医学部専門個別予備校

J-PEAKS採択校の医学部が挑む研究力強化の最前線とは?

地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)は、日本全国の研究力向上を牽引する大学群を形成する目的で創設された文部科学省の支援事業です。

世界トップレベルを目指す「国際卓越研究大学制度」とは別枠で、各地域の中核として独自の強みを持つ研究大学が対象となり、選定校には最大5年間で約55億円の研究費が助成されます。2024年度には弘前大学や横浜市立大学など国公私立13校、2023年度には北海道大学や千葉大学など12校が採択され、全国で合計25校がこの支援対象となりました。医学部を有する多くの国立・公立・私立大学も選ばれており、研究力強化と教育の充実に向けた特色ある取り組みを進めています。以下では、医学部受験生や保護者の方に向けて、各大学医学部のJ-PEAKSにおける具体的な取り組みと強みをご紹介します。

国立大学医学部の取り組み

北海道大学(国立)医学部

北海道大学はJ-PEAKS採択校として、フィールド科学の知見を生かした地球環境再生と持続的食料生産システムの研究に取り組んでいます。農学・獣医学分野とも連携し、「One Health(ワンヘルス)」の観点から人間の健康と環境保全を統合的に探究している点が特色です。医学部では寒冷地医療や感染症研究にも強みがあり、広大な北海道のフィールドを活かした先端研究と地域医療への貢献を両立させています。

弘前大学(国立)医学部

東北地方北部の弘前大学は、「グローバルWell-being共創社会」を実現する革新的研究大学群の構築をビジョンに掲げてJ-PEAKSに採択されています。異分野融合による総合知で人々のウェルビーイング(幸福・健康)向上に取り組むのが特徴で、医学部では地域住民を対象とした大規模健康コホート研究や予防医学に力を入れています。高齢化が進む地域医療の現場から得たビッグデータを活用し、住民の健康寿命延伸や疾病予防に寄与する研究で強みを発揮しています。

山形大学(国立)医学部

山形大学は地域との共創によりサステナブル社会を実現し、南東北の地域創生に貢献する研究大学を目指す取り組みでJ-PEAKSに選定されました。医学部では雪深い山形県に根差した地域医療に貢献しつつ、産学官連携で新たな技術革新に挑戦しています。例えば、病院と工学部の協働による医療機器開発や、地元企業と連携した健康食品・バイオ素材研究など、地域資源を活かした医療・健康分野のイノベーション創出に努めています。

新潟大学(国立)医学部

新潟大学は未来社会における「脳といのち」「食と健康」のイノベーション創出拠点形成をテーマに掲げ、J-PEAKSの支援校となりました。医学部では脳神経科学や難治疾患研究に強く、特に脳研究の分野で全国有数の実績を持ちます。加えて農学分野とも協力し、「食と健康」に関する研究(機能性食品や栄養と疾患予防など)にも注力しています。医学部のこうした強みを活かし、脳と栄養の両面から地域住民の健康増進と新産業創出に取り組んでいる点が特色です。

千葉大学(国立)医学部

首都圏の千葉大学医学部は、J-PEAKSにおいて「免疫学・ワクチン学研究等を戦略的に強化し、成果の社会実装につなげる」取り組みが評価されました。実際、医学部はこれまでも免疫学分野で国内トップクラスの研究実績があり、感染症ワクチン開発やアレルギー治療法の研究で知られています。また学内で得られた研究成果を他分野にも横展開し、医学教育に還元する体制づくりにも注力しています。最新の研究動向を教育カリキュラムにも取り入れることで、次世代の医師科学者を育成している点も千葉大学医学部の強みです。

山梨大学(国立)医学部

山梨大学は「グリーン水素」を核に世界トップクラスの研究力強化と地方創生を先導する構想でJ-PEAKSに選ばれました。主な研究領域はクリーンエネルギーですが、異分野融合の戦略的経営が評価されています。医学部自体はエネルギー研究とは直接関わらないものの、環境と健康の接点(大気汚染が健康に与える影響や、持続可能な社会での公衆衛生向上など)に着目した研究教育を展開しています。地域医療においても、山梨特有の山間地域での救急医療体制整備や在宅医療支援に取り組むなど、地域の健康を支える役割を果たしています。

金沢大学(国立)医学部

北陸地方の中核である金沢大学は、文系・理系・医学系の枠を超えた融合により社会変革を起こす世界的拠点形成を目指すプロジェクトでJ-PEAKSに採択されました。医学部では他学部(理工学、人文社会学等)と連携して、新しい医療技術や医療社会モデルの開発を進めています。特にがん研究や再生医療に実績があり、医学系と工学系の融合研究から生まれた革新的ながん診断技術などもあります。また地域の医療ニーズに応えるため、伝統あるがん研究所を核に地域医療機関とネットワークを組み、最先端医療の地域への展開にも取り組んでいます。

信州大学(国立)医学部

信州大学は「水」に関する先鋭研究を核に、卓越研究・イノベーション創出・地域貢献の“三本の矢”を一体推進する戦略でJ-PEAKSに選定されました。長野県という豊かな水資源と山岳環境を持つ地の利を活かし、医学部では環境と健康の関係や山岳地域医療に強みを持ちます。例えば、清潔な水資源の確保による感染症予防研究や、山間地の高齢者医療モデルの構築といった課題に取り組んでいます。さらに、標高の高い地域特有の健康課題(低酸素環境下での体調管理など)についての研究教育も行い、地域医療への貢献と国際的な山岳医療研究の発信を両立しています。

神戸大学(国立)医学部

神戸大学は広島大学などと連携し、「バイオものづくり」における卓越基礎研究と社会実装の両輪で世界をリードする継続的イノベーション創出を目指す計画が評価され、J-PEAKSに採択されました。医学部は、生命科学や再生医療の分野で特に強みを発揮しています。神戸市ポートアイランドの先端医療センターや理化学研究所との協働により、iPS細胞を用いた再生医療や創薬研究が活発です。産学官の連携拠点を活かし、基礎研究の成果を医薬品や医療機器として実社会に実装する取り組みを進めている点が特色です。

岡山大学(国立)医学部

岡山大学は「地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学~持続可能な社会を実現させる10年構想~」を掲げてJ-PEAKS支援校に選ばれました。医学部では、中国・四国地方の医療拠点として地域医療と先端研究の両面に力を入れています。難治疾患の克服に向けた研究(例えば遺伝性疾患や癌の先端治療研究)や、瀬戸内地域特有の公衆衛生課題への対応(産業公害や過疎地域の医療支援など)に取り組んでいるのが特徴です。また「医療版10年構想」とも言える長期ビジョンを持ち、持続可能な医療システムの構築や次世代医療人材の育成にも戦略的に取り組んでいます。

広島大学(国立)医学部

広島大学は神戸大学などと協働し、放射光による「見える化」技術を核に半導体・超物質及びバイオ領域融合型産業集積エコシステムの実現を目指すプロジェクトを展開しています。この中で医学部は、先端放射線科学や画像診断技術の分野で重要な役割を担っています。放射光施設や加速器科学の成果を医学生命科学研究に応用し、新薬開発や細胞レベルでの病態解明につなげる研究が進められています。また原爆医療の歴史を持つ大学として放射線影響研究に伝統があり、その知見を生かして放射線医学や災害医療教育にも注力している点が特色です。

徳島大学(国立)医学部

徳島大学は「光工学×医学・栄養学×情報科学」の研究力を結集し、超高齢社会の課題解決に挑む計画でJ-PEAKSに採択されました。医学部は全国的にも栄養学・食医学研究に定評があり、糖尿病や生活習慣病の分野で有名な研究実績があります。現在は光エンジニアリング(光医学、光診断技術)やデータサイエンスを医療・健康分野に取り入れ、例えば光でがんを検出・治療する技術や、高齢者の栄養状態をモニタリングするIoT機器の開発などにも挑戦中です。こうした異分野融合研究を通じて、高齢化が進む地域社会での健康寿命延伸とQOL(生活の質)向上に貢献することが期待されています。

長崎大学(国立)医学部

長崎大学は「プラネタリーヘルス」の実現を目指し、世界を牽引する大学への飛躍を掲げてJ-PEAKSに選定されました。プラネタリーヘルスとは人類の健康と地球環境の健全性を統合的に考える概念であり、医学部は伝統的に熱帯医学や感染症研究で世界的に著名です。現在も国立感染症研究所や国立国際医療研究センターと連携し、新興感染症対策や国際医療協力に力を入れています。また、海洋研究開発機構(JAMSTEC)とも協働して環境変動が人類の健康に与える影響を研究するなど、環境医学・グローバルヘルス分野で独自の教育研究を展開している点が特色です。将来的には公衆衛生大学院でのDoctor of Public Healthプログラムを通じ、プラネタリーヘルス分野の国際的人材育成も目指しています。

熊本大学(国立)医学部

熊本大学は「半導体実装から社会共創研究を通じて、地域イノベーションの実現と持続可能な産業都市構築を目指す」というテーマでJ-PEAKSに採択されました。主に半導体技術や産学官連携による地域産業振興が軸となるプロジェクトですが、医学部もその恩恵を受けてライフサイエンスと工学の連携研究を進めています。医学部では免疫学や再生医学の研究拠点(IRCMSなど)を有し、幹細胞医療や難病研究で国内トップクラスの成果を上げています。半導体技術との融合では、医療機器の高度化やバイオセンシング技術開発など新領域にも挑戦しており、地域発の医工連携イノベーション創出に寄与しています。

公立大学医学部の取り組み

大阪公立大学(公立)医学部

大阪公立大学(旧大阪市立大学等の統合により誕生)は、J-PEAKSにおいて「イノベーションアカデミー事業」の推進によるマルチスケールなシンクタンク機能を備えた成熟都市創造拠点の構築が評価されました。大阪という大都市圏に位置する医学部として、都市部の高齢化や生活習慣病など成熟社会特有の医療課題に取り組んでいる点が特徴です。例えば、世界的にも有名なメタボリックシンドローム研究(肥満関連物質アディポネクチンの発見など)を通じて都市住民の健康改善に寄与してきました。現在も医学部は工学部や産業界と連携し、ビッグデータ解析による地域医療計画の策定や、スマートシティにおけるヘルスケアサービス開発など、大都市の未来を見据えた医療イノベーションに取り組んでいます。

横浜市立大学(公立)医学部

横浜市立大学はJ-PEAKSの支援の下、「共創を加速する『よこはまデータサイクル』を構築し、未来社会における高いヘルスウェルビーイングを実現」するプロジェクトを推進しています。これは横浜市という大都市の強みを活かし、医療・健康データを産官学で循環させて市民の健康増進に役立てる取り組みです。医学部では地域の医療データを解析する先端的な研究に加え、臨床現場で培った知見を行政や企業と共有し、新しい公衆衛生政策やヘルスケアサービスの創出に結びつけています。免疫療法やゲノム医療など研究力の高い分野も多く、少人数精鋭の医学部ながら質の高い医学教育・研究で知られています。こうした強みを背景に、将来の横浜モデルとなる持続可能な医療システムの構築を目指しています。

私立大学医学部の取り組み

慶應義塾大学(私立)医学部

慶應義塾大学医学部は、日本を代表する私立医学部として卓越した研究・教育力を誇り、J-PEAKSでもその実績が評価されています。J-PEAKS採択プロジェクトでは、国内外の多様な研究機関と協働しながら「智徳(ちとく)の協働」によって新たな研究拠点を次々と育む土壌を醸成し、比類なき研究で未来の常識(コモンセンス)を創造するという壮大なビジョンを掲げています。医学部では実際に、再生医療やAI医療、基礎医学から臨床医学まで幅広い領域で先駆的な研究を展開しています。例えば、慶應発の画期的治療法(脊髄損傷へのiPS細胞治療の臨床研究など)は国内外で大きな注目を集めました。また教育面でも研究マインドを持つ医師の育成に力を注いでおり、世界的視野で活躍できる医師科学者を輩出している点が強みです。

藤田医科大学(私立)医学部

愛知県に本拠を置く藤田医科大学は、私立ながら高度な研究力でJ-PEAKSに採択されました。特に世界トップレベルの精神・神経病態研究拠点を形成し、唯一無二のアカデミア創薬エコシステムを確立することを目標に掲げているのが特徴です。医学部・大学病院には日本最大級のシミュレーション病院があり、臨床教育と研究開発が一体となったユニークな環境があります。現在、認知症やうつ病など精神・神経疾患のメカニズム解明と新規治療薬の開発に注力しており、国内外の大学(ハーバード大学やMITなど)とも連携した国際共同研究を展開しています。また藤田医科大学はロボットスーツHALを用いたリハビリテーション研究などで知られるように、医工連携にも強みがあります。こうした先端研究と教育環境により、藤田医科大学医学部は次代の精神科・神経科領域のリーダー人材を育成するとともに、新薬創出による社会貢献を目指しています。


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