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私立医学部「新設16校」の序列と格付け:伝統校を塗り替える医局のパワーマップを徹底解説

日本の医療界において、長らく「格付け」の指標とされてきた大学の設立年次。その中でも、1970年代の「医師不足解消」という国策によって誕生した「新設私立医学部」は、設立から半世紀を経て、今や日本の医療供給体制の主役へと躍り出ました。

ここでは、これら「新設」16校の全容と、彼らがどのようにして旧来の学閥支配を塗り替えてきたのかを詳しく解説します。

「新設私立医学部」とは:1970年代の設立ラッシュ

1970年(昭和45年)から1979年(昭和54年)にかけて、日本の医学教育は劇的な転換期を迎えました。当時の田中角栄内閣が掲げた「一県一医大構想」などの流れを受け、短期間に多くの私立医学部が認可されたのです。

これら「新設」と呼ばれる大学は、以下の16校を指すのが一般的です。

新設私立医学部 16校一覧(設立順)

設立年大学名特徴的な設立経緯・背景
1970杏林大学救急医療の先駆け的存在。三鷹を拠点に地域医療を強化。
1970北里大学北里柴三郎の精神を継承。生命科学の総合大学として発足。
1970川崎医科大学岡山県倉敷市。良良き医師の養成を掲げ、独自の教育システムを構築。
1971帝京大学圧倒的な資金力を背景に、板橋を拠点とする巨大医療圏を形成。
1971聖マリアンナ医科大学キリスト教精神に基づく。神奈川県北部の基幹病院として発展。
1972愛知医科大学愛知県の医師不足解消のため、地元政財界の強い要望で設立。
1972埼玉医科大学埼玉県初の医学部。毛呂山から始まり、現在は県内最大の病院群。
1972金沢医科大学日本海側唯一の私立医学部として、北陸の医療に多大な貢献。
1972兵庫医科大学関西圏の私立医大として、高度な専門医療と臨床研修に強み。
1972藤田医科大学(旧藤田学園保健衛生大)ロボット手術など先端医療で全国屈指。
1972福岡大学西日本最大の総合大学の一翼。九州の私立医大の雄。
1972独協医科大学栃木県。北関東の医療空白地帯を埋めるべく設立。
1972自治医科大学※特殊枠:47都道府県が共同設立。地域医療のリーダー養成。
1974近畿大学大阪南部から和歌山にかけ、強力な派遣ネットワークを構築。
1974東海大学総合大学のメリットを活かし、ハワイ留学など国際化を推進。
1978産業医科大学※特殊枠:厚生労働省が関与。産業医養成という特殊使命。

設立の歴史的経緯:なぜ「新設」が必要だったのか

1960年代後半、高度経済成長とともに国民の健康意識が高まり、医療需要が爆発しました。しかし、当時の日本には「旧帝国大学」や「旧六医大」を中心とした限られた医学部しかなく、医師数は圧倒的に不足していました。

  1. 無医地区の解消:地方や新興住宅地での医師不足が社会問題化し、「どこに住んでも適切な医療を受けられる」体制が求められました。
  2. 田中角栄の「日本列島改造論」:インフラ整備と並行し、医療の地方分散が進められ、私立大学への認可が緩和されました。
  3. 臨床重視への転換:研究第一主義だった伝統校に対し、新設校は「実際に患者を診る臨床医」を早期に育成することを使命として誕生しました。

現在の医療界への影響力:学閥の「パワーマップ」を塗り替える

設立から50年が経過し、新設私立医学部はもはや「格下」の存在ではありません。現在の医療界において、彼らは以下のような絶大な影響力を誇っています。

① 「医療の質」における下克上

特に藤田医科大学北里大学近畿大学などは、特定の疾患(がん治療、心臓血管外科、ロボット手術など)において、旧帝国大学を凌ぐ症例数や治療実績を叩き出しています。最新設備への積極投資は私立ならではの強みです。

② 関連病院ネットワーク(医局パワー)の拡大

新設校は、設立当初こそ伝統校から教授を招聘していましたが、現在は自校出身の教授・病院長が主流となっています。

  • 東海・関西圏の再編: 藤田医科大愛知医科大近畿大などは、地元の基幹病院に強力な医師派遣網を構築しており、伝統校の縄張りを侵食・共存する形で「医局パワーマップ」を塗り替えています。

③ 国家試験対策の規格化

新設校は「医師を確実に世に送り出す」ことに特化したカリキュラムを磨き上げました。その結果、医師国家試験の合格率ランキングでは、伝統校を抑えて新設私立が上位を独占することも珍しくありません。

④ 医療IT・DXの牽引

歴史が浅い分、保守的な慣習に縛られず、電子カルテの早期導入やAI診断、オンライン診療などの新しい試みに柔軟な大学が多いのも特徴です。

2026年、新設校は「日本の医療の背骨」へ

「新設」という言葉には、かつて「伝統がない」というニュアンスが含まれていました。しかし現在、その評価は完全に書き換えられました。

日本の救急医療を回し、最先端の手術を執刀し、地方の地域医療を支えているのは、これら16校が輩出した数万人規模の卒業生たちです。学閥の壁が崩れ、「実力主義」へと移行する2020年代の医療界において、新設私立医学部の存在感は今後さらに高まっていくことは間違いありません。

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