医学部選びで気になる指標のひとつが、「入学後にどれだけストレートで卒業しやすいか」です。今回は、文部科学省の「各大学の医学部医学科の入学状況及び国家試験結果等」に掲載された最新公表データをもとに、全国の国立42校・公立8校、計50校を比較し、留年率の高い順に並べました。対象データは令和元年度入学者の卒業状況で、文科省の「医学・歯学教育」ページに掲載されている現行ファイル(令和8年1月22日差し替え版)です。
なお、ここで使う「留年率」は、厳密な意味での単年度留年率ではありません。文科省関連資料ではストレート卒業率=「入学者数に対する修業年限で卒業した人数の割合」と定義されているため、今回は比較可能な全国統一指標として、100 − 最低修業年限での卒業率を便宜上「留年率(実質留年率)」として扱っています。したがって、この差分には純粋な留年だけでなく、休学や退学などの要因も入っている可能性があります。
結論から述べると、実質留年率が最も高かったのは山形大学(24.2%)、次いで島根大学(23.8%)、九州大学(20.5%)でした。
逆に最も低かったのは金沢大学(2.6%)、鹿児島大学(3.0%)、名古屋市立大学(4.2%)です。国立全体のストレート卒業率は87.9%で実質留年率は12.1%、公立全体は89.4%で実質留年率は10.6%でした。
全国の国公立医学部医学科 留年率ランキング
| 順位 | 大学 | 設置 | 実質留年率 | ストレート卒業率 | 6年次進級率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 山形大学 | 国立 | 24.2% | 75.8% | 75.8% |
| 2 | 島根大学 | 国立 | 23.8% | 76.2% | 76.2% |
| 3 | 九州大学 | 国立 | 20.5% | 79.5% | 82.1% |
| 4 | 琉球大学 | 国立 | 18.9% | 81.1% | 82.0% |
| 5 | 北海道大学 | 国立 | 18.8% | 81.2% | 82.1% |
| 6 | 奈良県立医科大学 | 公立 | 18.4% | 81.6% | 81.6% |
| 7 | 高知大学 | 国立 | 18.3% | 81.7% | 82.6% |
| 8 | 熊本大学 | 国立 | 18.1% | 81.9% | 81.9% |
| 9 | 群馬大学 | 国立 | 17.9% | 82.1% | 82.9% |
| 10 | 山梨大学 | 国立 | 17.6% | 82.4% | 84.0% |
| 11 | 広島大学 | 国立 | 17.5% | 82.5% | 85.0% |
| 12 | 佐賀大学 | 国立 | 16.0% | 84.0% | 84.0% |
| 12 | 東京科学大学 | 国立 | 16.0% | 84.0% | 85.8% |
| 14 | 徳島大学 | 国立 | 15.8% | 84.2% | 84.2% |
| 14 | 香川大学 | 国立 | 15.8% | 84.2% | 84.2% |
| 16 | 長崎大学 | 国立 | 15.2% | 84.8% | 85.6% |
| 17 | 福井大学 | 国立 | 14.7% | 85.3% | 85.3% |
| 18 | 京都府立医科大学 | 公立 | 14.0% | 86.0% | 88.8% |
| 19 | 鳥取大学 | 国立 | 13.6% | 86.4% | 86.4% |
| 20 | 福島県立医科大学 | 公立 | 13.1% | 86.9% | 87.7% |
| 21 | 筑波大学 | 国立 | 12.9% | 87.1% | 89.3% |
| 22 | 岐阜大学 | 国立 | 11.6% | 88.4% | 88.4% |
| 22 | 愛媛大学 | 国立 | 11.6% | 88.4% | 90.1% |
| 24 | 弘前大学 | 国立 | 11.4% | 88.6% | 89.4% |
| 25 | 札幌医科大学 | 公立 | 10.9% | 89.1% | 89.1% |
| 26 | 東北大学 | 国立 | 10.2% | 89.8% | 89.8% |
| 27 | 富山大学 | 国立 | 10.0% | 90.0% | 93.6% |
| 28 | 浜松医科大学 | 国立 | 9.4% | 90.6% | 94.0% |
| 29 | 宮崎大学 | 国立 | 9.1% | 90.9% | 90.9% |
| 30 | 新潟大学 | 国立 | 8.7% | 91.3% | 92.1% |
| 31 | 大阪大学 | 国立 | 8.0% | 92.0% | 92.9% |
| 32 | 名古屋大学 | 国立 | 7.8% | 92.2% | 92.2% |
| 32 | 横浜市立大学 | 公立 | 7.8% | 92.2% | 92.2% |
| 32 | 滋賀医科大学 | 国立 | 7.8% | 92.2% | 96.5% |
| 35 | 岡山大学 | 国立 | 7.7% | 92.3% | 92.3% |
| 35 | 旭川医科大学 | 国立 | 7.7% | 92.3% | 92.3% |
| 35 | 秋田大学 | 国立 | 7.7% | 92.3% | 93.1% |
| 38 | 大分大学 | 国立 | 7.6% | 92.4% | 93.3% |
| 39 | 信州大学 | 国立 | 7.5% | 92.5% | 92.5% |
| 40 | 千葉大学 | 国立 | 7.4% | 92.6% | 92.6% |
| 41 | 三重大学 | 国立 | 7.2% | 92.8% | 94.4% |
| 42 | 和歌山県立医科大学 | 公立 | 7.0% | 93.0% | 97.0% |
| 43 | 神戸大学 | 国立 | 6.8% | 93.2% | 93.2% |
| 44 | 京都大学 | 国立 | 6.7% | 93.3% | 93.3% |
| 45 | 大阪公立大学 | 公立 | 6.4% | 93.6% | 93.6% |
| 45 | 東京大学 | 国立 | 6.4% | 93.6% | 95.5% |
| 47 | 山口大学 | 国立 | 6.0% | 94.0% | 94.0% |
| 48 | 名古屋市立大学 | 公立 | 4.2% | 95.8% | 95.8% |
| 49 | 鹿児島大学 | 国立 | 3.0% | 97.0% | 100.0% |
| 50 | 金沢大学 | 国立 | 2.6% | 97.4% | 99.1% |
※文科省公表の大学別データから、実質留年率=100 − 最低修業年限での卒業率として算出。同率は同順位です。
このランキングから読み取れるポイント
まず目立つのは、上位10校のうち公立は奈良県立医科大学のみで、残り9校は国立大学だったことです。特に山形大学(24.2%)と島根大学(23.8%)は、6年次進級率と卒業率が同じで、データ上は「6年生に上がる前の段階」でストレートコースから外れる学生が多いことが分かります。一方で九州大学は6年次進級率82.1%に対して卒業率79.5%なので、6年次到達後にも差が生じています。
逆に、金沢大学、鹿児島大学、名古屋市立大学はストレート卒業率が非常に高く、特に金沢大学は卒業率97.4%、6年次進級率99.1%、国試合格率100.0%、鹿児島大学は6年次進級率100.0%、卒業率97.0%と、非常に高い水準でした。公立の中では名古屋市立大学4.2%、大阪公立大学6.4%、和歌山県立医科大学7.0%が低留年率グループです。
もうひとつ重要なのは、6年次進級率と卒業率のギャップです。たとえば滋賀医科大学は6年次進級率96.5%に対して卒業率92.2%で差は4.3ポイント、和歌山県立医科大学は97.0%と93.0%で4.0ポイント、富山大学は93.6%と90.0%で3.6ポイントあります。データ上は、これらの大学では「6年生までは比較的進めても、最低修業年限での卒業までは別のハードルがある」と読めます。
また、この一覧を見る限り、留年率の高低と医師国家試験合格率は単純には一致しません。たとえば北海道大学(実質留年率18.8%)は国試合格率98.0%、高知大学(18.3%)も98.0%、琉球大学(18.9%)も97.4%です。一方で、低留年率グループでも和歌山県立医科大学は国試合格率91.1%でした。つまり、「留年しにくい大学=国試に強い大学」とは一概には言えず、両者は別の指標として見るべきです。
志望校選びでこのランキングをどう使うべきか
このランキングは、その大学で6年間ストレートに卒業しやすいかどうかを把握するには便利です。ただし、これだけで大学の良し悪しを決めるのは危険だと考えてください。
留年率が高い大学は、教育が厳格で進級判定がシビアな可能性もありますし、逆に留年率が低い大学でも、卒業後の国試成績や研究環境、臨床実習の特色まで自動的に優れているとは限りません。
さらに、対象50校の入学者数は90人(横浜市立大学)〜140人(筑波大学)の範囲にあり、医学部はもともと母数が大きくありません。100人規模の学年なら、数人の違いで率が数ポイント動くので、順位の数段差を過度に絶対視しないことも大切です。
まとめ
最新の文科省データで見ると、国公立医学部医学科の実質留年率は2.6%〜24.2%とかなり幅があります。上位は山形大学、島根大学、九州大学、下位は金沢大学、鹿児島大学、名古屋市立大学です。全体としては公立のほうが国立よりややストレート卒業率が高いという結果です。
このランキングのいちばん良い使い方は、「この大学はストレート卒業の難易度が高めか、低めか」を知るための補助線として使うことです。偏差値、地域、研究志向、国家試験合格率、実習環境などと合わせて見れば、かなり実用的な志望校比較表になると思って利用してください。