カナダのマクマスター大学(McMaster University)は、現在世界中の医学部入試で採用されているMMI(Multiple Mini Interview:多面的ミニ面接)の発祥校です。
従来の個人面接では評価しきれなかった「対人能力」や「倫理性」を科学的に測定するために開発されたこの形式は、現在、日本の医学部入試にも大きな影響を与え、毎年のように日本でも採用大学が増えてきえています。2026年度入試では新たに川崎医科大学が導入しました。
ここでは、MMI発祥校であるマクマスター大学で過去に出題された課題を整理し、そこで問われている「医師としての資質」について徹底解説します。MMIを導入している日本の医学部が参考にしているマクマスター大学の先進事例を知ることは、今後の日本における医学部入試の面接対策に役立つはずです。
目次
マクマスター大学のMMIとは?
マクマスター大学では、通常10〜12のステーション(部屋)を移動しながら面接が行われます。
- 形式: 2分間で課題を読み、8分間で回答・議論する(2:8形式)。
- 特徴: 準備可能な知識の有無ではなく、「答えのない問い」に対する思考プロセスとコミュニケーション能力が重視されます。
2. マクマスター大学の過去の出題事例集
過去の報告や受験者の体験談から、代表的な課題をカテゴリー別に紹介します。
A. 倫理的ジレンマ
事例1:臓器移植の優先順位 1つの利用可能な腎臓があります。候補者は2人。一人は地域社会に貢献してきた高齢の慈善家、もう一人は20歳の薬物依存症の若者です。あなたならどちらに移植を勧めますか?その理由を述べてください。
事例2:プラセボ(偽薬)の処方 指導医であるブレア医師は、特定の症状がない患者に対し、心理的な安心感を与えるためにプラセボを処方しています。あなたは、この行為の倫理的問題点についてどう考えますか?また、ブレア医師に対してどのような行動をとりますか?
B. コミュニケーションと対人スキル
事例3:未成年のプライバシー 14歳の少女が「親に内緒で避妊薬を処方してほしい」と来院しました。医師として、あなたは彼女にどのような質問をし、どのように対応しますか?
事例4:治療の拒否 末期ガンの患者が、生存率を高めるための治療を拒否し、伝統的な「癒やしの儀式」を受けるために退院したいと言っています。家族は治療を継続してほしいと願っています。あなたならどのように対話しますか?
C. プロフェッショナリズムと誠実さ
事例5:医療ミスの報告 あなたは研修医として、同僚が重大な医療ミスを犯した現場を目撃しました。しかし、その同僚は「患者に実害はなかったから、報告しなくていい」と言っています。あなたはどうしますか?
D. 社会問題と批判的思考
事例6:医師不足と地方医療 カナダの地方部での医師不足を解消するための現実的な解決策を3つ提案してください。それぞれのメリットとデメリットを論じてください。
事例7:混合診療の是非 カナダの公的医療システムに、民間診療(混合診療)をより広く導入することについての是非を議論してください。
問われている「医師の資質」
マクマスター大学のMMIは、カナダの医学教育指針であるCanMEDS(医師に求められる7つの役割)に基づいています。特に以下の資質が厳しくチェックされています。
① 倫理性と誠実さ(Ethical Reasoning & Integrity)
単に「正しい・間違い」を答えるのではなく、「自律尊重」「善行」「無危害」「正義」といった倫理原則を理解し、対立する価値観を整理できる能力です。
② コミュニケーション能力(Interpersonal Skills)
特に俳優(アクター)が参加するステーションでは、相手の感情に共感を示しつつ、必要な情報を引き出し、信頼関係を築けるかどうかが試されます。
③ 批判的思考と柔軟性
未知の状況や複雑なデータに直面した際、パニックにならずに論理的に問題を分析できるか。また、面接官からの反論に対して、自分の考えを柔軟に修正、あるいは論理的に補強できるかがポイントです。
④ 社会的責任感
個々の患者だけでなく、医療経済、地域格差、マイノリティへの配慮など、マクロな視点で医療を捉える視座を持っているかが問われます。
まとめ:MMI対策のポイント
マクマスター大学のMMIが求めているのは、「医学知識が豊富な学生」ではなく、「不確実な状況下でも、誠実に他者と対話し、論理的な判断を下せる人間」です。これは現在、日本でMMIを導入している医学部にも共通した問題意識です。
医学部受験生へのアドバイス:
- 結論よりもプロセス: 「AかBか」という結論以上に、「なぜそう考えたか」のプロセスを言語化する練習をしましょう。
- 多角的な視点: 常に「患者」「家族」「病院」「社会」という異なる立場からの視点を取り入れて議論を構築してください。