奈良県立医科大学(以下、奈良医大)の推薦入試および一般後期入試では、Academic Word List(学術語彙リスト、以下AWL)を出典とした語彙問題が毎年出題されています。なぜ奈良医大はこのようにAWLに焦点を当てた問題を出し続けるのか、また背景にはどのような理由があるのでしょうか。
ここでは、背景として奈良医大がどのような医学英語についての考えを持ち、またAWLの研究者が奈良医大に在籍している事実を明らかにし、さらに奈良医大1年生の英語教育カリキュラムの特徴や、AWLを早期に学習する重要性、医学部受験全般でAWL対策が必須となる理由について解説します。奈良医大を志望している受験生の方や保護者の方が奈良医大受験に向けての英語学習の指針をつかめるよう、できるだけ誠実にわかりやすく説明します。
目次
Academic Word List(AWL)とは何か?
まずAWLとは何かを確認しましょう。Academic Word List(学術語彙リスト)とは、ニュージーランドの研究者アヴリル・コックスヘッド氏(Averil Coxhead)が2000年に発表した、学術的な英文で頻出する重要語彙570語のリストです。コックスヘッド氏は約350万語におよぶ学術論文や専門書のコーパス(言語資料)を分析し、日常英単語を除いた学術英語特有の語彙を抽出しました。それがAWLであり、大学や大学院で専門的な文章を読む際に頻繁に登場する単語が網羅されています。
例えば、AWLに含まれる語には「analysis」(分析)や「approach」(アプローチ、手法)、「assessment」(評価)、「factor」(要因)など、日常会話よりも学術的文脈でしばしば使われる英単語が並んでいます。AWLは基本的な英単語とは異なり、高度な内容を読み解くために必要となる語彙を扱っている点が特徴です。
また、この570語(正確には570語とその派生語)のAWLに含まれる語彙を身につけることで、学術的な文書中の約10%の語をカバーできるとされています 。一般的な基本語彙(約2000語、いわゆる中学〜高校レベルで習得する最重要単語)が英文本の約80〜85%程度を占めるといわれますが、その先の残り約10%を埋めるのがAWLの語彙だとと言われています。したがって、大学で専門的な文章を読むには基本語彙に加えてAWLの習得が極めて重要だと考えられています。
奈良医大推薦・後期入試でAWLが毎年出題される背景
英語試験におけるAWL重視の傾向
奈良医大の英語入試(推薦型選抜、および一般選抜〈後期日程〉)では毎年のようにAWLに関連した語彙問題が出題されています。実際、奈良医大が公式に公表している入試問題の「出題の意図」によれば、令和5年度(2023年度)の推薦入試英語では設問IIIに「学術語彙リストから選択した語」に関する問題が含まれていたことが明記されています。同様に令和7年度(2025年度)の推薦入試英語でも、英文中の空所に与えられた2グループの英単語から適切な語を選ばせる設問があり、それについて「記載のように『学術語彙リスト』から選択した語に関して、実践的語彙能力を問う」旨が説明されています。つまり「学術語彙リスト(AWL)」から選ばれた単語を使いこなせるかどうかを問う問題が継続的に出題されているのです。今後もこの方針が変わるとは予想できません。
この傾向は推薦入試だけでなく一般入試(後期日程)でも同様です。令和5年度後期日程の英語「出題の意図」を見ると、やはり学術的な英語に関わる実践的な語彙力を測る問題を含めていることがわかります。具体的には、「英文の中に置かれた2グループの英単語の中から最適の語を選択させることにより、意味・品詞・語用法の理解を含めた語彙運用能力を測る」と説明されており 、これはまさにAWLレベルの単語知識を問う問題です。このように、奈良医大では15年以上にわたり一貫して英語試験でAWL語彙の運用力を重視していることが公式資料から読み取れます。
背景にある大学側の狙い
なぜ奈良医大はAWLをこれほど重視するのでしょうか。背景には大きく二つの狙いがあると考えられます。
医学部で必要となる英語力の判断
奈良医大はアドミッションポリシーにおいて「医学科の学修に十分対応できる知識とそれを利活用した思考力・判断力・表現力」を学生に求めると述べています。医学科での学びに十分対応するには、高度な専門知識だけでなく、それを支える英語の読解力、表現力が不可欠です。医学の分野では国際的に通用する最新の情報や研究論文は英語で書かれていることが多く、在学中から英語文献を読むことは避けられません。そこで入学時点で学術的な英文を読みこなす素地があるかを見極めたいという意図があるのだと思われます。AWLの単語はまさに学術的文章で頻出するため、AWLを知っているかどうかで学術英語の基礎力をある程度測ることができます。言い換えれば、AWL語彙の知識を試すことで「専門的な内容の英文を理解し、適切に表現できるか」という受験生の資質を評価しています。
入学後の英語教育との連携
奈良医大では入学後、1年次から英語教育に力を入れており、学術英語・医学英語を早期に習得させるカリキュラムを組んでいます。入試段階でAWLを出題することは、入学後の英語教育への橋渡しの意味合いがあると想像できます。高校までの学習英語と大学の学術英語とのギャップを埋めるため、入試問題を通じて「こういう語彙・英文に慣れておいてほしい」というメッセージを大学側が発していると思われる。つまり、入学前からAWLレベルの語彙習得に意識を向けさせることで、スムーズに大学英語(医学英語)の学習へ移行できるよう配慮しているわけです。
以上のように、奈良医大の英語入試でAWLが継続して出題される背景には、医学部で要求される学術英語力の重要性と入学後の英語教育方針が深く関わっていると言えそうです。
奈良医大にAWL研究者が在籍しているという事実
奈良医大の英語入試問題がAWLに着目しているもう一つの理由として、大学にAWL研究者が在籍していることが挙げられます。実際、奈良医大には英語教育を専門とする教員が配置されており、その中には学術英語の語彙研究に携わっている教員がおられます。奈良医大公式サイトの研究者情報によれば、「臨床英語」を担当する外国人講師が在籍し、医学英語教育を推進しています。このように語学・英語教育の専門家が医学部の教員陣に含まれていることは、全国の医学部ではそれほど多くない特色です。英語教育のプロフェッショナルがいることで、入試問題の作成にも最新の語彙研究の知見が取り入れられていると考えられます。
特にAWLのような学術語彙のリストは、応用言語学や英語教育学の研究分野において重要なテーマです。奈良医大の英語問題作成者は、公式の出題意図の中で明確に「学術語彙リスト」という専門用語を用いています。入試問題の解説にここまで具体的な語彙リスト名が登場するのは珍しく、問題作成に関わる教員がAWLを熟知している証拠と言えるでしょう。おそらくその教員自身がAWLや学術英語教育に関する研究実績を持ち、入試にその視点を反映していると推測されます。大学としても、「国際的に通用する医学・医療の発展を担う人材を育成する」という理念 のもと、英語教育研究者の知見を活かし入試問題を設計しているのでしょう。
奈良医大にはAWLなど学術英語の語彙研究を行う教員が在籍しており、その存在が英語入試でAWLが重視される一因となっています。受験生にとっては、「なぜ奈良医大だけAWLの問題が出るのだろう?」と不思議に思うかもしれません(そんなことを何も考えていない受験生が多いとは思いますが)。しかし、それは大学側にその分野の専門家がいて、明確な意図を持って出題しているからに他なりません。この点を理解すると、なぜ奈良県立医科大学推薦入試や一般後期試験を目指す受験生に医学部受験の英語学習の中に早い時期からAWLの学習を組み合わせてゆくことをグリットメディカルかおすすめする理由がご理解いただけると思います。
奈良医大1年生の英語カリキュラムの特徴
奈良医大に入学した後の英語教育はどのようになっているのでしょうか。奈良医大の1年次カリキュラムには、医学専門科目に入る前段階として教養教育(一般教育)科目が配置されています。大学全体の教育課程の方針によれば、1年次の教養教育で「語学や自然科学の基本を習得し、生命科学を学ぶための基盤を作り上げるカリキュラム」を組んでいるとのことです。ここで言う「語学」とは主に英語を指しており、大学生活のスタート時に語学(英語)のスキルアップを図る科目が設けられていると分かります。
奈良医大では、一般的な大学のように英語の必修科目(例えば「英語Ⅰ・Ⅱ」や「医学英語」など)が1年生に課されています。特徴的なのは、医学部ならではの「医学・医療に特化した英語教育」が早期から行われる点です。前述のように臨床英語のネイティブ講師が配置されていることからも、医療現場や研究の場で使える実践的な英語を訓練する体制が整っています。
奈良医大の英語教育カリキュラムは早い段階から学術的・専門的な英語力を身につけさせることに特徴があります。これは単に英語の授業があるというだけでなく、「医学を学ぶための英語」「将来医師・研究者として国際的に活躍するための英語」という視点で構成されている点で、高校までの英語学習とは大きく異なります。そのため、入学前の段階(高校生のうち)からAWLレベルの単語に触れておくことが望ましいのです。実際、奈良医大の入試問題でAWL語彙が問われるのも、大学の英語カリキュラムで求められる力を見据えているからに他なりません 。
AWLを早期に学習する重要性
上述した奈良医大の方針からも明らかなように、AWLを高校生のうち、できれば受験準備の段階で習得しておくことには大きなメリットがあります。ここでは、受験生にとってAWLを早期学習する重要性を整理してみましょう。
大学受験英語で差がつく
AWLに含まれる語彙は高校英語の教科書や受験単語帳には必ずしも網羅されていません。しかし、難関大学や医学部の長文読解では平易なトピックでも学術論調の英文が出題されることが多く、AWLレベルの単語が随所に出てきます。例えば「科学的研究」「社会問題の分析」などの文章では、concept, strategy, potential, evidenceといったAWL単語が頻出します。これらを知らないと文意を掴めず、読解に時間がかかったり内容を誤解したりしかねません。逆にAWLを身につけていれば、文章全体の10%程度を占める学術語彙 をスムーズに理解できるため、読みやすさ・解答の正確さにおいて他の受験生に差をつけることができます。
奈良医大のようなAWL重視校への対策
奈良医大志望者にとっては言うまでもなくAWL対策は必須です。先に述べたように、奈良医大の推薦・後期では直接AWLの単語を選ばせる設問が出ています。これは極めて明確に語彙力を試すものなので、知らない単語だと正解できません。過去問分析から出題されやすいAWL単語をピックアップし、確実に意味・用法を覚えておくことが合格への鍵となります。実践的には、AWL全570語をいきなり完璧に覚えるのは大変ですが、頻出度の高い語(例えばanalysis, indicate, significant, outcomeなど医学・科学系でよく見る単語)から優先的に習得すると効率的です。奈良医大以外でも、近年は推薦入試やAO入試でプレゼン資料や志望理由書を書く際にAWL語彙の知識が活きる場面があります。早めに学んでおけば受験全般でリードできるでしょう。
入学後のスタートダッシュ
医学部に合格した後、英語で苦労しないためにもAWLの早期習得は重要です。医学部では1年次から専門科目の勉強が忙しくなりますが、その中で英語論文を読んだり英語課題に取り組んだりする時間も出てきます。もし大学に入ってからAWLを一から覚えようとすると、他の勉強との両立が大変です。高校生のうちにAWLを概ねマスターしておけば、大学の英語授業でも余裕をもって臨めるでしょう。奈良医大では「語学の基盤を作り上げる」ことを1年次教育の目標に掲げています が、受験段階で既に基盤ができていれば理想的です。特に英語がやや苦手という受験生ほど、AWL学習を通じて学術的な英文に慣れておくことが入学後の自信につながります。
このように、AWLを早期に学ぶことは受験対策とその先の大学生活の双方に有益です。もちろん高校英語の基本単語や文法の習得が最優先ではありますが、それらが固まってきた受験生はぜひAWLにも挑戦してみてください。最初は見慣れない単語も多いかもしれませんが、背景知識と結びつけて覚えると記憶に残りやすいです。例えば“climate”(気候)という基本語がわかれば、AWLの“adjacent”(隣接した)は知らなくても“ad-”が「〜に向かう」、“jac”が「投げる(接する)”*といった語源知識で「投げ込まれる→隣に置かれる→隣接した」と類推できるかもしれません。このように語源や文脈で推測しながら学ぶと、AWLの習得も決して苦行ではなく知的なパズルを解くような楽しさがあります。
医学部受験でAWL対策が必須な理由
最後に、医学部受験全般においてなぜAWL対策が重要と言えるのかをまとめます。奈良医大のケースは一例ですが、実は日本全国の医学部入試でも英語の難度は高く、学術的な英文を読む力が求められる点では共通しています。その理由は以下のとおりです。
医学部の英語長文は専門的内容が多い
医学部の入試英語では、医療・生命科学・環境・テクノロジーなどの専門的または学際的なテーマの長文が出題される傾向があります。文章自体は入試問題用に書き下ろされたものもあれば、海外の科学雑誌の記事から抜粋されることもあります。いずれにせよ、高校レベルの日常話題の文章とは異なり、論理的で専門的な語彙を含む文章になるため、AWL級の単語が頻繁に登場します。例えば、人間の生物学的な話題であれば“cell”(細胞)や“immune”(免疫の)といった専門語とともに、“hypothesis”(仮説)や“analysis”(分析)などAWL語彙が散りばめられています。したがって医学部志望者はAWL対策抜きに長文読解力を伸ばすことは難しいのです。
英語の配点比重が高い場合がある
大学によっては英語が合否を大きく左右します。奈良医大の場合、一般前期日程では英語の個別試験は課されず共通テスト+小論文+面接ですが、推薦・後期では英語試験があります 。他大学では一般入試で英語が重視されるところも多々あります。英語で高得点を取るには平易な問題を落とさないことに加え、難解な語彙問題や内容把握問題でいかに得点するかが鍵となります。AWLをマスターしておけば、難解に見える文章中のキーワードを正しく理解できるため、内容一致問題や要旨要約などでも有利になります。医学部受験では1点の差が合否を分けることもあるため、AWL対策による読解力向上は点数上積みに直結すると言えます。
将来の医師・研究者としての基礎力
保護者の方にとっては、「医学部に合格できれば英語力は二の次」と思われるかもしれません。しかし、現代の医療人にとって英語は避けて通れない必須スキルです。医学部在学中には、英語で書かれた教科書や最新の研究論文を読む機会が山ほどありますし、国家試験に合格した後も最新の医療情報を得るには英語文献の読解が欠かせません。ひいては国際学会で発表したり留学したりする可能性もあります。受験段階でAWL語彙をしっかり身につけておくことは、将来医師や医学研究者となるための土台作りでもあるのです。医学部受験勉強はゴールではなく医師へのスタートラインですから、その過程で培ったAWLレベルの英語力は一生の財産になります。
以上の理由から、医学部を目指す受験生にとってAWL対策はほぼ必須だと断言できます。特に奈良医大のように直接AWLを問う大学を志望する場合は避けて通れませんし、たとえ奈良医大以外が志望でも学術英語の力は必ず役に立ちます。英単語の勉強というと敬遠されがちですが、「将来の自分に必要な力なんだ」というモチベーションを持ってAWLの習得に取り組めば、きっと着実に語彙力・読解力が伸びていくでしょう。
AWL学習で未来の医学部生活の準備を
奈良県立医科大学の推薦入試、一般後期入試でAWL(Academic Word List)由来の語彙問題が出題され続けるのはなぜか、その問いに対して本記事では背景と重要性を詳しく見てきました。奈良医大の英語試験では、公式に「学術語彙リスト(AWL)」からの出題であることが示されており 、これは同大学の英語教育の専門家が学術英語力を重視している現れです。実際に奈良医大にはAWLなどの語彙研究に通じた教員が在籍し、入試問題にもその知見が反映されています。
また、奈良医大の1年次英語カリキュラムは学術的な英文読解や医学英語の習得に力点が置かれており 、入学後すぐにAWLレベルの語彙が必要となる場面が出てきます。したがって、受験生の段階からAWLを学習しておくことの重要性は非常に高いと言えます。AWLは570語もの大量の単語リストですが、その分身につければ学術文献の読解において大きなアドバンテージとなります。医学部受験生はまず基本単語を固めつつ、余力があればAWLにも積極的に取り組んでください。特に奈良医大を志望する方は、過去問に出たAWL単語をチェックし繰り返し練習することで、傾向に合った対策ができます。
「語学や科学の基盤を作る」——奈良医大が掲げる教育理念にもあるこの言葉 のとおり、英語の基盤としてのAWL習得は将来の医学部での学びに直結します。受験勉強の延長線上にある大学生活、そのさらに先にある医師、研究者としてのキャリアまで見据えて、ぜひAWLという土台作りを今から始めてみてください。奈良医大に限らず、AWLを制する者は医学部英語を制すと言っても過言ではありません。地道な語彙習得の努力が、合格とその先の明るい未来につながることを願っています。
奈良県立医科大学推薦、一般後期志望の受験生や保護者の方で、具体的にAWLの学習をどうすばいいのかご興味のかたはぜひ下のLINE登録からご登録いただき、ご質問、ご相談ください。代表掛谷が直接ご返信させていただき、今後の学習相談をお話させていただきます。
参考文献・出典
- 奈良県立医科大学公式サイト(入試問題の出題意図)
- 奈良県立医科大学 アドミッションポリシー
- 奈良県立医科大学 教育課程情報
- ベネッセ教育情報サイト(AWLの語彙カバー率解説)
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