医学部入試では英語が合否を左右する重要科目です。ここでは、医学部合格に向けた受験計画のために、欧州発の語学基準CEFR(セファール)の概要と、英検を中心とした主要な民間英語試験(GTEC、TEAP、TOEFL、IELTS)のレベル対応や特徴を解説します。さらに、医学部入試における英語試験の重要性や民間試験スコアの活用例、そして英検が医学部受験対策として有効な理由や高得点取得の戦略についても紹介します。
目次
CEFRとは何か
CEFRは、語学力を測る国際標準の指標です。もともとヨーロッパで外国語学習者の習熟度を示すガイドラインとして作られ、日本語では「ヨーロッパ言語共通参照枠」と呼ばれます。CEFRでは言語運用能力を A1〜C2の6段階 に分類しており、Aは初心者段階、Bは自立した言語運用者、Cは熟達した運用者という3つの大区分に細分化されています。例えば A1 は「初学者」、B2 は「準上級者」で実務にも対応できるレベル、C1 は「上級者」で高度な言語運用力を持つことを意味しています。
CEFRの目的は、異なる言語試験や教育課程でも共通の物差しで語学力を比較できるようにすることです。日本の大学入試でも近年このCEFRが導入され、各種英語資格のスコア比較や基準設定に使われています。CEFRは「○○ならこのレベルで何ができる」というCan-Doリストに基づいており、自分の英語力が国際的に見てどの程度かを把握する指標として便利なのです。
英語試験のCEFRレベル対応
日本の中学生、高校生に馴染みが深い英検(実用英語技能検定)をはじめ、TOEFLやIELTSなど主要な英語試験は、それぞれCEFRの6段階に対応づけることができます。例えば英検準1級はCEFRのB2レベルに相当し、これはTOEFL iBTなら約72点、IELTSなら6.0程度のスコアに対応します。一方、英検2級はCEFR B1(TOEFL iBT約42点)、英検1級はCEFR C1(TOEFL iBT95点以上)に位置づけられます。このように異なる試験間でもCEFRを介せばおおよその難易度比較が可能できるわけです。
実際、文部科学省の公表資料でも各試験のスコア換算表が示されており、例えばCEFR B2相当として英検準1級合格(CSEスコア約1950)やTOEFL iBT72〜94点、IELTS5.5〜6.5などが挙げられています。CEFR C1相当では英検1級合格(CSEスコア2630前後)やTOEFL iBT95点以上、IELTS7.0以上が目安です。このような換算は大学のアドミッションポリシーでも活用されており、受験生が自分の英語力を客観的指標で示す際に役立っています。
レベル・語彙数と問題形式の特徴
医学部受験で利用されることの多い民間英語試験として、英検, GTEC, TEAP, TOEFL iBT, IELTS が挙げられます。以下に、それぞれの試験のレベル目安(必要な語彙数や対応するCEFR)、問題形式の特徴をまとめてみます。
- 英検(実用英語技能検定): 日本で最も受験者が多い試験で、5級から1級まで7段階に分かれています。例えば英検2級は高校卒業程度(約4,000〜5,000語)、準1級は大学中級程度(約7,500〜9,000語)、1級は大学上級レベル(約10,000〜15,000語)の語彙力が目安です。問題形式は一次試験でリーディング(長文読解・語彙問題)、リスニング、ライティング(英作文)が出題され、合格者は二次試験として英語での面接・スピーキングテストがあります。準1級では社会問題に関する200語程度の英文エッセイ作成が課され、1級では高度な語彙を問う語句補充問題や抽象度の高いトピックの長文読解が出題されます。
- GTEC(ジーテック): ベネッセコーポレーションが提供する4技能試験で、主に高校生向けに実施されています。GTECには学校で受験する「ベーシック」「アドバンスト」や公開形式の「CBT版」などがあり、スコアは最大1400程度となります。難易度は英検などと対応しており、GTECスコア930以上で英検準1級相当とされています。問題形式はリーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの各技能ごとに択一式や短文作成などが含まれ、コンピュータ上で解答する方式が主体です(学校実施版では筆記の場合もあります)。英検と違い級の合否ではなくスコア評価ですが、その分細かな英語力の伸びを測定しやすい利点があります。
- TEAP(ティープ): 上智大学と英検協会が共同開発した大学入試向けの4技能試験です。Academicな英語力を測ることを目的としており、読解・聴解では大学講義や論文を意識した内容が多く出題されます。紙試験は4技能合計400点満点(各100点)で評価され、コンピュータ方式のTEAP CBTでは800点満点です。CEFRでは最高でB2程度まで測れる試験で、例えばTEAPスコア334(400点中)でCEFR B2相当と判定される基準が提示されています。問題形式はリーディングで長文読解や要約穴埋め、リスニングで講義音声の理解、ライティングでは与えられたテーマについて意見を書く課題、スピーキングではプレゼンテーションや応答を録音する課題など、大学生活を想定した実用的内容が特徴です。
- TOEFL iBT(トフル): 主に海外大学出願に使われるアカデミック英語試験で、インターネットを通じて受験します。スコアは0〜120点で評価され、概ね72点でCEFR B2、95点以上でC1レベルに対応します。試験は全編英語で行われ、大学の講義や論文に基づくリーディング、講義音声や会話のリスニング、それらを組み合わせたスピーキング・ライティング(統合問題)が出題される点が特徴です。特にライティングでは文章を読み講義を聞いた上で要点を英語でまとめるタスクがあり、高度な要約力や記述力が要求されます。TOEFLは難易度が高く受験料も高額ですが、海外留学のみならず国内の一部医学部でもスコアを評価に利用するケースがあります。
- IELTS(アイエルツ): イギリス・オーストラリアを中心に世界で利用される英語試験で、0.0〜9.0のバンドスコアで評価されます。一般に6.0でCEFR B2、7.0以上でC1相当とされています。Academic Module(大学進学者向け)では、リーディングで図表付きの文章理解、ライティングで与えられたデータの要約や意見論述などが課されます。スピーキングは試験官との対面式インタビューで行われる点が特徴で、流暢さと論理的な発話構成力が問われます。IELTSは年間を通じて複数回実施され、国内では海外大学志望者だけでなく帰国生入試や一部大学の英語資格利用でも用いられています。
※以上のように各試験ごとに形式や重視スキルは異なりますが、CEFRを共通基準とすることで相対的なレベル比較ができます。医学部受験生であれば、最終的には目安としてCEFR B2(英検準1級合格レベル)以上の英語力を身につけておくことが望ましいでしょう。
医学部入試における英語の重要性
医学部志望者にとって英語は最重要科目の一つです。理由には、大きく二つあります。第一に、入試科目としての配点が高いこと、第二に、出題傾向が難度・専門性ともに高いことです。
- 配点の高さと合否への影響: 私立医学部では英語・数学・理科が主要科目ですが、その中でも英語の配点比率が最も高い大学が多く見られます。例えば慶應義塾大学医学部では英語200点・数学100点・理科200点という配点で、英語が全体の約40%を占めます。順天堂大学や慈恵医大など他の難関私立医学部でも英語の配点が突出しており、英語で高得点を取れるかが合否を決定づける鍵となっています。国公立医学部でも共通テスト・二次試験で難度の高い英語問題が課される傾向があり、英語力が不足していると他科目で挽回するのは困難です。
- 専門的な長文読解と高度な語彙: 医学部入試の英語問題は他学部に比べ難易度が高い長文読解が中心です。テーマも「遺伝子治療」「再生医療」「免疫学」「環境問題と健康」など医学・生命科学に関連する専門的内容が頻出します。文章量が多く専門用語も登場するため、短時間で正確に読み解く高度な読解力が必要です。「immune(免疫)」「genetic(遺伝の)」といった理系寄りの単語や学術語彙も多く含まれ、一般的な受験英語より語彙レベルが高い傾向にあります。加えて私立医学部では英文内容の要約や記述式の設問が課される大学もあります(例:順天堂大学や慈恵医大では長文の要約問題を実施)。選択肢問題と比べ採点基準が厳しく、論理的に英文を理解し自分の言葉でまとめる表現力まで問われます。このように医学部英語は「速読力+専門語彙+記述力」のすべてが要求される難関と言えます。
- 英語力は医学部進学後も必須: また、医学部での学びや将来の医療・研究の現場でも英語は避けて通れません。医学論文や最新の研究は英語で発表されるため、入学後にそれらを読みこなす素地として入試時点で高度な英語力を備えていることが望まれます。こうした背景から、医学部のアドミッションポリシーでも「国際的に活躍できる人材育成」の一環として英語力を重視する旨を掲げる大学が増えています。総じて医学部受験生は他の受験生以上に英語力強化が重要であり、早期からの計画的な対策が必要です。
医学部入試での民間英語試験スコアの活用
大学入試改革の流れもあり、英検など英語外部試験のスコアを医学部入試に活用する大学が近年増加しています。医学部で英語資格を活用するケースは主に以下の3パターンに大別できます。自分の志望校がどの方式を採用しているかを事前に確認し、戦略に組み込みましょう。
- 出願資格として利用: 特定の英語試験で定められた級やスコアを取得していないと出願できない方式です。主に推薦入試やAO入試で見られますが、一部の私立医学部一般入試でも「英検準1級以上取得」が出願要件になっている場合があります。例えば兵庫医科大学一般B方式では「英検2級以上」など一定以上の資格が出願条件として課されています。この方式を志望する場合、まず出願条件の級を早期にクリアすることが絶対条件です。
- 加点方式: 取得した級・スコアに応じて、共通テストや個別試験の英語得点に加点される方式です。例えば福岡大学医学部(共通テスト利用型)では「英検2級合格で+20点、準1級以上で+40点」を共通テスト英語得点に加算する制度があります。また順天堂大学一般B方式でも、出願時に提出した外部試験スコアに応じて学力試験の英語に5〜25点の加点が付与されます。加点方式では本番の英語試験で多少失点があっても事前取得スコアで底上げできるメリットがあり、高い級ほど有利です。
- みなし満点方式: 受験生にとって最も有利な方式で、一定以上の級・スコア取得者は英語試験を満点扱いとしてくれるものです。例えば広島大学医学部(一般前期)では「英検準1級以上」などの条件を満たす受験生は共通テスト英語を自動的に満点(200点中200点)に換算する措置があります。この制度を利用できれば、入試直前期に英語対策に費やす時間を他科目(数学・理科)に振り向けることができ、受験全体を有利に進められます。国公立では他にも佐賀大学がスコアに応じて共通テスト英語を90%・80%・70%換算する制度 、鹿児島大学が準1級以上で満点換算・2級程度で加点を行う制度を実施しています。
こうした制度のおかげで、英検などで早めに高スコアを取得しておけば英語に「保険」をかけることができます。事前に英語満点同等の評価を確保できれば、入試本番では他の重要科目に注力できます。近年は地方の国公立医学部を中心に英語外部試験の活用が相次いで発表されており、英検準1級以上を持っていることで受験可能な大学・有利になる大学の選択肢が確実に広がっており、今後もこの傾向は変わらないと思われます。
医学部受験で英検が他試験より有効な理由
以上のようにたくさん民間英語試験があるなかでも、医学部受験生には特に英検の活用をおすすめします。英検が医学部対策に最も有効だと考える主な理由をまとめます。
- 高校英語との親和性が高い: 英検は日本の学習指導要領に沿った出題内容であり、英検対策そのものが学校の英語学習・大学受験勉強と合致します。一方、TOEFLやIELTSなど海外試験では日本の入試に不要な語彙・表現まで覚える必要があるため効率が悪い場合があります。英検であれば無駄のない勉強で済む点は大きなメリットです。
- 良質な問題と安定した難易度: 英検は長年の歴史があり蓄積されたノウハウから作成されるため、出題の質が高く信頼性があります。過去問演習などを通じて傾向を把握しやすく、毎回極端な難易度変動もないため計画的な学習が可能です。逆に新興のGTECやTEAPは歴史が浅く問題の蓄積が少ないため、安定性の面で劣るとの見方があります。
- 段階的な級設定で学習継続しやすい: 英検は5級から1級までレベル分けされているため、目標を小刻みに設定して段階的に実力を伸ばせます。例えば高1で2級、高2で準1級、高3で1級…というように継続的なモチベーションを保ちやすい仕組みです。各級合格ごとに達成感を得られるので学習が継続し、中だるみしにくいという利点があります。
- 年に複数回受験でき戦略を立てやすい: 英検は通常年3回(本会場受験)実施され、さらにCBT形式の「英検S-CBT」では年数十回の受験機会があります。したがって高校在学中に何度も挑戦でき、早い段階で目標級をクリアしてしまう戦略が取れます。実際、英検準1級以上を高2までに取得できれば、高3の入試直前期は数学や理科など英語以外の科目の対策に専念できるため受験戦略上とても有利です。
- 日本人受験者に配慮された試験設計: 英検は国内試験ですので、出題形式や受験環境が日本人にとって取り組みやすいよう設計されています。問題文の指示はすべて日本語で書かれており、ライティングのテーマにも日本語訳が付くなど言語面でのサポートがあります(特に中級レベルまで)。加えて過去問・単語集・対策本など日本語の学習リソースも非常に豊富で、独学でも対策しやすい点も見逃せません。
- 大学側からの評価・認知度が高い: 文科省の制度でも優遇されている通り、国内大学(特に医学部)で最も評価されやすい試験は英検です。多くの医学部が準1級以上を外部試験利用の基準としており 、逆にTOEFLやIELTS単独で基準を設定する大学は限られます。英検は国内英語資格のデファクトスタンダードとも言える存在で、ひとつだけ選ぶなら取得すべきなのは英検です。
以上の理由から、医学部合格を目指すならまずは英検準1級合格を一つの目標にするのが賢明です。英検で培った総合的な英語力は医学部独自試験の攻略にも直結し、さらに取得した資格は出願時の強力な武器になります。
英検で高スコアを取る戦略と学習法
医学部受験生が英検や他の英語試験で高スコアを取得するための具体的な戦略と勉強法をまとめます。英語4技能をバランス良く伸ばしつつ、試験ごとの対策を効率的に行いましょう。
- 目標スコア・受験時期を早めに設定する: 志望校の英語資格活用状況を調べ、何級・何点をどの時期までに取得すべきか計画しましょう。例えば「高2の夏までに英検準1級合格」など具体的な目標を立てることで逆算した学習計画が立てやすくなります。早期に目標を達成できればその後の受験勉強に余裕が生まれます。
- 語彙力強化を最優先する: 医学部英語では専門的な語彙力が得点のカギとなります。英検準1級なら7500語以上、1級なら1万語以上のボキャブラリーが必要になるため、単語帳を活用して計画的に暗記を進めましょう。毎日コツコツ覚える習慣をつけ、復習を怠らないことが大切です。特に医学関連の頻出単語(例:cell, immune, therapy など)は重点的に押さえてください。
- 過去問演習と出題形式への慣れ: 各試験の公式問題集や過去問題を繰り返し解き、形式に習熟しましょう。英検であれば過去問集を入手して時間を計って解き、読解・リスニングの設問傾向やエッセイの定型表現に慣れることが重要です。TOEFLやIELTSなら公式サンプル問題で演習し、コンピュータ受験形式やリスニングのスピードに慣れておきます。出題パターンに通じていること自体が本番での安心感につながります。
- 弱点技能の重点対策: 4技能の中で自分の弱点を分析し、早めに補強しましょう。例えば「長文読むスピードが遅い」場合は毎日英字記事を読んで速読訓練をする、「リスニングが苦手」なら音源を倍速再生するトレーニングやシャドーイングを継続する、といった方法があります。ライティングは添削指導を受けて表現のミスを矯正し、スピーキングは音読やオンライン英会話でアウトプットの練習量を確保します。苦手分野を克服してバランス良く点を取れるようにしましょう。
- 模擬試験で実戦力を養う: 本番前に模試や検定型の試験を活用し、実戦感覚を身につけます。英検なら本会場受験とS-CBT受験を経験してみたり、TOEFL/IELTSなら有料模試や試験会場の雰囲気に慣れるためのプレテストを検討したりします。模擬の場で時間配分や緊張感への対処を練習しておけば、本番でも実力を十分に発揮しやすくなります。以上の対策を計画的に進めていけば、医学部入試レベルの英語力は十分習得可能です。
英検の取得は短期的に実現可能ではありません。また、高校3年生や浪人生になると他教科の学習に時間を割かなくてはならず、英検の対策を追加することは現実的ではないでしょう。特に中学生、高校1年生、高校2年生のみなさんがこの記事を読んで、医学部受験にとっての英検の重要性を認識し、早めに計画を立てて着実に取得級を上げられることを願っています。
グリットメディカルでは、特に中学生、高校1年生、高校2年生の医学部志望者には通常の医学部受験指導に加えて、英検の学習指導を行なっています。英語を医学部受験の強力な武器にして、確実に医学部合格を勝ち取ることを目標にされるかたは、何でもぜひご相談ください。
