山口県における大学医学部・医局の勢力図について、地理的要因と主要な関連病院の状況に基づいて分析・解説します。
山口県の医療提供体制は、県内唯一の大学医学部である山口大学を中心に構成されています。しかし、東西に長い県の地理的特性から、隣接する福岡県(九州大学)および広島県(広島大学)の影響を強く受ける地域が存在し、複数の大学による「棲み分け」がなされているのが特徴です。
目次
山口大学(山大)による広域的な統括
山口大学医学部(宇部市)は、県内全域において圧倒的な影響力を保持しています。特に中央部から東部、北部にかけては、公立病院や基幹病院のポストの多くを山大医局が担っています。
- 主な勢力圏: 宇部市、山陽小野田市、山口市、防府市、周南市、萩市など
- 主要な関連病院:
- 山口大学医学部附属病院(宇部市)
- 山口県立総合医療センター(防府市)
- 山口赤十字病院(山口市)
- 宇部興産中央病院(宇部市)
- 綜合病院山口赤十字病院(山口市)
2. 下関エリアにおける九州大学(九大)の展開
県の西端に位置する下関市は、関門海峡を挟んで北九州市と経済・文化圏を共有しています。歴史的経緯から、このエリアでは九州大学の影響力が非常に強く、山大と九大の関連病院が混在、あるいは九大が主導権を握る構図が見られます。
- 主な勢力圏: 下関市
- 主要な関連病院:
- 下関市立市民病院(九大系)
- 国立病院機構 関門医療センター(九大系)
- 下関医療センター(JCHO:九大の影響が強い)
3. 岩国エリアにおける広島大学(広大)の影響
県の東端である岩国市周辺は、広島市へのアクセスが良好であることから、広島大学の勢力圏となっています。救急搬送や医師派遣においても、広島県側の医療機関との連携が密接です。
- 主な勢力圏: 岩国市
- 主要な関連病院:
山口県内の主要病院と関連医局一覧
| 二次医療圏 | 中心都市 | 主な関連大学 | 備考 |
| 下関 | 下関市 | 九州大学・山口大学 | 九大の影響力が極めて強いエリア |
| 宇部・小野田 | 宇部市 | 山口大学 | 山大の本拠地(医学部所在地) |
| 山口・防府 | 山口市 | 山口大学 | 県立総合医療センターを擁する中枢 |
| 周南 | 周南市 | 山口大学 | 徳山中央病院が地域医療の核 |
| 岩国 | 岩国市 | 広島大学 | 広島大学との結びつきが強い |
| 長門・萩 | 萩市 | 山口大学 | 医師確保が喫緊の課題となっている |
地域医療を支える独立・中立的拠点:徳山中央病院
県東部の周南市に位置する徳山中央病院(JCHO)は、症例数や救急受け入れ実績において県内屈指の規模を誇ります。山口大学の関連病院としての側面を持ちつつも、全国から研修医が集まる教育病院としての独立性も高く、県内東部医療圏における非常に重要な拠点となっています。
今後の動向と課題
山口県の医局勢力図には、今後以下の要素が影響を与えると考えられます。
- 新専門医制度の影響: 専門医資格取得のため、症例の集まる基幹病院への医師集中が進む一方、過疎地域での医師不足がさらに顕在化する懸念があります。
- 地域枠医師の定着: 山口大学医学部の地域枠出身者が義務年限を迎えるにつれ、これまで他大学の勢力圏であった地域(下関や岩国など)への山大医師の配置がどのように進むかが注目されます。
- 働き方改革と集約化: 2024年4月から始まった医師の働き方改革に伴い、小規模病院の維持が困難となり、特定拠点病院への機能集約が進む可能性があります。
結論
山口県の医局勢力図は、山口大学を基軸としつつ、西の下関(九州大学)、東の岩国(広島大学)という境界領域を持つ安定した構造にあります。医師のキャリア形成においては、これらの大学の勢力圏を理解した上で、自身の志向する地域や専門科の症例数を見極めることが肝要です。
