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2026年度 防衛医科大学校医学科 二次試験 徹底ガイド

防衛医科大学校は将来、医師である自衛官を育成する防衛省管轄の教育機関です。学生は国家公務員待遇で学び、卒業後9年間の自衛隊勤務が義務付けられます。ここでは、高校生の受験生と保護者の方に向け、2026年度入試の「二次試験」について詳しく解説します。

防衛医科大学校医学科入試と二次試験の位置づけ

防衛医科大学校(防医大)医学科の入試は、第一次試験(学力試験・小論文)と第二次試験(口述試験・身体検査)の2段階選抜で行われます。一次試験(筆記)は全国各地の試験場で実施され、合格者のみが所沢市の防衛医科大学校での二次試験へ進みます。二次試験は人物評価と適性確認が中心で、面接(口述試験)と身体検査によって総合的に最終合格者が決定されます2026年度入試(二次試験は令和7年12月実施)に向け、その日程・内容・準備事項などを以下にまとめます。

二次試験の日程とスケジュール

2026年度(第53期生)入試の二次試験日程は、令和7年12月17日(水)〜19日(金)のうち指定された1日に実施されます。一次試験の合格発表は令和7年12月2日(火)で、合格者には各自に通知が届き、二次試験受験日(上記期間内のいずれか1日)が割り当てられます。二次試験当日は朝から夕方まで試験が行われ、詳細な集合時間や場所は一次試験合格者に別途通知されます。試験会場は防衛医科大学校(埼玉県所沢市)キャンパス内で、全国から合格者が集まります。遠方の受験者は前日から近隣に宿泊するなど、時間に余裕を持って臨めるよう計画しましょう。最終合格発表(第二次試験の合否)は令和8年1月30日(金)に行われ、防衛医科大学校や各地方協力本部で掲示されるほか、合格者には通知が送付されます。

補足: 第一次試験は2025年10月25日(土)に全国で実施されました 。試験場は各都道府県ごとに原則1か所以上設置され、受験票に指定会場が記載されます。一次試験では国語(古文漢文除く)、数学、英語、理科2科目選択の学力試験小論文が課されました。小論文は一次試験日に実施されますが、採点は一次合格者のみを対象に行われ、二次試験の結果と合わせて最終合否判定に用いられます。

二次試験の試験内容

面接試験(口述試験)

防衛医科大学校の二次試験における口述試験は、一般的な大学入試でいう面接試験に相当します。面接は通常受験生1名に対し複数の面接官(3〜4名程度)で15~20分間行われる形式です。内容は個別面接で、志望動機や人物評価、自衛官としての適性を中心に質問がなされます。実際の経験者によれば、防衛医大の面接では主に以下のポイントを確認されるようです :

  • コミュニケーション能力や人間性: 面接官との会話のキャッチボールがきちんとできるか、医師としての資質が感じられるか、受け答えの態度や表情も含め、基本的な対人力を見られます。
  • 防衛医科大学校についての理解度: 防衛医大の役割や教育内容、卒業後の進路(医官として自衛隊に勤務すること)への理解を持っているか、具体的には「防衛医大を志望する理由」「医官(幹部自衛官である医師)とは何か」「卒業後の9年間の勤務義務について理解しているか」などが質問されます。
  • 防衛医大での生活適応力: 全寮制で規律ある団体生活に適応できそうか、体力面に不安はないか 。例えば「集団生活は大丈夫か」「高校での部活動経験やリーダーシップ経験はあるか」といった問いが出ることもあります。
  • 入校意思の確認: 防衛医大に確実に入学し卒業後も自衛官として働く意思があるか。面接シートに他大学の志望状況を書く欄があり、「もし他の医学部にも合格したらどこに進学するか」など踏み込んだ質問もあります。これは防衛医大特有の事情で、最終合格者が他大学へ進むケースも多いため、入校への本気度を確認する意図があります。

こうした視点から、受験生は「なぜ医師か」「なぜ防衛医大か」を自分の言葉で明確に語れるよう準備しましょう。特に防衛医大志望理由については、「災害医療に携わりたい」「国際協力に貢献したい」などが定番になりがちですが、防衛医大が自衛隊医官を育成する学校である以上、自衛隊の本来任務である国防に対する貢献意欲にも触れておくことが大切だと指摘されています。例えば「平時は医師として国民に貢献しつつ、有事の際には人々のために尽くしたい」というように、自衛官医師としての使命感を盛り込むと良いでしょう。また、9年間の勤務義務や全国転勤の可能性について現実的な理解を示し、「防衛医大に入学し最後まで責任を全うする覚悟」があることを伝えることも重要です。

面接のワンポイント: 面接当日は受付順などでスケジュールが異なりますが、なるべく早めに会場に到着し、落ち着いて順番を待つのがおすすめです。早い時間帯に面接を終えた受験生の体験では、午後遅い時間帯になるほど面接官も疲れて雰囲気が厳しくなる場合があったとのことです。余裕をもって行動し、好印象で臨みましょう。

身体検査

身体検査は、自衛官候補生として健康上問題がないかを確認する試験です。医科大学の入試としては特殊ですが、防衛医大では体力的・身体的適性が重要視されます。検査当日は、医師による問診・診察のほか、各種測定や検査が実施されます。主な身体検査項目と合格基準は以下の通りです :

  • 身長: 男子150cm以上、女子140cm以上。極端に低身長でなければ大丈夫ですが、これ未満だと不合格になります。
  • 体重: 身長とのバランスが取れていること(肥満・痩せすぎの度合いを判定)。基準表による適正体重範囲を超える高度の肥満は不合格ですが、基準超過でも体脂肪率が男性30%未満・女性35%未満なら合格とする措置があります。心配な場合は事前に減量に努めましょう。
  • 視力: 両目とも裸眼視力0.6以上、または矯正(眼鏡等)で0.8以上 。視力が基準に満たない場合は不合格ですので、必要な人は適切な矯正をして臨んでください。
  • 色覚: 色盲または強度の色弱でないこと。軽度の色覚異常はどう扱われるか公表されていませんが、基本は正常範囲であることが求められます。
  • 聴力: 両耳とも正常であること。補聴器が必要なレベルの難聴は不可と考えられます。
  • 歯科: 未治療の虫歯や多数の欠損歯がないこと(治療済みは問題なし)。受験前に虫歯は治療しておきましょう。
  • 尿検査・胸部X線: 異常所見がないこと。当日朝に尿検査があります。持病のある人は医師の診断書などを用意しておくと説明がスムーズです。

加えて、全身の健康状態や既往症についても詳しくチェックされます。基準では「身体健全で、慢性疾患や感染症に罹患していないこと、四肢・関節等に異常がないこと」とされています。具体的な不合格となり得る疾患の例として、気管支喘息(最近3年間発作・治療なしなら除く)、常時治療が必要または感染を伴う重症アトピー性皮膚炎、繰り返す腰痛てんかんの既往(熱性けいれん等幼少期限定で治癒したものを除く)、高度の肥満症高血圧症低血圧症などが挙げられています。また過去に開腹手術歴がある場合も内容によっては不合格となることがあり、特に直近2年以内の脊椎手術歴などは慎重に判断されます。

さらに人格面・生活面に関連して、刺青(タトゥー)がないこと自殺企図の既往がないこと現在妊娠中でないこと、そして躁うつ病など重い精神疾患の現在・既往がないことも明示されています。小さなオシャレ目的のタトゥー(眉のアートメイク等)は除外されていますが、基本的に刺青があると不合格です。

身体検査当日は朝一番に尿検査やX線撮影が行われ、その後はグループごとに身体計測や内科検診、問診などが進みます。受験生は指定の番号で呼ばれ、順次各検査室へ移動していきます。途中待機時間も長めにありますが、指示に従って落ち着いて行動してください。医師との問診では、あらかじめ提出した問診票を基に過去の病歴や気になる症状について質問されます。持病や手術歴がある場合は必ず事前に申告し、必要に応じて医師の診断書や経過記録などを持参して説明できるようにしましょう。申告せず入学後に発覚すると合格取り消しになる場合もあります。

二次試験に向けた準備:提出書類・持ち物・服装

一次試験合格者には、二次試験受験にあたって必要な書類や手続きの案内が送付されます。当日までに準備すべき書類や持ち物は以下の通りです :

  • 調査書(学校長作成のもの):出身高校(または中等教育学校、高専)の校長が作成した調査書を封を開けずに1部持参します。現役生の場合は在籍校に依頼しましょう。卒業生も出身校にお願いできます。
  • 各種証明書(該当者のみ):高卒認定試験合格者は合格証明書および合格成績証明書を各1部、海外の高校卒業者は卒業証明書および成績証明書を各1部持参します。
  • 面接シート:一次合格者に配布される「面接シート」を事前に記入し、当日提出します。志望理由や他大学の志望状況、自己PRなどを記入する用紙で、面接官もこれを参考に質問します。丁寧に書き上げておきましょう。
  • 受験票:一次試験時のものとは別に発行される第二次試験受験票を持参します 。写真貼付が必要な場合は指示通り貼っておきましょう。当日は本人確認のために提示を求められます。
  • 本人確認書類:案内に明記されていなくても、念のため身分証明書(学生証や運転免許証など)を携行してください。受付で提示を求められる可能性があります。
  • 筆記用具:面接シートの加筆や問診票の記入がある場合に備え、黒のボールペン等を持参しましょう。
  • 服装:面接時の服装に決まりはありませんが、高校生であれば学校の制服で受験する人が多いようです。既卒生や制服が無い場合はフォーマルなスーツが無難でしょう。派手すぎず清潔感のある身だしなみを心がけてください。男性は短髪が望ましく、女性も長い髪はまとめるなど好印象となるよう配慮しましょう。
  • 身体検査用の服装:当日は身体測定等がしやすいよう、Tシャツおよび短パンを各自持参するよう指示されています。更衣室で着替える時間がありますので、動きやすい体操服やハーフパンツを用意してください(寒い時期ですが検査は室内で行われます)。Tシャツは無地で派手でないものをおすすめします。
  • その他持ち物:昼食(学内の食堂や売店を利用できますが時間によっては混雑しますので、簡単に食べられるものを持参しても良いでしょう)、上履き(指示はありませんが病院施設内を歩く場合に備えて用意する人もいるようです)、腕時計(携帯電話は試験中使用不可のため時間管理用に)。また宿泊が必要な人は宿泊先の予約、交通手段の確認も早めに行ってください。

忘れ物がないよう前日までにチェックリストを作り準備しましょう。特に学校調査書は未開封の原本が必要ですので、早めに学校に依頼しておくことが大切です。写真も必要枚数を確認し、規定サイズ・仕様のものを用意してください。書類に不備があると受験できない場合もあります。当日は気持ちに余裕を持つためにも持ち物を万全に整えて臨みましょう。

前年までからの変更点(入試制度のトピック)

2026年度入試に際し、大きな制度変更は直近では公表されていません。試験科目や日程は前年(2025年度入試)と同様の予定です。ただし、数年前に遡ると令和4年度入試(49期生採用試験)から方式が改定されました。具体的には「一次試験の日程を従来の2日間から1日に集約」「国語から古文・漢文を除外」「二次試験で行っていた小論文を一次試験日に実施」といった変更が導入されています 。現在の形式になって以降、小論文は一次試験日に全員が受験し、二次試験受験者のみ採点される形となりました。このため二次試験当日に小論文試験は行われません。また試験範囲も新学習指導要領に対応した科目名称(「数学C」や「英語コミュニケーション」等)になっています。2026年度入試もこの方式を踏襲する見込みで、現時点で追加の変更点は発表されていません。最新情報は防衛医科大学校公式サイトや自衛官募集サイトで随時更新されるため、出願前から定期的に確認することをお勧めします。

入試競争率と合格者の傾向

防衛医科大学校医学科の一般入試は全国から志願者が集まる難関試験です。毎年の志願者・合格者データをみると、志願者数はおおむね5,000~6,000人規模で推移しています。その中から最終合格となる人数は300人台後半(※合格者=入学許可者数)となっており、倍率は15~17倍前後に及びます。例えば令和7年度入試(2025年入学試験)では志願者5,627名・最終合格者378名で、倍率約14.9倍でした。前年度の令和6年度入試は倍率17.4倍(志願者5,616名・合格者322名)、令和5年度も17.5倍(5,684名・324名合格)と推移しており、一時期より若干倍率は下がったものの依然高い競争率です。医学部入試全般でも難関と言えるレベルですが、防衛医大の場合は最終合格者数(入学許可人数)が募集定員より大幅に多い点に特徴があります。医学科の募集定員は例年約85名ですが、最終合格者はその3~4倍程度発表されます。これは、防衛医大合格者が他の大学医学部へ進学したり、家族の反対等で入校を辞退するケースが少なくないためです。実際、毎年最終合格者のうち入学まで至るのは約80~90名程度となっています。したがって「合格=必ず入学」ではなく、複数合格者の動向次第で追加合格(補欠繰り上げ)も発生し得ることを念頭に置きましょう。いずれにせよ狭き門であることは間違いないため、計画的な勉強と対策が必要です。

男女比の傾向: 志願者は男子の方が多く、直近では男性約3,600人・女性約1,900人とおよそ2:1の比率でした 。最終合格者も男子の方が多く(例えば令和7年度は男子287名・女子91名合格)ですが、これは志願者数の差を反映したものと考えられます。募集要項上、男女の定員枠は設けられていないため、女性でも成績や適性次第で十分合格可能です。実際に毎年約20~25%程度は女性の合格者が占めています。女性志願者は身体検査で妊娠中でないこと等追加の条件がありますが 、基準を満たせば有利不利はありません。

受験生へのアドバイスと心得

最後に、防衛医大二次試験に臨む受験生への総合的なアドバイスをまとめます。

  • ①早めの準備と情報収集: 出願要項や試験案内を熟読し、必要書類や日程を把握しましょう。地方協力本部や防衛医大主催の説明会・オープンキャンパスがあれば積極的に参加し、学校生活や使命について理解を深めてください。公式サイトの「よくある質問」も参考になります。
  • ②一次試験対策を徹底する: 二次試験以前に、まずは筆記の一次試験を突破しなければ始まりません。共通テストレベル~難関大レベルの学力が求められるので、基礎を固め応用力を養ってください。特に英語・数学・理科2科目で高得点を狙い、小論文も書き慣れておきましょう。なお、小論文は二次判定に使われるため、一次合格後も内容を振り返って面接に備えると良いです。
  • ③志望動機と将来像を明確に: なぜ防衛医大で学びたいのか、自分は将来どんな医師・自衛官になりたいのかを言語化しておきましょう。「医師志望理由」「防衛医大志望理由」「卒業後の抱負(どの診療科に興味があるか、どのように貢献したいか)」などは定番の質問です。自分の言葉で熱意と覚悟を伝えられるよう、面接シートの記入内容も含め繰り返し練り上げてください。
  • ④防衛医大ならではの質問対策: 前述のとおり、防衛医大面接では「他の合格校ならどうするか」「9年間の義務についてどう考えるか」といった特殊な問いがあり得ます。建前ではなく本音の部分でしっかりと自問し、自分なりの答えを用意しましょう。仮に防衛医大が第一志望でなくとも、「合格したら入校する意思がある」ことを示す回答が望ましいです。
  • ⑤健康管理と体力づくり: 身体検査をクリアするには日頃の健康管理が欠かせません。極端な夜更かしや不摂生を避け、試験直前は体調万全で臨めるよう整えてください。適度な運動習慣もつけ、身長体重のバランスを維持しましょう。持病がある場合は主治医と相談し、受験に支障がないか確認すると安心です。特に喘息やアレルギー体質の方は、症状が出にくい環境づくりや治療継続を心がけてください。
  • ⑥身だしなみと振る舞い: 面接官や検査担当者に与える印象も大切です。挨拶や返事はハキハキと行い、試験官の指示には素直に従いましょう。防衛医大は規律を重んじる学校ですので、礼儀正しく行動することで人物評価にもプラスになります。不安なことがあれば当日スタッフに質問して構いませんが、周囲への敬意を忘れずに。
  • ⑦メンタル面の準備: 二次試験では緊張や長時間の待ち時間との戦いでもあります。あらかじめ模擬面接で緊張慣れしておく、リラックス方法(深呼吸や軽いストレッチ)を用意しておくなど、自分なりのメンタルケア術を持っておきましょう。同じ志を持つ受験仲間と情報交換するのも心強いですが、当日は自分のペースを崩さないことも大切です。

以上、2026年度防衛医科大学校医学科二次試験について、その概要と対策ポイントを詳述しました。防衛医大の入試は独特でハードルも高いですが、国の平和と人々の命を守る医師になりたいという熱意を持った受験生にとって、大変やりがいのある道と言えます。この記事が皆さんの準備のお役に立てば幸いです。体調に気をつけて受験勉強を続け、ぜひ合格を勝ち取ってください。

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