2024年12月、文部科学省は「国際卓越研究大学」の第2期公募結果を発表しました。東京科学大学が唯一の正式認定を受ける一方で、日本屈指の研究力を誇る京都大学は「認定候補」という評価に留まりました。
事実上の「条件付き合格」とも言えるこの結果について、なぜ京都大学は今回、即時の正式認定に至らなかったのでしょうか。有識者会議の審査結果から浮かび上がる、具体的な課題と背景を整理します。
「認定」と「認定候補」の違い
まず前提として、京都大学は「落選」したわけではありません。「認定候補」とは、「改革の方向性は高く評価されているが、具体的な体制整備や計画の進捗を確認する必要がある」と判断された状態を指します。
今後、最長1年間の「改善期間」を経て、有識者会議との対話を通じて計画をブラッシュアップし、課題がクリアされた段階で正式認定へと進むことになります。
認定が見送られた主な理由
有識者会議(国際卓越研究大学会議)が示した評価報告によると、京都大学が正式認定に至らなかった主な理由は以下の2点に集約されます。
「京都大学ビジョン」の具体化と浸透
京都大学は今回、大規模な研究組織の再編を含む野心的な構想を掲げました。しかし、審査側は、大学全体の指針となる「KyotoU Vision(仮称)」の策定プロセスが途上であると指摘しました。各部局(学部・研究科)の研究強化戦略の礎となるビジョンが十分に固まっておらず、大学全体としてのガバナンスがどのように機能するのか、その実効性をさらに見極める必要があると判断されました。
「部局制」からの脱却と体制移行の進捗
京都大学は伝統的に、各学部や研究所が強い独立性を持つ「部局自治」の文化が根付いています。今回の構想では、この伝統的な枠組みを超えた「学系制(部局を超えた教員の組織化)」への移行や、全学的な資源配分を可能にする体制変更が盛り込まれましたが、その移行プロセスの具体性や進捗状況が、現時点では正式認定の基準に達していないと見なされました。つまり、組織のこれまでの「慣性」を断ち切り、真に一元的なガバナンスへ移行できるかどうかが焦点となっています。
東京科学大学との対比
今回正式認定された東京科学大学との最大の差は、「組織変革のスピード感と決定的な契機」にあると考えられます。
東京科学大学は、東京工業大学と東京医科歯科大学というトップレベルの大学が「統合」するという物理的な組織改編を背景にしており、ゼロベースでのガバナンス構築が比較的容易でした。対して京都大学は、巨大で伝統ある既存組織を内側から抜本的に作り直す必要があるため、その「変革の確実性」を証明するハードルがより高かったと分析できます。
今後の焦点
京都大学は今後、以下の点に注力することになります。
- ビジョンの策定完了: 2026年度中の認定を目指し、全学的な合意形成に基づいた強固な経営ビジョンを構築すること。
- ガバナンス改革の実行力: 総長を中心とした意思決定体制が、実際に各部局の壁を越えてリソース(資金・人材)を最適配分できることを示すこと。
結論
今回の「認定候補」という結果は、京都大学の研究ポテンシャル自体を否定するものではなく、むしろ「伝統ある巨大組織をいかにして現代的なトップ大学へと脱皮させるか」という、日本の国立大学が共通して抱える難題に対する、国からの慎重な要求であると言えます。
京都大学がこの1年でどのような「京都大学モデル」の変革を提示できるか、その真価が問われています。