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奈良県立医科大学 学校推薦型選抜 緊急医師確保枠について

出願資格 (誰が出願できるか)

奈良県立医科大学医学部の令和7年度(2025年度)学校推薦型選抜「緊急医師確保特別入学試験」(募集人員15名)では、以下の出願資格をすべて満たす必要があります。

学歴・卒業時期

高等学校等を令和7年3月に卒業見込みの者、または令和5年3月以降に卒業した者(卒業後2年以内の者)。いわゆる浪人生でも卒業後2年以内であれば出願可能です

推薦要件

在籍(または出身)高等学校長から責任をもって推薦を受けられる者であること。出願には高校長の推薦書が必要です。評定平均値の制限や高校ごとの推薦人数枠は設定されていません

意志・適性

奈良県が指定する地域の医療機関や特定診療科で将来医師として勤務する強い意欲を有する者。具体的には卒業後、奈良県知事が定める「指定従事医療機関」で医師業務に従事することを希望し、その地域医療に貢献したいという意思を持っていることが条件です。「合格した場合は本学に入学することを確約できる者」であることも求められており、併願校の扱いに注意が必要です。緊急医師確保枠合格者は他の国公立大医学部との併願ができません。

出身地や高校所在地に地域指定はなく、全国どこからでも出願可能です。奈良県内出身かどうかは問われず、本人や保護者の居住地条件もありません。また、緊急医師確保枠と地域枠の重複出願はできず、いずれか一方しか出願できません。

卒業後の地域医療勤務義務(拘束条件)

緊急医師確保枠で入学した学生には、卒業後に奈良県内で医師として勤務する義務が課されます。奈良県知事が定める特定の医療機関・診療科で一定期間勤務し、地域医療の充実に貢献することが期待されています。

勤務地の指定

卒業後は、奈良県知事が指定する「指定従事医療機関」で医師として勤務する義務があります。

指定従事医療機関とは、奈良県内で医師不足が深刻な地域にある公的医療機関(へき地医療機関)や、医師確保が困難な特定診療科・専攻分野を有する県内の医療機関のことです。

例えば、五條市・宇陀市・山辺郡・宇陀郡・吉野郡にある公的病院・診療所等のへき地医療機関、奈良県内の救命救急センター、および小児科・産婦人科(産科含む)・麻酔科・救急科・外科(呼吸器外科・心臓血管外科・乳腺外科・消化器外科・小児外科)・脳神経外科・総合診療科といった特定診療科、さらに総合内科分野・児童精神分野の特定専攻課程などが指定対象になります。

知事は奨学金貸与を受けた各学生ごとに具体的な勤務先(診療科・病院)を指定します。

勤務義務期間

指定された奈良県内の医療機関で定期間、継続して医師として勤務する義務があります。その期間は「臨床研修期間(初期研修)を含めて、医学部で貸与を受けた年数の1.5倍」と定められており、標準的には9年間に相当します。具体的には、医学部卒業後ただちに奈良県知事指定の県内臨床研修病院で2年間の臨床研修(初期研修)に従事し、その後引き続き上記の指定医療機関で約7年間勤務することで、合計9年間(6年×1.5倍)の従事義務を果たす形になります。この9年間には最初の研修医期間2年も含まれます。

義務違反時のペナルティ(違約金の有無)

上記の地域勤務義務を途中で果たせなくなった場合(途中離脱・違反時)には、奨学金の返還義務が生じます

緊急医師確保枠では在学中の学費等を奈良県から貸与されていますので、違約金そのものは設定されていませんが、貸与を受けた修学資金の全額(入学金・月額貸与分)および利息を一括返還しなければなりません。返還事由(違反事由)が生じた場合、その翌月から起算して1ヶ月以内に全額返済が求められます。

例えば「卒業後2年以内に医師免許を取得できなかった」「初期研修を完了しなかった」「指定機関での勤務を継続せず所定期間に満たなかった」等の場合が返還事由として規定されています。

返還時には在学中に年10%の利息が付加された額を納める必要があり、返還期限を過ぎると年15%の延滞利息(ペナルティ)が課されます。

なお9年間の従事義務を全うした場合には、貸与された修学資金(奨学金)は全額返還免除となり、返済の必要はありません。

途中離脱せず一定期間以上勤務すれば返還免除を受けられる規定(貸与期間の2/3に相当する期間従事した場合に免除)もありますが、制度上は原則9年間の勤務継続によって返還義務が免除される仕組みです 。

地域枠入試(募集人員22名)では奈良県からの奨学金貸与がないため、卒業後の法的な勤務拘束義務は課されません。地域枠合格者も将来は奈良県内での地域医療に貢献することが期待されていますが、緊急医師確保枠のような従事年限や違約金規定はありません。

奨学金制度(奈良県緊急医師確保修学資金)

緊急医師確保枠の合格者には、在学中6年間にわたり奈良県より奨学金(修学資金)の貸与を受けることができます。正式名称は「奈良県緊急医師確保修学資金貸与制度」といい、学業期間中の経済的負担を軽減し将来の奈良県地域医療に貢献してもらうことを目的とした県の支援制度です。

貸与対象者

貸与対象者は、奈良県立医科大学医学部(緊急医師確保特別入試合格者)に在学し、将来奈良県内の医師不足地域・診療科で従事しようとする学生です。緊急医師確保枠で合格し入学した時点で、この修学資金の貸与申請を行い制度を利用します(募集要項でも所定の様式による申請書の提出が求められています)。

貸与金額・期間

入学時に大学の入学金相当額が貸与され、その後在学中毎月定額が貸与されます。

奈良県立医科大学の場合、入学時は奈良県内出身者282,000円、県外出身者802,000円が貸与されます(入学金は県が大学に直接納付する形で学生本人の負担はありません)。

在学中の貸与額は月額200,000円で、医学科在学期間の6年間(入学手続完了月~卒業月まで)毎月支給されます。したがって年間240万円、6年合計で約1,440万円+入学金相当額の貸与を受ける計算になります。

利息

貸与された修学資金には年利10%の利息が付きます(貸与の翌日から卒業月末まで発生)。在学中に利息分の支払いが生じるわけではありませんが、卒業後に義務違反で返還する場合にはこの利息を上乗せして返済する必要があります。返還免除となった場合は利息も実質免除されます。

返還義務の有無

卒業後に所定の地域医療勤務義務(約9年間)を完了すれば、貸与された修学資金の元本・利息は全額返還免除となり、返済の必要はありません。つまり、この奨学金は条件付きの貸与制ですが、義務を果たせば返還不要(事実上給付型の奨学金)です。

しかし、定められた条件を満たさなかった場合には返還が必要です。返還事由に該当すると判断された場合は貸与総額に利息を加えた金額を奈良県に一括返済しなければなりません。返還期限までに返しきれない場合は年15%の延滞利息も課されます。

なお奈良県によれば、「大学卒業後2年以内に国家試験に合格し直ちに所定の臨床研修・地域勤務を継続し、貸与期間の2/3に相当する期間(≒4年)従事すれば返還免除となる」仕組みであるとされています。

ただし実際には原則として臨床研修2年+指定医療機関7年の合計9年間の勤務完遂を促しているため、途中離脱しない限り返還を求められることはなく、円満に勤務義務を終えれば奨学金は返済不要となります。

以上のように、「緊急医師確保枠」は経済的支援(学費・生活費の貸与)と卒業後の地域医療への貢献義務がセットになった特別枠です。趣旨は「将来奈良県の地域医療を担う意思を持つ学生に対し、在学中の費用負担を県が支援し、その代わり卒業後一定期間は奈良県内で医師として勤務してもらう」ことにあります。

この枠で入学・卒業する場合には、多額の奨学金が返還不要になる一方、約9年間にわたって勤務地・診療科の制約を受けて働く責務を負う点を十分に理解しておく必要があります。通常の地域枠入試は経済的支援がない代わりに勤務拘束もありませんので、自身の志向や経済状況に応じてどちらに出願するか考えるとよいでしょう。

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