日本の医学界において「旧帝国大学(旧帝大)」「旧六医科大学(旧六)」に次ぐ名門として知られるのが、「新八医科大学(通称:新八)」です。戦後の医師不足解消という大きな使命を背負って誕生したこれらの大学は、現在、地域医療の砦であると同時に、世界をリードする最先端研究の拠点としても君臨しています。
ここでは、新八医科大学それぞれの設立背景と、現在の日本医療に与えている影響力を徹底解説します。
目次
新八医科大学とは?
新八(しんはち)とは、1940年代後半(昭和21年〜23年)に、官立の旧制医学専門学校などが昇格・改組して誕生した8つの国立大学医学部を指します。
- 東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)
- 弘前大学
- 群馬大学
- 信州大学
- 鳥取大学
- 徳島大学
- 広島大学
- 鹿児島大学
東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)
設立の経緯
1928年設置の「東京高等歯科医学校」を前身とし、1946年に旧制医科大学として発足しました。2024年10月に東京工業大学と統合し、現在は「東京科学大学(Institute of Science Tokyo)」として新たな歴史を歩んでいます。
影響力と現状
- 医歯学の最高峰:医学と歯学の両面で国内トップクラスの研究力を誇ります。
- 医工連携の最前線:東工大との統合により、AIやロボティクスを駆使した「未来の医療機器開発」において世界をリードする存在となっています。
弘前大学医学部
設立の経緯
1944年設立の「青森医学専門学校」を前身とします。北東北における医師確保のため、1948年に医科大学として認可されました。
影響力と現状
- 短命県返上の旗振り役:青森県の健康課題解決に向け、大規模なゲノム・コホート研究(岩木健康増進プロジェクト)を推進。
- 地域医療のモデル:ビッグデータを活用した「予防医学」の分野で全国の自治体から注目されています。
群馬大学医学部
設立の経緯
1943年設立の「前橋医学専門学校」がルーツです。1948年に国立大学としての医学部がスタートしました。
影響力と現状
- がん治療の先駆者:国内初の重粒子線医学センターを設置したことで有名です。
- 高度専門医療:放射線医学や内分泌・代謝学において、国内屈指の症例数と研究実績を誇ります。
信州大学医学部
設立の経緯
1944年設立の「松本医学専門学校」を前身とします。信州の豊かな自然環境の中、1948年に昇格しました。
影響力と現状
- 臓器移植と難病治療:生体部分肝移植の分野で世界的に有名な成果を上げてきました。
- 高地医学・スポーツ医学:その立地を活かした独自の医学研究も活発で、リハビリテーション医学の分野でも強い影響力を持ちます。
鳥取大学医学部
設立の経緯
1945年設立の「米子医学専門学校」が起源です。日本で最も人口の少ない県にありながら、戦後いち早く大学へと昇格しました。
影響力と現状
- 遺伝子治療と再生医学:染色体工学技術を用いた創薬研究など、ハイテク医療において非常に尖った研究力を持ちます。
- 地域密着型リーダー:山陰地方の医療供給体制の中核を担い、僻地医療のDX化でも先駆的な役割を果たしています。
徳島大学医学部
設立の経緯
1943年設立の「徳島医学専門学校」を母体とします。四国における医学・薬学の研究拠点として発展しました。
影響力と現状
- 酵素・栄養学の権威:歴史的に酵素医学や糖尿病研究に強く、関連する研究所は世界的な知名度を誇ります。
- LEDと医学の融合:徳島県の地場産業であるLEDを治療や診断に応用する「光医学」の分野で独自性を発揮しています。
広島大学医学部
設立の経緯
1945年設立の「広島県立医学専門学校」がルーツ。被爆地としての悲劇を乗り越え、1948年に官立大学へ移管されました。
影響力と現状
- 放射線医学・癌研究の聖地:被爆者診療の経験から発展した放射線影響医学・血液内科の研究は世界一級品です。
- 西日本の拠点校:中国地方の医学教育を牽引し、多くの関連病院を傘下に持つ強固な医局ネットワークを構築しています。
鹿児島大学医学部
設立の経緯
1943年設立の「鹿児島県立医学専門学校」が前身。1949年の国立大学設置法により、南九州を支える医学部となりました。
影響力と現状
- 離島・熱帯医学の守護神:多くの離島を抱える地理的特徴から、遠隔医療や熱帯医学(ウイルス研究)において比類なき知見を持ちます。
- がん・心血管疾患:HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)などの研究で世界的な貢献をしています。
新八医科大学が日本医療を「支え、変える」
新八医科大学は、単なる地方の医学部ではありません。
- 臨床の柱:それぞれの県における最強の医療機関として機能。
- 研究の尖兵:重粒子線(群馬)、ゲノム(弘前)、光医学(徳島)など、特定の分野で旧帝大を凌駕する強みを保持。
- 教育の革新:2024年の東京科学大の誕生に象徴されるよう、伝統に縛られない新しい医学教育の形を模索しています。
「旧帝大が理論を作り、旧六が歴史を刻み、新八が実践と革新を担う」現在の日本の医療にそのような明確な構造が見えています。
