大阪公立大学医学部を目指す皆さんにとって、英語は合否を左右する重要な科目です。その入試英語では、他大学と比べても語彙レベルが非常に高いことが知られています。大阪公立大学の英語では高い単語力と長文読解力が要求されることは言うまでもありません。長文読解では日常では見慣れない難解な英単語が頻出し、しばしば注釈(語注)が与えられます。大学入試の英語では、たとえ京都大学でも受験生のレベルを超えると判断されれば易しい単語に言い換えて出題するのが普通なのですが、大阪公立大学はどうもそうは考えておらず、注釈(語注)を与えることで受験生に対応してほしいと考えていることがうかがえます。
実際、元大阪市立大学(大阪公立大学の前身校の一つ)の入試英語では科学系や医療系分野の文章がよく出題されてきており、2022年度以降、あるていど同じ路線が継承されてきました。こうした高度な内容の英文に対応するには、単語の意味をただ日本語に置き換えるだけでは不十分です。日頃から英英辞典(英語の単語を英語で説明する辞典)を活用し、英語を英語のまま理解する習慣を身につけることが合格への近道です。
大阪公立大学医学部英語の特徴:難単語の頻出と英語で書かれる注釈
大阪公立大学医学部の英語試験は、例年大問3題(長文読解2題+和文英訳1題)という構成です。読解問題では800語程度と650語程度の長文が出されるため、膨大な英文を読みこなす読解力が求められます。その長文中には大学入試標準を上回る難度の単語が数多く登場し、確かな語彙力が要求されます。難しい単語には、試験問題中に日本語で意味が補われている年度もありますが、日本語や英語の注釈がなければ解答できない設問もあるため、受験生自身が語彙を十分に蓄えておくことが不可欠です。
さらに注目すべきは、語注そのものが英語で提示される傾向です。例えば2022年度の大阪公立大学医学部の入試問題では、長文読解(大問1)中の難単語に付された注釈がすべて英語で記載されていました。受験生は難解な単語の意味を英語の定義文から理解しなければならず、これはまさに英英辞典を引いて英単語の意味を確認する行為と同じです。

実際、注釈に用いられる定義文は英英辞典からの引用である場合もあり、英英辞典の定義文そのものと言えます。普段から英英辞典に親しんでいれば、試験本番でも英語の注釈を素早く読み解き、読解の大きな助けとなるでしょう。その意味で、英英辞典を使いこなすこと自体が入試本番の素晴らしい予行演習にもなります。実際、英英辞典に親しんでいる受験生であれば、本番でも注釈の英語に戸惑うことなくスムーズに意味を理解して答案を作成することができます。逆に、普段から日本語訳に頼る勉強しかしていなければ、試験中に英語の注釈文を前にして慌ててしまい、貴重な時間を失いかねません。
英英辞典を使うメリット:英語で考え、文脈で理解する力
英英辞典を日常的に活用することには、大阪公立大学医学部の英語対策に直結する多くのメリットがあります。以下に主なポイントを挙げ、それぞれについて説明します。
・英語で考える習慣が身につく: 英英辞典では語義がすべて英語で書かれているため、単語の意味を理解する際に頭の中で日本語に翻訳する必要がありません。これにより脳の中から少しづつ日本をを消して英語モードに変えてしまうことで、英文をダイレクトに理解する訓練になります。
実際、速読では「英語モード」と「日本語モード」を切り替えて使う意識が大切だとも言われており、英英辞典の利用は英語モードを育てる最適な方法の一つです。日本語への逐語訳に頼らなくなることで、読解スピードの向上も期待できます。英文を読む最中に逐一和訳を挟まない習慣が身につけば、難解な文章でも素早く読解することができるようになります。
・文脈に沿った本質的な意味がつかめる: 英和辞典では一つの英単語に対し短い日本語訳しか載っていない場合も多く、文脈によるニュアンスの違いが掴みにくいことがあります。しかし英英辞典なら、その単語がどのような意味合いで使われるかが英語で丁寧に説明されています。例えば「shy」と「reserved」という単語は、日本語の英和辞典ではどちらも「内気な」と同じ訳語が与えられています。しかし実際のニュアンスは異なり、英英辞典でそれぞれの定義を読めばその違いが明確に理解できるでしょう。英語の定義文自体が一種の文脈となるため、単語の本質的な意味や細かいニュアンスをイメージでとらえやすくなります。英文の文脈に沿った理解を日常的に行なっていれば、入試の長文中で未知の語に直面しても慌てずに、適切な意味を推測することができます。
・誤訳や取り違えを防ぐ: 日本語に直訳すると誤解を招くような単語や多義語に出会ったときも、英英辞典で意味を確認すれば不適切な日本語訳による混乱を避けることができます。例えば“critical”という単語は文脈により「重大な」「批判的な」など意味が大きく異なりますが、日本語訳だけに頼っているとどちらの意味か判断を誤る危険性のある単語の代表です。
しかし英英辞典の定義を読めば、その文脈での“critical”の意味が「extremely important」なのか「expressing disapproval」なのかを的確に把握できるのです。英語の定義を通して単語の細かいニュアンスや用法を押さえることで、日本語に置き換えた際に生じがちなズレにも気付き、精度の高い読解につながります。特に医療・科学分野の英文では、日本語に訳しにくい専門用語や概念も少なくありません。英英辞典であればそれらを英語のまま理解できるため、専門的な内容でも正確に読み解くことができます。
・語彙の定着と学術的な英語力の向上: 日々英英辞典を使って単語を調べていると、自然と語彙の定着率が高まります。英語で書かれた定義文や用例に触れることで、その単語のイメージが記憶に残りやすく、単なる日本語訳の丸暗記よりも長期的な記憶につながります。また、英英辞典の定義文は学習者向けであれば平易な英単語で書かれており、それ自体が良質な英語の読解練習にもなります。定義を読むことで基本的な英語力が養われ、結果として読解力と語彙力の双方が磨かれるのです。さらに、定義文に含まれている単語は調べようとしている単語の関連語であることが多く、ターゲットとしている単語以外に関連語を身につけられるというメリットもあります。
さらに、英英辞典で培った「英語で理解する力」は、大学入学後に必要となる学術的な英語の読解にも大いに役立ちます。医学部では将来的に英文の医学論文や専門書を読む機会が避けられません。しかし、受験生時代、在学中から英英辞典に慣れておけば、そうした高度な英文を読み解く基礎力が養われているはずです。英英辞典で身につけた語彙力と読解力は、入試だけでなく入学後の学習まで見据えた大きな財産となるでしょう。
英英辞典を日常学習に取り入れるコツ
英英辞典の効果を最大限に引き出すために、日々の学習での上手な使い方もお話ししておきましょう。英英辞典というと難しく感じるかもしれませんが、今では電子辞書の中に収録されていたり、スマートフォンのアプリ等で誰もが気軽に利用できるツールとなっています。にもかかわらず、日常的に英英辞典を使いこなしている学生は、英語を専門とする学科の学生でも多くはないようです。だからこそ、今のうちから英英辞典を活用する習慣を身につければ、他の受験生に対して大きなアドバンテージに、そして大阪公立大学医学部を目指す受験生にとっては、明らかにアドバンテージです。
まず、最初のうちは学習者向けの英英辞典(OxfordやLongmanなど)を使うことをおすすめします。これらの辞典は定義に使われる語彙が限定されており、平易な英語でわかりやすく説明してくれるため、辞書の英文だからと身構えずに読み進められるはずです。わからない単語に出会ったら、いきなり日本語訳を調べるのではなく、まず英英辞典で定義文を読んでみましょう。可能であれば文中での当該単語の使われ方(品詞や周囲の文脈)も意識しながら読むと、いっそう理解が深まります。
もちろん、どうしても意味が取れないときは英和辞典を併用して構いません。しかし最初から日本語に頼らないことが重要です。日本語訳から先に見てしまうと、その訳語の先入観に引きずられ、英語本来の意味を捉え損ねる恐れがあります。英英辞典で得られた理解を土台に、その後で英和辞典で日本語訳を確認する、という順序にすると効果的です。
英英辞典の定義を読む中で新たに出てきた単語についても、できればさらに英英辞典で調べてみてください。そうすることで語彙のネットワークが広がり、ボキャブラリーが飛躍的に増えていきます。最初は手間に感じるかもしれませんが、このプロセスを習慣化することで、英語を英語のまま理解する力が着実に伸びていきます。
また、英英辞典で調べた単語は自分なりに英語で言い換えてみると記憶が定着しやすくなります。例えば encounter という単語を調べて「to meet someone unexpectedly」という定義を読んだなら、「to meet by chance」と自分の言葉で言い換えてみると良いでしょう。さらに、辞書に掲載されている例文にも目を通してみることをおすすめします。例文から語彙の使われ方や典型的な文脈を学べるため、より深い理解と応用力につながります。このように能動的にアウトプットや例文確認を行うことで、辞書から得た知識が実践的な語彙力として身についていきます。
日々の英語学習に英英辞典を
一部の高等学校の英語の先生や、予備校の先生の中にも「大学受験の勉強に英英辞典は必要ない」という意見がありました。確かに、紙の辞書が中心だった時代には、英英辞典を引くハードルが高かったかもしれません。しかし現在では電子辞書やスマートフォンアプリで英和辞典と英英辞典を行き来しながら効率的に学習することが可能です。実際、東京大学医学部附属図書館が公開している資料でも『大学卒業時点で英和辞典とはオサラバです。英和辞典は全く必要ありません。英英辞典とともに進め』と明言されています。大阪公立大学医学部のように高度な英語力を要求される試験に挑むのであれば、英英辞典を積極的に活用すべきです。
大阪公立大学のような難易度の高い長文読解に備えるため、ぜひ今日から英単語を調べるときには英英辞典を引いてみてください。最初は英語の定義を読むのに時間がかかるかもしれません。しかし続けるうちに、英文を日本語に置き換えることが減ってゆき、語義を理解するスピードが上がっていきます。紙の辞書だけでなく電子辞書やアプリ版の辞書でも構いませんの。自分に合った形で日常的に英英辞典を活用してください。
英英辞典を使いこなす習慣は、難解な語彙への対応力、正確な読解力、そして将来医学部で必要となる英語力を着実に伸ばしてくれるはずです。毎日の学習に英英辞典という心強いパートナーを加え、大阪公立大学医学部合格に向けて万全の英語力を養っていきましょう。その過程で、自分の力で英語を理解できる喜びもきっと感じられるはずです。英英辞典とともに、大阪公立大学医学部合格に向けて、英語力に一層磨きをかけましょう。
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