2025年10月17日、文部科学省は2026年度(令和8年度)からの私立大学医学部の収容定員増加に関する申請一覧を公表しました。この発表によれば、全国の私立医学部24校が定員増を申請しています。増員枠は地域医療の強化(地域枠)と研究医養成(研究医枠)によるもので、2026年度に限り実施されます。
政府は都道府県が支給する奨学金と紐付けて「地域医療への強い意志」を持つ学生を選抜し、地域医療教育に充当する935名(うち診療科偏在対策枠409名)、研究医枠43名を増員する方針です。
• 申請校数: 私立医学部24大学が増員申請(岩手医大、自基医大、順天堂大、日本医科大、関西医大など)
• 増員規模: 大学ごとの増加幅は小規模な数名から最大35名まで幅広く、総増員数は未公表(2025年度の臨時措置延長で2026年度末まで増員)です。
定員増減の主な大学一覧
申請一覧から主な大学の増員数を見ると、例えば 岩手医科大学は+35名(定員130人へ) 、 順天堂大学は+32名(137人へ) 、 自治医科大学は+23名(123人へ) 、 昭和医科大学も+23名(133人へ) 、 埼玉医科大学は+20名(130人へ) と大幅増加しています。これに加え、獨協医科大(+16名)、北里大(+16名)、藤田医科大(+12名)、関西医大(+11名)など多くの大学が10名以上の増員を申請しています。その他の大学でも、杏林(+11名)、金沢医大(+3名)、大阪医薬大(+2名)などが申請しています。
なお、増員申請に加えて学則上の計画上はごくわずかに定員削減となる大学もあります。リリースでは杏林大学2名減、順天堂大学1名減、近畿大学1名減の計画が示されています。ただし、全体として2026年度の総定員計画は前年度とほぼ同水準となる見込みです。
増員の背景・理由
今回の定員増加は、地域医療の強化と医師偏在対策が大きな背景です。文科省資料によれば、都道府県が作成する医師確保計画に基づき奨学金を付与して地域医療に従事する意志ある学生を確保する「地域枠」で計935名(うち診療科偏在対策の409名)を増員します 。また、大学・大学院教育を通じて研究医を育成する「研究医枠」では、研究医養成拠点校に大学毎最大3名(計43名)の増員枠を設定しています。
この方針に合わせ、私立医学部各校も地域枠や推薦枠の拡充など入試制度を変えています。例えば自治医科大学は富山・山梨・山口・佐賀の4県にAO枠・推薦枠を新設し、県単位で合計3名ずつ確保する仕組みとする予定です 。昭和大学医学部は公募推薦枠(現役生対象)を10名新設、東京女子医大は卒業生子女推薦を廃止して一般公募推薦を10名増やすなど、入試改革の動きが続いています。これらは地域医療志向の学生確保や多様な選抜強化の一環と見られます。
今後の見通し
今回の増員申請は「臨時増員措置」の一環で、2026年度限りの対応です。政府は2025年度末までとしていた臨時増員の期限を2026年度末まで延長し、医学部総定員は令和6年度(2024年度)9,403人を上限に維持するとしています。今回の申請通りに認可されれば、2026年度入学者数は2025年度とほぼ同水準となり、引き続き地域医療や研究医養成を見据えた体制整備が進む見込みです。
参考資料:文部科学省「令和8年度からの私立大学医学部の収容定員増加に係る学則変更認可申請一覧」