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東京大学の「国際卓越研究大学」認定見送りと「継続審査」の背景:問われるガバナンスと信頼

文部科学省が2025年12月に発表した「国際卓越研究大学」第2期公募の審査結果において、日本最高峰の研究機関である東京大学は「継続審査」という判断が下されました。

第1期に続き、今回も正式認定が見送られた形となった東京大学。国内トップの論文数や研究実績を誇りながら、なぜ「認定」に至らなかったのか。有識者会議(アドバイザーボード)が示した評価と、東京大学が直面している課題について解説します。

今回の発表では、東京科学大学が「認定」、京都大学が「認定候補」とされる中、東京大学は「最長1年間の継続審査」という、他2校とは異なる厳しい立ち位置に置かれました。

日本を代表する「知の府」が、なぜこの巨大プロジェクトの選定において足踏みをしているのか。その主な要因は、単なる研究力の問題ではなく、「経営体制(ガバナンス)」と「組織の透明性」にあります。

組織の巨大さとガバナンスの実効性

東京大学が抱える最大の課題の一つは、その組織の巨大さと複雑さです。

  • 「部局自治」の壁: 各学部や研究所が強い権限を持つ伝統的な「部局自治」の文化が根強く、大学本部(執行部)による全学的な資源配分や改革のリーダーシップが浸透しにくい点が指摘されています。
  • 変革の実現可能性: 今回、東大はCFO(最高財務責任者)の設置や新たな研究基盤の導入を掲げましたが、有識者会議は、それが巨大な組織の隅々まで実際に機能し、実質的な変革をもたらすかという「実効性」について、より慎重な確認が必要であると判断しました。

コンプライアンスと社会的信頼の問題

審査結果において、特に注目されたのがコンプライアンス(法令遵守)への厳しい指摘です。

  • 相次ぐ不祥事への懸念: 審査報告書では、学内で発生した汚職や不正などの不祥事について言及されています。これらの問題に対する組織としての対応や再発防止策が十分であるか、社会的信頼を回復できているかが厳しく問われました。
  • 審査打ち切りの警告: 有識者会議は、「今後、ガバナンスに関わる新たな不祥事が発生した場合には、審査を打ち切る可能性がある」という異例の強い警告を発しています。これは、国際卓越研究大学に求められる「自律的で透明性の高い経営体制」が、まだ確立されていないとみなされたことを意味します。

「学内合意」と「資源配分」の具体性

年間数百億円規模の支援を受けるにあたり、その資金をどの学問分野に、どのような基準で投じるのかという「リソース配分の透明性」も焦点となりました。東大のような総合大学では、学内の利害調整が複雑です。特定の分野に資金を集中させる際の学内合意形成のプロセスや、新たな評価基準の具体性が、現時点では「認定」を下すには不十分であると判断されました。

東京科学大学・京都大学との違い

今回、東京科学大学が認定されたのは「統合を機とした破壊的な改革」が評価されたためであり、京都大学が「候補」となったのは「改革の方向性は概ね認められた」ためです。

一方、東京大学が「継続審査」となったのは、「改革構想には一定の評価を認めるものの、組織の体質や統治能力そのものに確認事項が残っている」という、より根本的な部分での足踏みを意味しています。

問われる「自己変革」の真価

東京大学の藤井輝夫総長は、今回の結果を受けて「社会からの信頼回復に努め、価値創造力を持つ大学への自己変革を主体的に進める」との声明を発表しました。

今後1年間の継続審査において、東京大学は以下の点を証明する必要があります。

  1. 不祥事を防ぎ、迅速に対応できる強固なガバナンス体制の構築
  2. 全部局を巻き込んだ、実効性のある経営ビジョンの提示
  3. 10兆円ファンドに相応しい、透明性の高い資源配分モデルの確立

日本の科学技術振興の象徴とも言えるこの制度において、東京大学が「変われない巨大組織」という懸念を払拭し、正式認定を勝ち取れるか。この1年が、東大の未来を左右する重要な期間となることは間違いありません。

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