべて前年割れとなりました。特に北海道(88)・東北(89)・関東甲信越(89)では前年比約10%前後の減少がみられ、東海北陸(94)・中国四国(97)もわずかながら前年を下回りました。このように西日本(近畿・九州)の志願者は微増、東日本を中心に減少という傾向がうかがえます。
後期日程の地域別では、募集大学数が限られる事情もあり地域ごとの増減が極端です。東北地区(119)は秋田大後期の大幅増などで前年から志願者増となりましたが、関東甲信越(81)・東海北陸(82)は大幅減少、九州沖縄(91)も減少しました。一方、後期日程実施校が1校のみの地域では、例えば近畿(110)の奈良県立医科大後期が前年激減の反動で増加、中国四国(182)の山口大後期も前年減少の反動で志願者数が約1.8倍になる激増となっています。
大学別の顕著な増減ポイント
2025年度入試では、大学ごとに見ると前年から志願者数が大きく増加した大学と大きく減少した大学が存在します。以下に主な例を挙げます。
志願者が増加した大学: 前年度志願者数が少なかった反動で志願者急増となった大学が目立ちました。例えば富山大学は前年の志願者減少の反動で志願者数が2.5倍以上(前年指数253)に急増し、大幅増加を記録しました。同様に鳥取大学も前年ほぼ半減した反動で約2倍に増加(前年指数197)しています。九州では宮崎大学(153)・鹿児島大学(150)が前年減少の反動でそれぞれ5割以上の大幅増加となり 、佐賀大学(127)も6年連続減少から一転して大きく志願者を増やしました。また関東では群馬大学(118)や横浜市立大学(114)が志願者増となり、ともに2年連続増加となりました。
志願者が減少した大学: 前年に志願者が増えて人気化した反動で志願者急減した大学も多く見られました。特に顕著なのが福島県立医科大学で、前年大幅増の反動から志願者数が激減(前年指数37)し200人を下回る水準となりました。三重大学も前年志願者が急増した反動で半減以下(前年指数42)となり、志願者数は大きく落ち込んでいます。関東甲信越では信州大学(62)が前年の大幅増加から一転して約4割減と大幅減少し 、筑波大学(78)や千葉大学(80)もそれぞれ前年までの増加の反動で2割以上の減少となりました。北海道地区では旭川医科大学(65)が2年連続の大幅減少となり志願倍率も低下しています。また近畿では大阪公立大学(71)が第一次選抜基準の変更も影響して志願者減少、奈良県立医科大学は前年からさらに減少して志願者数わずか48人と低迷(2013年度以降で最少)するなど、極端な志願者減も見られました。
大学別志願者数の増減一覧
以下の表に、2025年度入試で志願者数が特に増加した主な大学5校と減少した主な大学5校について、2024年度との志願者数の比較をまとめます(一般選抜前期日程の志願者数)。各大学とも国公立大学医学部医学科の志願者数であり、増減は前年度比の変化です。
志願者増加が顕著な大学(国公立大 前期日程)
大学名 2024年志願者数 2025年志願者数 増加率(前年比)
富山大学 222人 562人 +153%
鳥取大学 194人 383人 +97%
宮崎大学 250人 382人 +53%
鹿児島大学 294人 440人 +50%
徳島大学 146人 224人 +53%
志願者減少が顕著な大学(国公立大 前期日程)
大学名 2024年志願者数 2025年志願者数 減少率(前年比)
福島県立医科大学 404人 132人 −67%
三重大学 599人 249人 −58%
信州大学 446人 276人 −38%
旭川医科大学 225人 147人 −35%
千葉大学 311人 238人 −23%
※指数は前年度比(2024年=100)を示し、志願者数は駿台調べの一般選抜志願者確定数に基づきます。志願者数の増減が大きかった大学では、前年の反動(前年の志願者数激増または激減)が要因となっているケースが多いことが読み取れます。今後も各大学の入試日程変更や定員配分の変化により、志願者動向が大きく変動する可能性があるため、志願者数の推移を注意深く見ていく必要があります。
