日本全国には多数の国公立、私立の医学部が存在しています。その中で、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県など)には私立医学部が非常に多く集まっています。東京都内だけでも私立医学部は11校にのぼり、慶應義塾大学医学部や東京慈恵会医科大学、日本医科大学、順天堂大学など錚々たる大学が名を連ねています。関東地方全域で見ると私立医学部は18校に達し、これは全国の私立医学部31校の半数以上を占めます。つまり首都圏だけで全国の私立医学部のおよそ5~6割が集中している状況です。首都圏は他のどの地域よりも医学部の数が多く、中でも私立医学部の密度が突出しています。では、なぜこれほどまでに首都圏に私立医学部が集中することになったのでしょうか。その背景には、歴史的な経緯や国の政策、都市部ならではの利点など、様々な要因が関係しています。
目次
私立医学部が首都圏に集中する歴史的背景と政策要因
首都圏の私立医学部集中には日本の医学教育の歴史的経緯と国の政策的判断が大きく影響しています。明治から昭和初期にかけて、日本の医学教育は東京など主要都市を中心に発展しました。慶應義塾大学医学部(1917年設立)や東京慈恵会医科大学(1881年創設の慈恵医院起源)、日本医科大学(1876年創設の私立医学校起源)など、戦前から存在する私立医学部の多くは東京に誕生しています。これらの大学は長い伝統と実績を持ち、首都東京が西洋医学導入の拠点だったことから、自然とこの地域に医学部が集積していきました。
歴史小説家の司馬遼太郎は、この時代の東京の大学の役割を、日本全国への「文明の配電盤」だと表現しました。
戦後になると、国は医師不足を補うため全国の医学部定員増と新設を進めます。「一県一医大構想」と呼ばれる政策では、1970年代に医学部のない県に次々と新設医学部が置かれました。この1970年代の約10年間で新設された医学部は国公私立あわせ34校にもおよびます。多くは国公立医学部として地方に設置されましたが、首都圏近郊でも例外ではありませんでした。埼玉県には1972年に埼玉医科大学(私立)が新設され、栃木県には同じく1972年に自治医科大学(私立特殊法人)が設立されています。また1970年には杏林大学医学部(東京)や北里大学医学部(神奈川)など首都圏の私立医大も相次いで開設されました。このように、医師養成拡充の波に乗って首都圏でも私立医学部が増えたことが、現在の集中の源流の一つです。
一方で、1980年代以降は医師数抑制のため新設医学部の認可は長らく凍結されていました。昭和54年(1979年)を最後に約40年間、新しい医学部はどこにも作られなかったのです。
しかし近年になり、地域医療の医師不足や震災復興支援の必要性から方針が転換され、平成28年(2016年)に東北医科薬科大学(宮城県)、翌2017年には国際医療福祉大学医学部(千葉県成田市)が開設されました。これは琉球大学医学部(1979年認可)以来の医学部新設であり、実に数十年ぶりの出来事でした。新設が認められた背景には、地方の医師不足や地域偏在を是正する目的がありました。ただし、その後も私立医学部の多くは依然として既存の首都圏・都市部の大学に集中している状態が続いています。
歴史的に見れば、東京を中心とする首都圏は日本の医学教育・医療の中心地として発展してきました。
戦前からの伝統校が集まり、戦後の拡充期にも人口集中地ゆえに医学部設置の舞台となったことが、現在の私立医学部集中に繋がっているのです。また、首都圏近隣県では国立医学部が設置されなかった地域(例:埼玉県、神奈川県)もあり、その穴を埋めるように私立大学が医学部を設置した経緯もあります。このような政策判断(「東京近郊は国立を置かずとも東京の大学でカバーできる」という考えなど)が、結果的に私立医学部の比重を首都圏に高めた一因と言えます。
近年では、医師の都市部集中による地域偏在が問題視され、2008年以降ほぼ全ての医学部で「地域枠」入試が導入されるなど、地方に根ざす医師を育てる政策も取られています。地域枠とは奨学金と引き換えに卒業後一定期間その地域で働くことを条件に入学を認める制度で、医師偏在是正に一定の効果を上げつつあります。このような政策は裏を返せば、「東京など大都市圏に医師(医学部卒業生)が集中してしまう現状への対策」でもあります。歴史的経緯で首都圏に医学部・医師が集まり過ぎたことへの是正措置と言えるでしょう。
医学教育インフラと都市部での臨床実習の利点
首都圏に医学部が集まる大きな理由の一つは、都市部ならではの医学教育インフラの充実です。医学部教育には大学附属病院や関連病院での臨床実習が欠かせませんが、東京をはじめとする都市部には大規模で高度な医療施設が数多く存在します。患者数が多く症例も多彩なため、学生は幅広い疾患や最新の医療に触れる機会に恵まれます。例えば人口の多い首都圏では医療機関の選択肢が豊富であり、将来医師になった後のキャリアにおいても様々なプランを描きやすい環境です。このため在学中の臨床実習段階でも同様で、都市部では大学病院以外にも多くの関連病院・クリニックで実習が可能となり、より多様な症例を経験できる強みがあります。
地方の医学部では実習先の確保に苦労するケースもありますが、首都圏の大学は多くの医療機関と連携しやすく、「患者さんが集まる都市の病院で学べる」という利点を享受できます。首都圏の私立医大はそれぞれ複数の附属病院・関連病院グループを持つところが多く見られます。
日本医科大学は都内に付属病院を含め複数の主要提携病院を展開し、昭和大学は首都圏に病院群(旗の台病院、江東豊洲病院、横浜市北部病院など)を持っています。東邦大学も大森・大橋・佐倉に医学部附属病院を置き、順天堂大学も都内および浦安(千葉)などに附属病院を展開しています。このように都市部では学生の臨床実習を支える病院ネットワークが発達しており、最先端医療設備や専門医の指導のもとで実地研修を積めることは、教育上の大きなメリットです。
さらに、研究設備や情報環境といったインフラ面でも都市部医学部は恵まれています。首都圏には国の研究機関や最新の医療企業が集積し、大学間の連携も盛んです。そのため私立医学部であっても都市部にあることで大規模な研究プロジェクトに参画しやすい場合があります。また医学部図書館の蔵書やネットワークも充実しやすく、学生にとって学習・研究資源へのアクセスが良好です。総じて、都市に医学部を置くことは医学教育の質を高めやすい土壌があり、それが私立大学としても首都圏に医学部を構えたい動機の一つと言えます。
首都圏にあることで優秀な学生・教員が集まりやすい
優秀な人材(学生・教員)が集まりやすいことも、首都圏に私立医学部が多い要因として見逃せません。大学は人が命ですから、人口と才能が集中する首都圏に拠点を置くことは、優秀な学生の確保や一流の教員招聘に有利に働きます。
学生面では、都市部医学部の入試難易度(偏差値)の高さが顕著です。一般に都市部の医学部は国公立・私立を問わず偏差値が高めであり、地方の医学部より難関となる傾向があります。実際、国内トップレベルの医学部は東京大学医学部(偏差値77)を筆頭に京都大学(76)、慶應義塾大学医学部(私立、偏差値約75)など都市圏に集中しており、偏差値70を超える医学部は地方にはほとんど存在しません。
東京慈恵会医科大学・日本医科大学・順天堂大学といった首都圏私立医学部も軒並み偏差値は70近辺にあり、地方の国公立医学部(60台前半~中盤)より高い難易度です。このことは、首都圏の医学部が全国から優秀な受験生を引き寄せている現れと言えます。実際、多くの受験生が「どうせ医学部に行くなら都市部の有名大学で学びたい」という志向を持つことや、東京圏の進学校から多数の医学部合格者が出ていることが背景にあります。
さらに、首都圏の私立医学部には長年の実績からくるブランド力があり、これも優秀な学生を集める一因です。特に慶應・慈恵・日本医科大の3校は「私立医学部御三家」と称される伝統校で、その看板は全国的にも強く認知されています。これら御三家は歴史ある医師ネットワークと高い教育水準で知られ、難易度のみならず「将来のキャリア形成に有利」というイメージからも人気です。例えば医学部ダブル合格者の進学動向を見ても、地方の国公立医学部より首都圏の有名私立医学部を選ぶケースがあるほどで、そのブランド性が窺えます。優秀な学生は少しでも良い教育環境と将来性を求めるため、結果的に首都圏の医学部に志願者が集中する構図が生まれています。
教員(医師・研究者)の面でも、都市部医学部は人材を集めやすい土壌があります。そもそも医師自身が都市部に集中しやすい傾向があり、人口10万あたりの医師数は東京都や京都府など都市部が多く、最少の埼玉県と比べ約1.9倍の格差があるとの統計もあります。首都圏には優秀な医師が数多く働いており、大学の教授・講師陣も集まりやすいのです。大学病院や大規模研修病院が多数存在することで、他医療機関から専門医を大学教員に招へいしたり、非常勤講師として臨床の第一線で活躍する医師に教壇に立ってもらったりすることも容易です。例えば慶應義塾大学医学部では多くの関連病院の医師が非常勤講師を務めており、順天堂大学や日本医科大学でも附属病院の医師だけでなく都内の関連施設から指導医が講義・実習に参加しています。研究者ネットワークの面でも、都市部には製薬企業の研究所や国立研究機関があり共同研究の機会も豊富です。私立大学でも都市にあれば競争的資金を得やすかったり、研究設備の充実した他大学と連携しやすかったりする利点があります。
このように、首都圏という立地そのものが「人材の集積地」であるため、私立医学部にとっても有能な学生・教員を確保しやすく教育・研究の質を高めやすいメリットがあります。これは地方では得がたい強みであり、多くの私立大学が都心に医学部を維持・設置してきた理由の一つでしょう。
首都圏に医学部を置くことの経営・運営上のメリット
私立大学が医学部を運営するには莫大なコストと組織力が必要ですが、首都圏に医学部があること自体、大学経営上の様々なメリットをもたらしています。
まず、経済圏の規模という観点があります。東京を中心とした首都圏は日本最大の経済圏であり、裕福な層や大企業、本院規模の病院が多数存在します。そのため、大学附属病院の収益を上げやすく、医学部運営の財政基盤を支えやすい土壌があります。大学病院は高度医療を提供する一方で収支が厳しいケースも多いですが、首都圏の大学病院は患者数の多さや高度先進医療の提供によって比較的安定した収益を確保しやすいと考えられます。また都市部では先端医療のニーズも高く、自由診療や高度医療センターなどの形で病院収入を得る機会も多いでしょう。
次に寄付金や資金調達の面でも地理的メリットがあります。私立医学部は学費だけでは運営費を賄えず、不足分を国からの助成金や寄付金で補っています。首都圏にある大学はOB・OG(卒業生)ネットワークが広範かつ影響力を持ち、医局OBや患者、有志からの寄付金を集めやすい土壌があります。例えば慶應医学部は多くの著名医師・富裕層の卒業生を抱え、大口寄付が比較的得やすいと言われます。また大学の評判が高ければ企業や財団からの寄附講座を誘致することも容易になります。都市部の大学は社会的な露出も高く、ブランド力があることで結果的に資金面での支援を受けやすいのです。
病院グループの形成も都市型私立医学部の経営上の強みです。前述のとおり、多くの首都圏私立医大は複数の関連病院を持っています。これは教育面の利点であると同時に、経営面でも大学全体の医療収入を底上げしたり、スケールメリットを活かして経費削減したりする効果があります。たとえば東京慈恵会医科大学は都内に3つの附属病院を運営しており、これらが一体となって大学の医療事業収入を支えています。また関連病院への医師派遣(医局人事)によって人的ネットワークを広げ、臨床研究や研修の場を提供することで大学の影響力を強めることもできます。都市部だからこそ可能な大規模医療ネットワークは、私立医学部が長期的に安定運営する上で重要な要素です。
さらに首都圏に医学部があることで大学ブランドの向上にも繋がります。医学院を持つ大学は「総合大学」としての地位が高まり、社会的信用や知名度も上がります。特に医学部は大学ランキングや評価において重要視される学部であり、首都圏の大学にとって医学部設置はブランド戦略上も大きな意味があります。例えば帝京大学や東邦大学、昭和大学といった首都圏の私立医大は、医学部の存在が大学全体の顔となりブランドを支えています。優秀な学生の確保→医師国家試験の高い合格率→大学の信頼性向上→さらに志願者増加という好循環も生まれやすく、首都圏でブランドを確立できれば大学経営は安定しやすくなるのです。
このように、経済圏の利点・病院ネットワーク・資金調達・ブランド形成といった観点で、首都圏に医学部を置くことは私立大学にとって非常に大きなメリットがあります。裏を返せば、地方で医学部を新設・運営することが財政的にも人材的にもいかにハードルが高いかを示しているとも言えるでしょう。首都圏集中にはこうした大学経営上の合理性も存在しているのです。
首都圏集中が受験生にもたらす影響(通学利便性・生活環境・学費・競争倍率など)
私立医学部の首都圏集中は、受験生やその保護者にも様々な影響を及ぼしています。良い面もあれば注意すべき点もありますので、いくつかの観点から解説します。
通学の利便性・生活環境
首都圏に医学部が多いことで、関東圏在住の受験生にとっては「地元から通える医学部」に合格できる可能性が高まります。もし自宅から通学できれば、一人暮らしに伴う家賃や生活費を節約でき、経済的負担が軽減されます。特に東京都内在住の家庭にとって、子どもが都内の医学部に進学できれば、自宅から通わせられるという大きな利点があります。実際、首都圏の医学部集中により「自宅通学できる医学部の選択肢」が豊富なことは、地方にはない恵まれた環境です。
一方で、地方出身の学生が首都圏の医学部に進学する場合、東京での生活費の高さは無視できません。一般に都市部の生活費(特に家賃)は地方より大幅に高く、6年間の学費以外に生活コストが嵩む点はデメリットです。例えば地方都市の家賃相場が月数万円のところ、東京23区では倍近い水準というケースもあります。また人の多い都会での一人暮らしは、生活環境の変化への適応など精神面の負担もあるでしょう。大学によっては学生寮を完備しているところもありますが、首都圏の私立医学部では必ずしも全員分の寮があるわけではなく、多くは民間のアパート暮らしになります。したがって、首都圏医学部への進学は生活費・住環境の面で地方進学よりハードルが高い可能性があります。この点、同じ私立でも地方の医学部であれば物価が安く奨学金や自治体の支援も受けやすい場合がありますので、経済面も踏まえ志望校を検討する必要があります。
学費
学費そのものに関しては、「首都圏だから高い/地方だから安い」という明確な差はありません。私立医学部の学費は大学ごとの方針によって決まっており、地域差で大きく変わるものではないからです。実際、首都圏の私立医学部でも慈恵会医大や順天堂大など比較的学費が抑えめ(6年間で約2000万円台)な大学もあれば、地方の私立医学部でも学費が3000万円を超える大学があります。したがって「○○地方の医学部は他より学費が安い」といった傾向は基本的にありません。むしろ各大学の設立母体や財務状況による違いが大きいので、志望校ごとの学費情報を個別に確認することが重要です。
受験機会・日程面
首都圏に私立医学部が固まっていることで、受験生にとって受験しやすい環境が生まれています。私立医学部の一般入試は1月下旬~2月に集中しますが、大学ごとに試験日がずれているため、首都圏在住者であれば短期間で複数大学を次々と受験することが可能です。地理的距離が近い分、移動の負担も少なく、「滑り止めから本命まで首都圏で何校も併願する」という戦略が取りやすいのです。例えば2月上旬に東京女子医大、翌日に慶應義塾大学、その翌日に日本医大…といった具合に、都内拠点から連日受験できます。地方の医学部では試験日程が被ったり移動が大変だったりしますが、首都圏集中のおかげで一度首都圏に滞在すれば複数校を受験できる利点があります。このため地方の受験生も首都圏私立を併願校に加えやすく、首都圏の大学には全国から受験生が集まりやすいと言えます。
競争倍率・難易度
私立医学部全般の近年の難化は顕著であり、首都圏の大学も例外ではありません。現在ではほとんどの私立医学部で倍率15倍超、大学によっては30倍近い競争率になることも珍しくなく、もはや「学費さえ払えば入れるような医学部は存在しない」と言われます。首都圏の人気私立大学は全国から志願者が集まる分、合格のハードルも非常に高いです。ただし前述のように地方医学部より偏差値水準が高い都市部医学部が多いため、「入りやすさ」で言えば地方の国公立医学部や一部の地方私立医学部のほうが低偏差値で狙えるケースもあります。受験生の中には、「どうしても東京で学びたいのであれば私立でも行く」「都市部志向がないなら地方国公立を目指す」といった選択をする人もいます。首都圏集中ゆえに生まれる受験難易度の差は確かに存在し、受験生は自分の学力・経済状況・将来計画に応じて戦略を立てる必要があります。
将来の勤務地やキャリア
首都圏の医学部に進学することは、将来首都圏で医師として働く上でも有利に働く場合があります。医局などの人事は出身大学ごとにまとまる傾向があり、東京の大学を出れば関東の病院に就職しやすいといったネットワークがあります。地元志向の強い方にとって、最初から首都圏の大学で学ぶことはそのまま首都圏でキャリアを積む近道となるでしょう。逆に地方医学部から都市部の病院に出る道も近年はマッチング制度で開かれていますが、それでも大学の地盤がある地域で就職しやすい傾向は残っています。したがって「将来は都会の大病院で専門医になりたい」「研究者として東京の大学でキャリアを積みたい」という展望がある場合、最初から首都圏の医学部に進むメリットは大きいでしょう。
以上のように、私立医学部の首都圏集中は受験生にとって通学の利便性という恩恵を与える一方、競争率の高さや生活費負担増という挑戦も伴います。どちらが良い悪いではなく、自身の状況に応じて首都圏の医学部と地方の医学部のメリット・デメリットを比較検討することが重要です。首都圏に集中する医学部群は、日本の医学教育を牽引してきた歴史と実績がありますが、その一方で地方との格差是正も社会的課題となっています。受験生としては、こうした背景も踏まえつつ、自分にとって最適な進路を選んでいただきたいと思います。
多角的視点で見た首都圏私立医学部集中の現状
以上、首都圏に私立医学部が集中している理由を歴史・政策・教育環境・人材・経営・受験生への影響といった様々な角度から解説しました。首都圏には全国最多の私立医学部が集まり、それは伝統や政策の積み重ねによる必然でもあり、都市部の持つ強みを求めた結果でもあります。優れた教育インフラと人材が集まる首都圏の医学部は、日本の医療水準を高めてきた原動力であり、多くの学生にとって憧れの場でもあります。
しかしその一方で、地方との医師偏在や受験環境の格差といった課題も浮き彫りになっています。国は地域枠の導入や定員増で是正に努めていますが、医学部の所在地による影響は依然大きいのが現状です。今後、地方への医学部新設や既存大学の地域貢献が進めば、状況はまた変わっていくかもしれません。ただ本質的には、医学教育には人材・設備・症例など多くの資源が必要であり、それらが豊富な都市部に医学部が集中するのは理に適っている面もあるのです。
医学部受験生や保護者の方々には、首都圏の医学部が抱える強みと特徴、そして進学した場合のメリット・デメリットを正しく理解していただきたいと思います。本記事では複数の視点から首都圏私立医学部集中の理由を説明してきましたが、最終的に進路を選ぶ際は、「大学ブランドや立地」にとらわれ過ぎず自分の目指す医師像やライフプランもぜひ大切にしてください。首都圏の医学部で得られるもの、地方の医学部だからこそ得られるもの、それぞれがあります。いずれの道を選ぶにせよ、本稿の内容がお役に立ち、皆さんの進路選択の助けとなることを望んでいいます。