医学部進学時に1年間以上の寮生活が必須となっている国内大学について、その寮の特徴や学生の声をまとめます。高校生や保護者、医学部志望者の方々が寮生活のイメージを具体的に持てるよう、大学ごとの情報を紹介します。
順天堂大学医学部の寮生活
寮の立地・大学との距離
順天堂大学医学部では入学後すぐに千葉県印西市のさくらキャンパスにある「啓心寮」で生活します。1年次はこの寮に全員入寮し、2年次以降は東京都文京区の本郷・御茶ノ水キャンパスで通学となります。寮はキャンパス内に位置し、講義棟への通学も便利です。
寮生活のルール
啓心寮では門限は23時と定められており、男女とも時間厳守が求められます。外泊する場合は事前にホワイトボード等で宿泊先や帰宅予定時刻を室長に伝えて許可を得る必要があります。寮生以外(家族や友人)の立ち入りは禁止されており、面会は原則寮の外で行います。各部屋には2年生の「室長」(男子16人部屋ごとに1名、女子18人部屋ごとに1名)がいて、新入生の生活面をサポートします。何か困ったことがあれば、室長や教職員が親身に相談に乗ってくれる体制です。
寮の設備・部屋の様子
寮の部屋は2人1部屋で、男子寮は2人部屋が8室(計16人)で1単位、女子寮は2人部屋が9室(計18人)で1単位という構成です。各ユニットごとに先述の室長が配置され、寮生をまとめます。寮内には共同のラウンジ(談話スペース)や学習室、ランドリー室などがあり、電子レンジ・冷蔵庫・トースターも完備されています。各自の居室では無線LANが利用可能で、パソコンの持ち込みも問題ありません。男女の寮は棟が分かれており、セキュリティ上も安心です。
食事提供の有無や内容
啓心寮では決まった食事の提供はなく、食事は各自で自由に取ります。さくらキャンパス内の学生食堂を利用したり、近隣に外食に出かけたりすることが認められており、寮内には簡単な調理家電も備え付けられています。寮生同士でホットプレートを借りて部屋で食事会を開くこともできるなど、食事面では比較的自由度が高い環境です。
費用(寮費・光熱費など)
年間の寮費は男子寮で約26万7,000円、女子寮で29万7,000円と公表されています(光熱費込み)。このほか、布団リース代が年間約1万4,520円かかります。食費は含まれておらず各自負担となるため、自炊や学食利用などで調整します。寮費自体は他大学医学部の寮と比べても比較的安価で、光熱費込みで月額にすると2~3万円程度です。
寮生活義務期間
医学部1年次の1年間が全寮制の対象です。2年進級時に全員が退寮し、東京のキャンパス近辺で下宿や自宅通学へ切り替わります。
その他特徴的な制度
寮では2年生の有志が「三役・室長」として寮運営を担い、新入生をサポートします。医学部生は2年次以降寮を離れますが、スポーツ健康科学部の一部学生は選考のうえ室長等として寮に残り、次年度の新入生を迎える伝統があります。また年間を通じて寮対抗のイベントや交流行事があり、順天堂大学への帰属意識や縦のつながりを育む工夫が凝らされています。
昭和大学医学部の寮生活
寮の立地・大学との距離
昭和大学では1年次に山梨県富士吉田市の富士吉田キャンパスで全学部混合の寮生活を送ります。富士山麓の自然環境に囲まれたキャンパスで、寮はキャンパスに隣接しており通学時間はほとんどかかりません。地元が近隣であっても全員がこの寮に入る必要があり、自宅からの通学は許可されません。このため、「通学圏内でも必ず寮に入らなければならない点に最初は抵抗があった」という声もあります。2年次進級時に東京都品川区の旗の台キャンパスへ移り、寮生活は終了します。
寮生活のルール
富士吉田の寮では門限は22時に設定されており、平日・土日問わず夜10時以降の外出は禁止されています。原則として翌朝6時まで寮の外に出られず、外泊する際は事前申請が必要です。もっとも、22時までは自由にキャンパス外出が認められており、学生は門限までに戻る範囲でアルバイトや外食も可能です。実際、「門限の時間(22時)までであればアルバイトも認められている」ため、近隣のファミレスやファストフードで働く学生もいるようです。男女は男子寮(白樺寮)と女子寮(すみれ寮)に分かれており、お互いの寮に立ち入ることはできません(異性の宿泊は禁止)※。寮には昭和大学職員の寮監が常駐し、学生の生活面の指導や相談対応にあたっています。
寮の設備・部屋の様子
寮は4人1組の相部屋が基本で、医学部・歯学部・薬学部・看護学部の学生が1部屋に混在するよう割り当てられます。各部屋には勉強部屋(学習室)と寝室があり、勉強部屋には4人それぞれの専用机と本棚、寝室には二段ベッドが2台と4人分のクローゼットが備え付けられています。フロアごとに学生が交流できるラウンジがあり、試験前には一緒に勉強したり談笑したりと、日々コミュニケーションの場になっています。各寮には共同のキッチンや洗濯室も完備され、自炊や洗濯も可能です。お風呂は各寮に大浴場形式で設置されており、寮生は共同で利用します。また、体育館やグラウンドなどもキャンパス内にあり、部活動等にも便利な環境です。
食事提供の有無や内容
朝食と夕食の2食が寮で提供されます。1日のスケジュールとして朝7:30から朝食、夕方17:50~18:45に夕食が設定されており、寮生は基本的にこの時間に寮の食堂で食事をとります。昼食については授業の昼休みに学内の食堂や購買を利用する形で、寮費には含まれていません。門限内であれば外に食べに行くことも可能で、実際に「金曜の夜に急に声を掛け合って外食に出かける」こともあるようです。食堂のメニューは栄養バランスを考慮した学生向けの内容になっており、朝夕の食事付きで規則正しい生活リズムを送れるよう工夫されています。
費用(寮費・光熱費など)
寮費・食費・光熱費・寝具リース代込みで年間約72万7,000円です。この費用には1年間の寮での生活に必要な基本経費がすべて含まれており、月額に換算すると約6万円程度になります。朝夕2食付きで光熱費込みという内容からすると比較的適正な水準と言えます。なお、寮生は全員同額を負担し、学部や性別による差はありません(※2020年前後のデータであり、物価変動等で多少の改定がある可能性があります)。
寮生活が義務付けられている期間
医学部全学部生の1年次の1年間が寮生活期間です。2年生進級時に退寮し、以降は東京のキャンパスに通学します。他学部(歯・薬・看護)も1年次は富士吉田で同様に寮生活を送り、2年次からそれぞれのキャンパスに移ります。
・その他特徴的な制度
昭和大学の富士吉田での全寮制教育は50年以上の歴史があり、「異なる学部の学生4人が共同生活を送る」こと自体が教育の一環と位置づけられています。寮生活を通じてチーム医療の精神(協調性や思いやり、自立心)を養うことが目的とされ、実際に寮での経験が学部を越えた終生の仲間づくりにつながっています。学生間では富士吉田でできたカップルを指す俗称「吉カプ」が存在するなど、1年間の濃密な共同生活ならではのエピソードもあるようです。また、寮では大学主催の研修イベントや救急救命講習なども行われ、将来の医療者としての基礎力を培う場にもなっています。全寮制という理由で一度は敬遠された昭和大学ですが、実際には多くの学生にとって「青春の思い出」とも言える貴重な1年となっているようです。
川崎医科大学医学部の寮生活
・寮の立地・大学との距離
川崎医科大学では岡山県倉敷市の本校キャンパス内に学生寮があり、医学部新入生は1年次にここで生活することが義務付けられています。キャンパスと寮が隣接しているため通学時間はごくわずかで、講義や実習への移動は便利です。地方からの学生だけでなく、近隣出身者も全員入寮する必要があり、自宅から通える場合でも例外は認められません。倉敷市街地から少し離れた大学キャンパス内で、落ち着いた環境の中で学生生活を送ることになります。
・寮生活のルール
1年次の寮生活が全員に課されるという点以外、細かなルールは大学から詳しく公開されていません。ただし、建学の精神に「人間をつくる・体をつくる・医学をきわめる」が掲げられており、寮生活もその理念の第一歩と位置づけられています。寮では出身地や年齢の異なる学生同士が寝食を共にすることで、チーム医療に必要なコミュニケーション能力や規律意識、協調性を養うことが期待されています。そのため、生活面の基本的な決まり(時間厳守や清掃当番など)は存在し、集団生活の規律を学ぶ場となっています。また男女別の寮区画に分かれており、異性の立ち入りは禁止されていると考えられます。門限や外泊について大学公式の記載はありませんが、多くの医学部寮と同様に夜間の一定時間は出入りが制限されている可能性が高いです。
・寮の設備・部屋の様子
寮の部屋は全室個室でプライバシーが保たれています。1人部屋には学習机・ベッド・収納などが備えられ、勉強に集中できる環境です。共用の設備として、各フロアに浴場(シャワールーム)やトイレ、洗面所が設置され、洗濯室も利用できます。食事をとる食堂や談話スペースも寮内にあり、学生同士の交流や情報交換の場になっています。キャンパス内の施設(図書館やトレーニングルーム等)へもアクセスしやすく、勉学と健康管理の両面でサポートされた住環境です。なお、寮内では基本的に自室での調理は不要なため、キッチン設備は食堂側に集約されています。
・食事提供の有無や内容
朝夕の食事付きの全寮制となっており、1年次の寮生活中は寮の食堂で規定の食事が提供されます。朝食・夕食とも栄養バランスを考慮したメニューが用意され、学生は決まった時間に食堂に集まって食事をとります。食事付きのため自炊の必要はなく、寮生は食堂での食事を通じて自然と顔を合わせる機会が増えます。これによりコミュニケーションの活性化や生活リズムの安定が図られています。昼食は各自で大学のカフェテリア等を利用しますが、朝夕が提供されることで学生の負担を軽減しています。
・費用(寮費・光熱費など)
寮費と食費を合わせた年間費用は約100万円前後です。具体的には寮費が年間約70万円、食費が年間約32万5,000円とされており(食費は物価により改定の可能性あり)、これらに光熱水費が含まれます。月額にすると8~9万円程度で、個室かつ食事提供ありの環境としては適切な水準です。寮費には共用設備の維持管理費も含まれており、電気・水道料金も大学側で一括管理されます。私立医学部の中では学費同様に負担額は大きめですが、充実した設備や食事付きであることを考慮すると妥当といえるでしょう。
・寮生活が義務付けられている期間
医学部1年生の1年間のみ全寮制です。2年次進級後は寮を出て、大学近辺での一人暮らしや下宿、自宅からの通学に移行します。寮生活が1年限りであるため、在学中ずっと集団生活という負担はありません。
・その他特徴的な制度
寮生活は川崎医科大学の教育理念に深く結びついており、「人間をつくる・体をつくる・医学をきわめる」という理念の下で実践されています。1年次の寮での共同生活を人格教育の第一歩と位置づけ、新入生に対して生活面での指導や集団行動の大切さを教えるプログラムが組まれています。また、寮生活を経験した2年生以降は各自が自治的に生活することになるため、1年次に身につけた規律や自己管理能力が活かされます。寮では教育寮担当の教員や職員が配置され、定期的に生活指導や面談を行うなど、新入生のメンタル面のフォローも手厚く行われています。なお、寮名など詳細は公表されていませんが、大学公式サイトで学生寮の紹介や写真を見ることができます。
岩手医科大学医学部の寮生活
・寮の立地・大学との距離
岩手医科大学医学部では岩手県紫波郡矢巾町の矢巾キャンパス内にある学生寮で生活することが全学年に義務付けられています。矢巾キャンパスは盛岡市中心部から南に位置する広大な新キャンパスで、医学部の講義棟や実習施設と寮が近接して建てられています。居住環境が整った最新の寮であり、徒歩数分で講義に通える利便性があります。2018年に医学部新1年生から全寮制を開始し、2020年には収容人数を増やす増築も行われました。地方出身者はもちろん、盛岡市内など近隣出身の学生も含め全員が入寮対象となります。
・寮生活のルール
医学部のみ全寮制(歯学部・薬学部・看護学部は希望制)という特殊な体制であり、医学科生は6年間を通じて寮での共同生活を送ります。そのため、1年生から6年生までが同じ寮に暮らすことになり、学年を超えたコミュニティが形成されています。寮では基本的な生活規律(起床・門限・清掃など)が設けられており、低学年のうちは上級生が生活面で指導やアドバイスを行う体制があります。実際、入寮直後の新入生には上級生の「世話役」が数名ずつ付いて生活に慣れるのを助けてくれる仕組みがあり、買い物に連れて行ってもらったり交流会を開いてもらったりするそうです(※自治医大に類似した学生ボランティア制度が取り入れられています)。門限時間は公表されていませんが、朝夕の食事時間に合わせて夜間は一定の時間帯に出入り制限があると考えられます。男女は別棟・別フロアに分けられており、セキュリティ確保のためオートロックで管理されています。異性の居住区画への立ち入りは禁止され、発覚した場合は厳格な対処がなされるようです(他大学の例にならえば退寮等の処分が科される可能性があります)。このように長期間にわたる寮生活ですが、上級生になるほど自己管理に委ねられる部分も大きくなり、自治的な雰囲気も芽生えてきます。
・寮の設備・部屋の様子
矢巾キャンパスの医学部寮「ドミトリー圭友館」は全室個室(一人部屋)で、各部屋にトイレとミニキッチンが備え付けられたワンルームマンション形式です。自室で自炊が可能な設備がありますが、希望者は寮の食堂で提供される食事を利用できます。各階ごとに約8~10室の1年生居室グループがあり、その中心には6~8畳ほどのラウンジ(談話室)が配置されています。1年生は入学当初、このラウンジを囲むように集中的に配置され、同級生同士の交流を深める設計になっています。2年生への進級時に先輩方の退出に合わせて部屋替え(寮内引っ越し)が行われ、2年目以降は各学年が混在する配置になります。寮内には広い大浴場(共同浴場)があり、各自の部屋には浴槽がない代わりにここで入浴します。また、学生同士で勉強会ができる自習室や、国家試験前の6年生専用の追い込み勉強室も完備されており、多くの学生が活用しています。24時間体制で管理人が常駐しており、防犯面・生活面とも安心できる環境です。東京ドーム55個分とも言われる広大なキャンパス内に寮があるため、キャンパスの出入口までも500m〜1km近くあり、自転車が生活必需品となっています。上級生の多くはマイカーを所有しており、寮には学生用駐車場も整備されています。
・食事提供の有無や内容
寮には朝食・夕食を提供する食堂があり、医学部生は基本的に平日はこちらを利用します。朝夕2食付きの料金体系となっており、栄養バランスのとれた食事がとれるようメニューにも工夫があります。食堂は広々として開放的な空間で、学年や学部を越えた交流の場にもなっています。また、ミニキッチンが各自室に備えられているため、簡単な自炊をする学生や週末に自分の好きな料理を作って楽しむ学生もいます。朝夕の食事が付いている分、規則正しい生活リズムが形成されやすい反面、門限前に戻って夕食を取る必要があるため行動時間が制約される面もあります。しかし希望者は事前連絡により食事をキャンセルして外食することも可能で、完全な拘束ではなく柔軟に対応できるようになっています。
・費用(寮費・光熱費など)
医学部寮は朝夕2食込みで年間約83万6,000円となっています。(この金額には光熱費・水道料も含まれます)。月額換算で約7万円程度であり、個室提供と食事付きであることを考えれば適切な負担と言えます。電気代については実費負担のため各自支払いますが、それ以外の寮管理費や水道費は寮費に含まれています。また、2020年に寮が増築された際も費用設定は据え置かれており、6年間入寮する場合でも大きな負担増なく継続できるよう配慮されています。医学部以外の学部生は希望制でこの寮に入れますが、その場合の費用設定も医学部生と同程度です。駐車場代は月額数千円程度で、上級生になって車を持つ場合でもトータルの生活費は抑えられています。
・寮生活が義務付けられている期間
医学部6年間(1年次~6年次)が全寮制の対象期間です。在学中は卒業まで継続して寮に居住することが原則となっています(医学部以外の学部は寮任意のため対象外)。長期の寮生活となるため、学生同士や教職員との強い信頼関係が構築される一方、途中で自己都合退寮は認められない点には留意が必要です。
・その他特徴的な制度
岩手医科大学医学部の全寮制は全国的にも珍しく、医学科学生の人格形成と協調性涵養を目的としています。寮生活を通じて「規律の遵守・責任感の涵養・協調と自律の精神の高揚」を図り、真に医の倫理に徹した医師を育てるという大学方針が示されています。具体的な取り組みとして、入学後約1ヶ月間は上級生ボランティアがお世話係となり、新入生の生活全般をフォローします。これにより新入生の不安を和らげ、スムーズな学校生活への導入を助けています。また学年縦割りの「ラウンジ制」により、日常的に先輩後輩が顔を合わせる機会が設けられ、相談や助言が得られやすい環境です。医学科以外の学生については希望者のみ寮に入る混合型のため、医学生同士の結束がより強固になる側面もあります。大学・附属病院・研究施設が集約されたキャンパスで24時間を過ごすことで、勉学のみならず医療人マインドを涵養する場となっている点が大きな特色です。
自治医科大学医学部の寮生活
・寮の立地・大学との距離
自治医科大学医学部では栃木県下野市のキャンパス内に学生寮が設置されており、医学科生は6年間ここで生活します。キャンパスの敷地は非常に広大で(東京ドーム約55個分とも言われます)、学生寮もその敷地内にあります。寮から講義棟や附属病院までは徒歩7~10分程度で、通学には大変便利な立地です。もっともキャンパスそのものが広いため、1年生のうちは構内の移動に自転車が必須になるほどです。寮は男子区画と女子区画に厳密に分けられており、各区画の入り口はオートロックでセキュリティ管理されています。
・寮生活のルール
医学科全員が6年間入寮することが原則であり、他大学のような1年限りではありません。そのため、寮内には1年生から6年生までが混在して生活しています。自治医大の寮生活は防衛医大とは全然違いますとOBが述べるほど比較的自由で、「入寮後の厳しさが異次元すぎる」防衛医大とは対照的だと言われます。自治医大寮には明文化された門限はなく、上級生ともなれば車で自由に外出する学生も多いため、自己管理に委ねられる部分が大きいです。ただし男女の区画分離は徹底されており、男子寮に女子学生が入ったりその逆が発覚した場合は退寮処分など厳しい措置がとられます。実際、入り口に監視カメラも設置され、不正侵入がないかチェックされています。この点はプライバシー保護と安全のためであり、学生も遵守すべき重要なルールとして認識しています。1年次は寮内の特定フロアに新入生を集中配置し、同じ学年の交流を深められるようにしています。さらに2~6年生の有志約100名が「お世話係」として各ラウンジに数名ずつ付き、入寮直後の1ヶ月間を中心に新入生の買い物に同行したり食事会を開いたりと手厚くサポートします。このように上級生が下級生を支える伝統が根付いており、新入生も困ったことがあれば一人で抱え込まず何でも相談できる雰囲気です。規律面では他に、自動車の所有は所定の学内登録が必要、学内の飲酒ルール遵守(医学科は比較的緩やかですが未成年飲酒禁止など基本的事項)といった決まりがあります。
・寮の設備・部屋の様子
2009年に完成した医学部学生寮は最新設備が整った住環境です。男子棟・女子棟に分かれ、各棟のエントランスはオートロックで万全のセキュリティです。居室は全室ワンルーム個室で、各部屋にトイレ・洗面・ミニキッチンが付いています。まさに「小さな1Rマンション」のような寮であり、住み心地が良いと評判です(在学生談:「大学の敷地内にあるので通学も徒歩7分くらい。住み心地のいい小さな部屋です。」。)。各階には共用のラウンジ(和室)が広く設けられており、1年生の居住区画では8~10名の同期が1つのラウンジを囲む配置になっています。このラウンジにはテレビや座卓などがあり、ゲームをしたり映画を観たりと学生同士の憩いの場になっています。浴室は各棟に大浴場があり、広々としたお風呂でリラックスできます。他にも自習室、6年生専用の国家試験対策室、自動販売機コーナー、キッチン付きの談話スペースなどが完備されています。洗濯室もあり、洗濯機・乾燥機が複数台設置されています。寮費は安価ですが各自の部屋の電気代は別途実費負担となっており、自室のエアコンやIHキッチン等の電気代を各自が支払います。総じて、勉強に打ち込むための快適な環境が整った学生寮です。
・食事提供の有無や内容
寮には自炊設備が整っているため決まった食事提供はありません。各学生がキャンパス内の食堂を利用したり、自室で簡単な料理を作ったり、出前を取ったりと自由に対応しています。もっとも、多くの学生は朝食や昼食を大学のカフェテリアで済ませ、夕食は仲間と外食に出かけることもあります。(※自治医大に限らず一般的な寮生活として)。ミニキッチンが各部屋にあるため、自分の好きなタイミングで調理できる利点があります。例えば夜食を作ったり、休日にまとめて自炊したりといったことも可能です。自治医大では寮生に対して生活費としての給与(月10万円程度)が支給されますので、食費もその中から各自やりくりします(授業料・寮費は大学から全額給付されます)。自由度が高い反面、栄養管理や食生活のリズムは自己責任になりますが、そこも含め将来地域医療に赴く医師としての自律性を養う一環と言えるでしょう。
・費用(寮費・光熱費など)
寮費は月額8,500円(内訳:部屋代4,300円+共益費4,200円)と破格に安く設定されています。水道料は共益費に含まれ、電気代のみ各自負担です。年間でも10万円程度と、一般的な民間アパートと比べても非常に低コストです。これは自治医科大学が授業料全額免除+生活費支給という特殊な制度(各都道府県からの修学資金)で運営されているためで、寮費負担も最低限に抑えられています。さらに在学中は毎月約10万円の生活資金の支給を受けられるため、学生はその中から食費や日用品費、電気代、駐車場代などを賄う形になります。駐車場代を合わせても「月1万円ほど」と言われており、車を所有してもなお生活費にゆとりがあるほどです。経済的負担の少なさも自治医大寮生活の大きな特徴です。
・寮生活が義務付けられている期間
医学部在学中の6年間すべてが寮生活期間です。入学から卒業まで同じ寮で過ごし、一貫した集団生活を経験します。途中で一般の賃貸に移ることは基本的にできません(特別な事情がある場合を除く)。6年生修了時に退寮となり、その後は各都道府県で定められた臨床研修へと進みます。
・その他特徴的な制度
自治医科大学の全寮制は「規律・責任感・協調性・自律心」を養うことを狙いとして公式に掲げられています。この理念の下、寮生活では学生の自主性も尊重しつつ要所での指導を行う独自のシステムがあります。特に新入生支援の「お世話係」制度は自治医大ならではで、毎年多くの2~6年生有志が新入生のサポートに当たります。また自治医大では入学時に50日間の厳しい基礎研修(自衛隊体験入隊に準じた集団訓練)が課される防衛医大とは異なり、日常生活の中で自発的に規律を学ばせる穏やかなアプローチが取られます。もっとも、自治医大卒業生は国家試験合格後に各都道府県の地域医療に従事する義務があるため、寮生活の中でも医学生同士で将来の使命感を共有する機会が多いです。授業料・寮費が全額免除され生活費も給付されるという特異な環境ゆえ、学生も恵まれた環境への感謝と社会貢献への意欲を持って生活しています。自治医科大学の寮生活は、単なる住居提供に留まらず「地域に貢献する医師に必要な規律や協調性、自律の精神を培う」ことを目的とした教育システムの一環となっています。
防衛医科大学校医学科の寮生活
・寮の立地・大学との距離
防衛医科大学校(防衛医大)は埼玉県所沢市にキャンパスがあり、医学科の学生(研修員)は全員がキャンパス内の学生寮で生活します。所沢市郊外の広い校地に教育施設と寮・体育施設がまとまって配置されており、寮から講義棟や病院までは徒歩圏内です。防衛医大の学生は入学と同時に自衛隊員(陸上自衛隊生徒)となるため、キャンパスは基地・駐屯地のような厳重な管理区域でもあります。外出や外泊には許可が必要で、一般の大学のように自由に出入りできる環境ではありません。最寄駅からキャンパスまで距離があるため、基本的に構内で生活の大半が完結します。
・寮生活のルール
防衛医大の寮生活は他の医学部寮と比べても極めて規律が厳格です。入学直後には約2ヶ月間の基本招集(新隊員教育)があり、早朝の号令に始まり行進訓練や敬礼の練習、制服の着装検査など軍隊式の基礎訓練が課されます。この期間を経て正式に医学教育が開始されますが、その後も上級生と下級生の上下関係が明確で、1年生は2年生以上の学生隊員を「○○班長殿」と呼び、敬語で応対する風土があります。寮の部屋は2人部屋で、しばしば上級生と下級生がペアとなって生活します。このため1年生には必ず年長のルームメイトがおり、日常生活でも先輩から指導を受けることになります。「歩く姿勢が悪い」「制服のアイロンがけが不十分」など些細な点でも先輩に厳しく叱責されることがあり、気の緩みは許されません。消灯時間や点呼(夜間の人数確認)も定められており、門限というより完全消灯・就寝時間が存在します。平日の外出は原則禁止、週末も外泊には上官の許可が必要です。スマートフォンの所持は認められていますが、訓練中や就寝前後の時間帯は使用を制限される場合があります。男女の寮は当然別で、男子学生は男子中隊宿舎、女子学生は女子中隊宿舎に振り分けられ、異性の居住区画への立ち入りは禁止です。寮内では日課表に沿って起床・清掃・朝点呼・授業・訓練・就寝といった生活が営まれており、「学生であると同時に自衛官でもある」という独特の規律が貫かれています。こうした厳しさは現代の若者には相当な精神的負担になり得るため、「入寮後の厳しさが異次元すぎて笑ってしまうレベルだった」と述懐する卒業生もいるほどです。
・寮の設備・部屋の様子
防衛医大の学生寮(幹部候補生宿舎)は2人1部屋の構造で、室内はベッド二台・ロッカー・勉強机二台などが配置されたシンプルな造りです。軍隊式の効率重視のため、私物の持ち込みや装飾にも一定の制限があります。例えば、室内は常に整理整頓されていることが求められ、週に一度は内務班長(上級生)による生活区画の検査が行われます。各フロアに共同の洗面所・浴場・トイレがあり、時間帯ごとに整列して入浴や洗面を行います。浴場では軍隊式に号令がかかり、一糸乱れぬ行動が求められることもあります。食事は基本的に寮の外にある学生食堂(隊員食堂)で全員揃って取るため、寮内にキッチン設備はありません。談話室や娯楽室は限られていますが、共用のテレビ室が設置されており、決められた時間に視聴が許可されます。また、体育施設(ジムやグラウンド、プール等)は充実しており、体力錬成も教育の一環として組み込まれています。防衛医大の寮設備は「質実剛健」という言葉がふさわしく、華美さはないものの必要十分な機能性を備えています。プライバシーは2人部屋で限定的ですが、互いに協力して生活することでチームワークを培う狙いがあります。
・食事提供の有無や内容
朝・昼・夕の三食すべて大学の隊員食堂で提供されます。防衛医大の学生は自衛官待遇であるため、食事は給与とは別枠で国から支給される形になります(衣食住は公費により提供)。朝は早朝に点呼後すぐ食堂へ向かい、栄養たっぷりの朝食を全員で食べます。昼食も講義の合間に指定時間に食堂で取り、夕食も18時頃から開始されます。メニューは自衛隊の管理栄養士が作成しており、高タンパクかつ高カロリーで体力維持を意識した内容です。食事中も先輩後輩の上下関係が保たれ、1年生は上級生より後に配膳を受け開始する、といった細かな暗黙のルールもありますが、食事自体は質・量ともに満足できるものが提供されます。学生によれば「おかわり自由でお腹いっぱい食べられる」「カレーの日はみんな嬉しそう」といったエピソードもあるようです。なお、外出が許可された日に限り外食も可能ですが、基本的には6年間ほぼ毎日が寮の仲間とする食事になります。こうした集団での食事を通じて、団結心や同じ釜の飯を食う仲間意識が醸成されます。
・費用(寮費・光熱費など)
防衛医大の学生は授業料・寮費とも無料です。それどころか、国家公務員特別職として在学中に毎月約10~12万円程度の手当(給与)が支給されます。したがって寮費や食費はすべて公費負担であり、学生本人が支払う費用は基本的にありません。支給された手当は日用品の購入や娯楽費に充てることになります。ただし、防衛医大を中途退学した場合や卒業後所定の自衛隊勤務年限(9年間)に満たず退官した場合には、相当額の費用を返還する義務が生じます。そのため広義には「卒業後に勤務で返済する奨学金」のような仕組みとも言えます。いずれにせよ在学中の経済的負担は一切なく、家計面の心配なく勉学と訓練に集中できる点は他大学にはない利点です。制服や日用品も自衛隊から支給されるため、極端に言えば財布を持たずとも生活できる環境です。
・寮生活が義務付けられている期間
医学科6年間(正確には防衛医大は大学校のため医学教育4年間+臨床研修相当2年間の計6年一貫教育)を通じて全員が全寮制で生活します。在学中は例外なく寮暮らしとなり、医師国家試験合格と卒業後に晴れて医官として自衛隊の幹部候補に任命され寮を出ることになります。その後も幹部自衛官宿舎など集団生活の場が待っているため、学生時代の寮経験が活かされることになります。
・その他特徴的な制度
防衛医大固有の特徴として、入学と同時に自衛隊に入隊(2等陸士相当)し、学生隊に属する点が挙げられます。寮生活も「医学生」であると同時に「自衛官候補生」としての生活であり、階級章を付け制服を着て営舎(寮)で生活します。このため毎朝夕の点呼、週数回の訓練や礼式(敬礼動作など)の訓練、年次行事としての演習参加など、軍事教練が教育課程に組み込まれています。寮内でも学生隊の組織があり、1年生は区隊(クラス)ごとに班長(上級生)指導の下で生活し、上級生になると学生隊のリーダーシップを執る立場(学生隊長・区隊長など)を経験します。これらは単なる寮監による指導ではなく学生相互の自治と上下関係によって維持されており、将来部隊を率いる幹部医官となるためのリーダーシップ訓練の場ともなっています。また、防衛医大では学年ごとに「○○期生」と呼ばれる強い同期意識があり、寮生活を通じて培われた同期の団結は卒業後の部隊配属先が異なっても続くと言われます。医療系大学でありながら規律訓練・集団生活・リーダー教育がここまで徹底されているのは他になく、まさに「自衛隊医学部」ともいうべき特色ある寮制度になっています。
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