2022年に起きた京大系医師の一斉引き上げ騒動。一時は「病院崩壊か?」とまで囁かれた大津市民病院ですが、あれから数年が経ち、現在は「新生・大津市民病院」として新たなフェーズに入っています。どのようにして危機を乗り越えたのか、その後の再建策と現在のリアルな評判を深掘りします。
目次
1. 経営陣の一新と「脱・学閥」の動き
騒動の最大の原因とされたトップの交代が、事件後すぐに行われました。
- 新院長の就任: 2022年4月、済生会滋賀県病院で長年現場を支えてきた日野明彦氏が院長に就任。特定の大学の利害に左右されない「実力主義」を掲げ、組織の立て直しに着手しました。
- 新理事長の就任: 2022年秋には、滋賀医科大学の教授である河内明宏氏が理事長に就任。地元・滋賀の大学との連携を強めることで、医師供給の安定化を図りました。
2. 医師不足をどう解消したのか?(新たな派遣元の確保)
京大医師が去った後の「穴」をどう埋めたのか。ここが再建の鍵でした。
- 大阪医科薬科大学からの派遣: 騒動直後の2022年4月から、外科には大阪医科薬科大学から複数の医師が着任。これにより、懸念されていた手術停止などの最悪の事態は回避されました。
- 滋賀医科大学との連携強化: 地元の滋賀医大とのパイプを太くし、特定の大学(京大)に依存しすぎない「分散型の医師確保」へとシフトしました。
3. 具体的な再建策:組織文化の改革
「パワハラ騒動」の再発防止に向けた取り組みも進んでいます。
- 第三者委員会の調査と提言: 事件後、外部弁護士による調査が行われました。法的なパワハラ認定には至らなかったものの、「経営陣と現場のコミュニケーション不足」が厳しく指摘され、これを受けてコンプライアンス研修や相談窓口の強化が図られました。
- 地域包括ケアへのシフト(2025年): 2025年8月には「地域包括医療病棟」を新設。高度な手術だけでなく、地域の高齢者が安心して救急車で運ばれ、リハビリまで一貫して受けられる体制を整え、「市民のための病院」としての役割を再定義しています。
4. 現在(2025-2026年)の評判は?
現在の評判ですが、ネット上の口コミや地域の声を見ると「過渡期」にあると言えます。
- ポジティブな声: 「以前より待ち時間がスムーズになった」「先生が丁寧で話しやすい」「スタッフが明るくなった」という声が増えており、組織改革の成果が見え始めています。
- ネガティブな声: 一方で、「担当医がよく変わる」「(かつての名医がいなくなったことへの)寂しさ」を感じる患者さんも一部にいるようです。また、騒動時のイメージ(風評被害)を完全に払拭するには、まだ少し時間がかかるかもしれません。
まとめ:どん底から這い上がった「地域医療の砦」
大津市民病院のこの数年間は、まさに「伝統的な医局制度からの自立」を模索する戦いでした。特定の大学に頼り切るのではなく、複数の大学や地域と手を取り合う今のスタイルは、人手不足に悩む全国の自治体病院にとっても一つのモデルケースになるかもしれません。かつての「白い巨塔」のような対立を乗り越え、現在は着実に信頼を取り戻しつつあります。
