目次
特定診療科専攻枠とは何か?制度の目的と概要
川崎医科大学医学部の総合型選抜「特定診療科専攻枠」は、特に「救急科」「総合診療科」「麻酔・集中治療科」のいずれかの医師を志す受験生を対象とした特別な入試枠です。この制度は同大学創立50周年を機に新設され、従来から掲げてきた「良医の育成」という教育目標をさらに推進する目的で導入されました。川崎医科大学は日本初の救急医学講座・総合臨床医学講座を開設するなど、救急医療やプライマリ・ケア(総合診療)の分野で先導的役割を果たしてきた歴史があります。こうした背景から、「臓器にとらわれず患者さんの全身を診ることができる医師」を育成する理念のもと、本入試枠が設置されました。
「特定診療科専攻枠」で指定されている3つの診療科(総合診療・救急・麻酔集中治療)は、いずれも患者の全身を診る総合的な診療能力が求められる分野です。例えば救急科であれば突然の重篤患者に全身対応する力、総合診療科であれば専門領域に偏らず幅広い健康問題に初期対応する力、麻酔・集中治療科であれば手術中の麻酔管理からICUでの全身管理まで、多岐にわたる専門性が必要です。川崎医科大学はこれらの分野で臨床だけでなく将来医学生や研修医の教育も担えるリーダー医師を育てることを目指しており、その志を持つ学生を全国から募るのが特定診療科専攻枠の制度趣旨です。
募集人員は約4名程度と少人数で、専願(この入試で合格したら必ず入学することを約束して受験)の形式になります。初年度である2023年度入試では志願者19名中4名が最終合格しており、倍率は約4.8倍でした。一般入試と比べると応募者数は限られていますが、その分強い意欲と適性を備えた人材が求められる狭き門と言えるでしょう。
出願資格と求められる条件
誰がこの特定診療科専攻枠に出願できるのか、その要件を確認しましょう。
学歴・年齢要件:高校卒業(見込み)または同等資格を有し、卒業後概ね4年以内(2024年4月1日時点で22歳以下)の受験生が対象です。現役生だけでなく既卒生(いわゆる浪人生)も4浪(高校卒業後4年)まで出願可能です。
学業成績要件:高校での評定平均値など学業成績の最低基準は設けられていません。調査書は提出しますが、特定の評定条件はないため、学力よりも適性や意欲が重視される選抜であることが分かります。
推薦者による推薦:出願には推薦書が必要で、川崎医科大学の建学の精神や附属病院の理念に賛同する医療関係者(※保護者は除く)の推薦を受けることが求められます。具体的には医師や医療従事者の先生などから、「この受験生は将来指定の診療科で社会に貢献する意思と資質がある」と推薦してもらう形です。身近に医療者がいない場合は、進路指導の先生経由で地域の医師に紹介してもらうケースもあるでしょう。
誓約書(確約書)の提出: 志望理由書に加えて「確約書」の提出も義務付けられています。確約書では、合格した場合に ①医学部卒業後、川崎医科大学附属病院または同大学指定の研修病院において初期臨床研修(医師免許取得後の2年間)を含む6年間の研修を行うこと、そして ②初期研修修了後は自ら選択した特定診療科(救急・総合診療・麻酔集中治療のいずれか)で後期研修を行い、将来その分野の医師として医療に貢献することを誓います。これらの約束について、本人だけでなく保護者および推薦者も同意した上で署名提出する形式です。言い換えれば、「川崎医科大に入学した暁には、卒業後少なくとも6年間は指定診療科の研修医として本学関連病院で経験を積み、その後もその専門医として社会に貢献する」強いコミットメントが求められるわけです。
地域要件: 地域枠選抜(中国・四国地域出身者枠等)と異なり、出身地域による制限はありません。全国どこの高校出身者でも志願可能です。たとえば首都圏出身者でも、この専門分野で貢献したい熱意があれば応募できます。
専願指定: 特定診療科専攻枠は専願です。他大学や他の選抜との併願自体は禁止されていませんが、万一この入試で合格した場合は必ず川崎医科大学に入学する義務があります(合格後の辞退や他校進学は基本的に認められません)。また川崎医科大内部でも、総合型選抜内の他枠(地域枠など)と重複出願はできずいずれか一つに絞る必要があります。このため出願時には「本当にこの道に進む覚悟があるか」を十分検討することが大切です。
以上のように、特定診療科専攻枠は学力より意欲・適性を重視しつつも、将来にわたる明確な約束を求める入試です。医師となった後の進路まで見据えて応募者を選抜する点が、一般入試や他の推薦入試との大きな違いと言えます。
選考の流れと試験内容
特定診療科専攻枠の選考プロセスは、大きく第一次試験(学科試験・小論文)と第二次試験(面接)の二段階に分かれています。2025年度入試(2026年入学者選抜)を例に取ると、出願期間は高校3年の秋(10月下旬)に設定され、第一次試験は11月上旬に川崎医科大学のキャンパスで実施されます。第一次試験の合格発表は数日後の11月中旬、引き続き第二次試験(面接)は11月中旬に行われ、11月下旬には最終合格者が決定するスケジュールです。一般入試(2月実施)よりもかなり早い日程となるため、高校生は夏休み前後から志望理由書の準備や勉強計画を進めておく必要があります。
第一次試験:総合適性試験+小論文
第一次試験では、学力試験にあたる「総合適性試験」と小論文が課されます。川崎医科大学の総合型選抜では一般的な筆記試験科目とは異なり、以下のような特徴的な出題がなされます。
総合適性試験: 教科横断的な総合問題で、具体的には「英語」「数学」「理科(二科目選択)」「国語・一般教養(時事問題を含む)」の分野から幅広く出題されます。理科については物理・化学・生物の3科目から任意の2科目を選択して解答する形式です。これは多くの私立医学部志望者が高校で履修している2科目に絞って受験できるよう配慮された形式と言えます。国語・一般教養では高校の現代文や地理歴史、公民分野の基礎知識、および最新の時事問題に関する読解・思考力が問われる内容です。
小論文: 800字以内で課題に沿った文章を書く試験です。総合型選抜ではこの小論文も第一次試験日に実施されますが、その場での得点は一次合否には直接反映されず、後述の二次試験評価時に考慮されます。小論文の出題形式は課題文読解型が想定されます。過去の一般入試では1000~2000字程度の文章を読んで自分の意見を述べる問題が出題されており、テーマは医療問題に限らず多岐にわたります。要求字数も多く難易度は高めですが、医療や社会の時事ネタに絡むことも多いため、日頃からニュースや社説に目を通し基礎的な医療用語や医療制度の現状を知っておくと対応しやすくなるでしょう。
試験時間割や配点は公表されていませんが、過去受験者の報告によれば各科目60分程度で実施されたとの情報があります。総合適性試験は非公開ゆえ詳細な対策が難しい試験ですが、その分日頃の総合的な学力が試されます。特に国語や一般教養を含むことで文系科目に強い受験生にもチャンスがありますが、最終的に合格するには英数理の基礎学力も不可欠です。なお、一次試験では総合適性試験の成績によって合否判定が行われ、おおよそ定員の3~4倍程度の志願者が一次合格者として選抜されます。
第二次試験:個人面接
一次試験合格者に対して行われる第二次試験は個人面接です。例年、受験生1人に対し面接官3人で行われ、所要時間は一人あたりおよそ10分程度とされています。面接では調査書や志望理由書、小論文内容を踏まえつつ、志願者の人柄・適性・動機の確かさを多面的に評価します。
川崎医科大学の面接で実際によく聞かれる質問としては、例えば以下のようなものがあります。
「本学を志望した理由は?」
→ 志望理由書に書いた内容と矛盾がないように説明することが大切です。当然ながら提出済みの志望理由書の内容は暗記し、自分の言葉で要点を話せるように準備しておきましょう。また、なぜ特定診療科で貢献したいのかという動機の核心も突っ込まれる可能性があります。自身の体験や将来像と絡め、具体的に語れるようにしておきましょう。
「小論文で書いたテーマについて」
→ 一次試験で自分が書いた小論文の内容や設問に対する自分の答えをきちんと覚えておきましょう。面接官は小論文に触れて、「なぜその意見を書いたのか」「この問題についてどう考えるか」と質問することがあります。志望動機とも関連付けながら、論理的に説明できるよう整理しておくことがポイントです。
「あなたが川崎医科大学に適していると思う点は?」
→ 川崎医科大学の建学の精神や教育理念、カリキュラムの特徴を事前に調べ、それらと自分の医師志望理由や将来像がどう合致するかを語れるようにしておきましょう。「臓器にとらわれず全身を診る」という校風に、自分も共感していることを具体例とともに伝えると説得力が増します。
「医師に向いていないと思う自分の短所は?」
→ 医学部面接でよく問われる自己分析の質問です。自分の弱みを正直に述べつつ、それを克服する努力や医師になってどう補っていくかまで言及できると好印象です。逆に長所や強みも聞かれる可能性がありますので、自己PRできるエピソードも準備しておきましょう。
以上のように、面接では志望動機の一貫性と本人の熱意・適性が重点的に見られます。特定診療科専攻枠の場合、「本当に将来その診療科の医師になりたいのか」という点を厳しく問われることが想定されますので、嘘偽りなく自分の言葉で熱意を伝えることが重要です。また、受け答えの内容だけでなく、医療者としての倫理観やコミュニケーション能力、人柄なども評価の対象になります。面接官に与える印象(礼儀正しさや話し方など)にも注意し、短時間で自分の思いをアピールできるよう何度も模擬面接で練習しておきましょう。
対象となる診療科(救急・総合診療・麻酔集中治療)の特徴
ここでは特定診療科専攻枠で指定されている3つの診療科について、それぞれどのような分野なのか、高校生や保護者向けにかみ砕いて説明します。何れも「臓器別」ではなく「総合的に全身を診る」診療科であり、現代医療において重要かつ医師不足が懸念される分野です。
総合診療科(General Practice / 総合診療医)
総合診療科は、特定の臓器や疾患に偏らず幅広い健康問題に一次対応する診療科です。いわば「何科に行けばいいか分からない症状」の患者さんを最初に診察し、必要に応じて専門科へつないだり、自ら治療・フォローアップを行ったりします。家庭医療(プライマリ・ケア)とも重なる概念で、地域のクリニックや病院の総合診療部門で活躍する医師です。高齢化や医療の細分化が進む中、総合診療医は患者さんの全身をトータルに診る「総合的な視点」を提供できる存在として期待されています。日本では2018年度から総合診療専門医制度が開始され、育成が推進されていますが、まだまだ人数が十分とは言えず、今後の地域医療になくてはならない役割です。
救急科(Emergency Medicine / 救急医)
救急科は、突然の怪我や病気など緊急性の高い患者に対して初期対応・治療を行う診療科です。救急車で運ばれてくる重症患者や、ER(救急外来)に来院する様々な疾患の患者に対応します。心肺停止の患者の救命処置から、事故の外傷処置、原因不明の急病人の診断まで、求められる知識・技術は幅広く高度です。「断らない医療」を掲げて24時間対応する救急科医は非常にハードですが、人命を救う最前線としてのやりがいがあります。日本では救急科専門医の数が限られ、特に地方では救急医不足が深刻なため、若い医師の参入が望まれています。
麻酔・集中治療科(Anesthesiology & Critical Care / 麻酔科・集中治療科)
一般に「麻酔科医」と言えば手術の際に麻酔を担当する医師を指しますが、本学の指定する麻酔・集中治療科は、周術期管理(手術前後を含む全身管理)や集中治療(ICUでの重症患者管理)まで含めた領域です。手術室で患者を麻酔で眠らせ安全に管理するだけでなく、ICU(集中治療室)で人工呼吸管理や臓器サポートを行い命をつなぐ役割も担います。高度医療が発達する現代では、重篤患者の全身状態をコントロールできる麻酔・集中治療の専門医が不可欠ですが、依然として人材不足が叫ばれています。特に地方病院では麻酔科医が不足して手術制限を余儀なくされるケースもあるため、この分野の医師を志す人材は貴重です。
以上の3分野はいずれも専門的かつハードな分野ですが、医療現場で縁の下の力持ちとして不可欠な存在です。川崎医科大学がこれらを特定診療科に指定した理由も、「患者さんの全身を診る」視点を持つ医師を育てたいという教育理念に合致するからでしょう。加えて、いずれも全国的に見ると専門医志望者が他科より相対的に少なめで、将来の医師偏在是正の観点からも育成強化が必要とされる領域です。
合格後の研修とキャリアパス
特定診療科専攻枠で入学した学生には、6年間の医学部課程を経た後、前述の誓約に沿ったキャリアパスが用意されています。具体的には、医学部卒業後は直ちに川崎医科大学附属病院(倉敷市)や同大学関連の総合医療センター等において、少なくとも6年間の臨床研修を行うことになります。
初期臨床研修(卒後1~2年目): 医師国家試験合格後、まずは2年間の初期研修医として、内科・外科をはじめ様々な科をローテーションしながら臨床の基礎を学びます。特定診療科専攻枠の学生も、他の同期と同様にこの必修研修カリキュラムを全うする義務があります(在学中に特別扱いで一部科目が免除されるようなことはありません)。ただし、川崎医科大学では在学中から希望する特定診療科の専門医と触れ合う機会が提供されており、例えば課外活動や病院実習で救急・総合診療・麻酔科の現場を経験したり、指導医のメンターが付くなどのサポートが受けられます。これにより入学当初から目的意識を持って学び、6年間を有意義に過ごせるよう工夫されています。
後期臨床研修(卒後3~6年目): 初期研修終了後、自らの希望する特定診療科(救急・総合診療・麻酔集中治療のいずれか)を選択して専門研修(専攻医としての研修)に進みます。例えば救急科を選べば救急科専門医プログラムに沿って救命救急センター等で研修し、麻酔科を選べば手術麻酔や集中治療の専門研修に入ります。研修先は原則として川崎医科大の附属病院または同大学指定の関連病院となり、計6年間(初期2年+後期4年)一貫して川崎医科大のネットワーク内で経験を積むことになります。
専門医取得とその後: 後期研修を終える頃には、それぞれ救急科専門医や総合診療専門医、麻酔科専門医(および集中治療専門医)などの資格取得要件を満たすことになります。大学側も入学から卒業、そして専門医取得まで一貫してサポートすると公言しており、専門医取得後は同大学の関連施設で指導的な立場で働いたり、あるいは出身地域に戻って地域医療に貢献する道も開けるでしょう。特定診療科専攻枠の学生は、卒業時には一般の同級生よりも救急医療・プライマリケア・集中治療などに関する知識が豊富になっていることが期待されます。その強みを活かし、将来的には各分野で医療の中心を担うリーダー医師として活躍することが大いに期待されています。
注意点: もし入学後に志望分野が変わったらどうなるのか—これは多くの受験生・保護者が気にする点ですが、基本的に特定診療科専攻枠で入学した以上、上記3科の中から専門を選ぶことが前提となります。初期研修の段階で改めて3科の中から自分に最適な道を選ぶことは許容されていますが、全く異なる診療科(例:皮膚科や眼科など)に進むことは当初の誓約に反する行為です。やむを得ない事情や強い希望変更が生じた場合、大学と十分に相談する必要がありますが、基本的には入学前の覚悟通りの進路を貫くことが求められると考えてください。このため、「まだ将来の専門を決めきれない」という場合は無理に本枠に応募せず、一般入試等で入学してから進路を模索する方が良い場合もあります。特定診療科専攻枠は最初からこの3領域で医師としてやっていく強い決意を持つ人のための道であることを再認識しておきましょう。
地域医療・医師不足への貢献と制度の背景
近年、日本の医療界では医師の地域偏在・診療科偏在が大きな課題となっています。都市部に医師が集中し過疎地域で不足する問題や、人気のある診療科(例:皮膚科・放射線科など)に志望者が偏り、救急や産科、小児科など負担の大きい分野で医師不足が深刻化する問題です。川崎医科大学の特定診療科専攻枠はまさに後者、特定分野の医師不足に対応する試みと言えます。救急・総合診療・麻酔集中治療といった領域はいずれも社会的ニーズが高いにもかかわらず、従来は医学生から敬遠されがちな側面がありました(夜間勤務や緊急対応が多く、激務になりやすいためです)。本制度は、そうした分野に志を持つ学生を早い段階から確保し、専門的に育成することで、将来的な医師数の底上げを図る目的があります。
国も近年、地域枠・診療科特別枠といった医学部定員の特別枠設定を推進しています。川崎医科大学では特定診療科枠の他に、中国・四国地域出身者枠や特定地域(霧島市)枠など複数の地域医療志向の総合型選抜枠を設けています。これらはいずれも「地域医療に貢献したい人材」を選抜するもので、地域枠は地理的な医師偏在対策、診療科枠は分野的な医師偏在対策として位置付けられます。実際、他大学でも近年は同様の試みが増えており、このように、医療ニーズの高い領域に人材を誘導する動きは今後も拡大するでしょう。
特定診療科専攻枠の学生が卒業後に地元地域へ戻って勤務することも十分考えられます。たとえば出身県の救急医療センターで働いたり、へき地の診療所で総合診療医として地域医療を支えるケースです。その意味で、本制度は間接的に地域医療の充実にも寄与します。もちろん、研修先は基本的に岡山県内(倉敷市)の関連病院となるため、少なくとも卒後6年間は岡山県を中心とした地域医療に従事することにもなります。中国・四国地方の医療に貢献したいという志を持つ学生にとっても、特定診療科枠は有意義な選択肢と言えるでしょう。川崎医科大学自体、岡山県のみならず周辺地域の救急医療・総合医療を長年支えてきた私立医大であり、地域との結びつきも強い大学です。そのネットワークの中で専門医を目指すことは、結果的に地域医療の最前線で活躍するキャリアにも直結しています。
要約すると、本枠は「志ある学生を早期に囲い込み、必要とされる医師を社会に送り出す」制度です。大学にとっては自校の理念に共感し将来有望な人材を確保でき、学生にとっては専門医取得まで一貫した支援と研修環境が約束されます。そして社会にとっては不足分野の医師が増えるというメリットがあります。受験生の皆さんには、ぜひこの大きなビジョンを踏まえて本制度を捉えていただきたいと思います。
受験対策とアドバイス
特定診療科専攻枠の合格を勝ち取るには、一般入試とはまた異なる入念な準備と戦略が必要です。ここでは受験生目線での対策ポイントをまとめ、アドバイスも交えて紹介します。
志望理由書・面談対策:熱意と一貫性を示す
志望理由書(出願書類)では、「なぜ自分は特定診療科(救急・総合診療・麻酔集中治療)の医師として社会に貢献したいのか」を800字以内で問われます。これは単なる「医師志望動機」ではなく、踏み込んで専門分野の志望理由を書く必要があります。説得力を持たせるために、以下の点を意識しましょう。
具体的なきっかけを書く: 漠然と「人の命を救いたいから救急医になりたい」では弱いです。できれば自身や家族のエピソード、ニュースで見た出来事、学校での学びなど、その診療科を志すに至った具体的エピソードを織り交ぜてください。「高校の応急手当講習で救急医療の大切さを知った」「祖父の急病時に救命救急の先生に助けられ憧れた」等、あなたにしか書けない体験談があると光ります。
将来のビジョンを描く: その診療科の医師として将来何を実現したいかも述べましょう。ただ医者になりたいではなく、「地域の救急医療体制を充実させたい」「離島医療で総合診療医として活躍したい」「麻酔科医として安全な手術を裏から支えたい」など、具体的な貢献目標が示せると熱意が伝わります。
大学の理念との合致: 川崎医科大学の教育理念(良医の育成や全身を診る医師の育成)や附属病院の使命を調べ、自分の志と重ねて言及すると好印象です。「川崎医科大学が培ってきた救急医療の伝統の下で学びたい」など、大学で学ぶ必然性もアピールできるとなお良いでしょう。
保護者・推薦者の同意: 誓約書には保護者・推薦者の署名も必要です。従って家族ともこの進路について十分話し合い、理解を得ておくことが大事です。面接でも「ご両親はこの進路をどう言っていますか?」と聞かれることがあります。その際に「応援してくれている」と胸を張って答えられるよう、事前に相談しておきましょう。
面接対策としては、「書類内容と発言の一貫性」が極めて重要です。自分の書いた志望理由書はすみずみまで暗記し、深堀り質問にも答えられるようQ\&Aを用意して練習します。「なぜ救急科でなければならないのか?他の科ではダメか?」といった突っ込みにも、論理的かつ情熱的に答えられるようシミュレーションしておきましょう。
またメンタルトレーニングも有効です。特定診療科枠を受ける学生は周囲に少ないため不安も大きいでしょうが、受験生一人で悩まず、信頼できる先生や予備校の力も借りながら、効率よく準備を進めましょう。
学科試験対策:広い教養と基礎学力をバランス良く
学科の総合適性試験は非公表の問題形式で、過去問が手に入らないため対策が立てにくいものです。しかし出題分野自体は英語・数学・理科・国語(現代文)・時事教養と、いわば大学入学共通テスト+αのような総合力を見る内容です。したがって基本は高校範囲の学習内容を幅広く固めることが肝心になります。
英語: 医学部入試レベルの長文読解や文法問題に対応できる読解力・語彙力を養います。加えて時事的なテーマが英文に出る可能性もあるため、医療・科学に関する英文記事やニュースにも触れておくと良いでしょう。
数学: 数IIIまで含めた基礎~標準問題をしっかり解けるようにします。論理力を見るとされるので、証明問題や文章題も練習しておきます。計算ミス防止のため日頃から丁寧に解答を書く習慣を。
理科(物理・化学・生物): 自分の選択2科目については医学部一般入試と同等レベルの問題にも対応できるようにしておきます。出題形式は不明ですが、複数科目混合の総合問題の可能性もあるため、例えば生物選択者も物理の基礎知識に目を通すなど横断的な理解を広げておくと安心です。
国語(現代文)・一般教養: 現代文は評論文などから読み取る力が問われます。医療や科学技術に関連した文章が出ることも想定して、日頃から新聞の科学面記事や新書などで読解練習すると良いでしょう。一般教養・時事は直近1~2年のニュースで話題になった医療・社会問題を中心に整理しておきます(例:感染症対策、地域医療の課題、医療AIの発展など)。暗記というより「自分の意見を持てる」程度に理解しておくことが大切です。
最後に:覚悟を持った挑戦を
特定診療科専攻枠は、単に医学部に合格するための手段ではなく、将来のキャリアプランまで見据えた挑戦です。ゆえに受験勉強と同じくらい、「本当に自分は救急医(または総合診療医、麻酔科医)になりたいのか」を自問自答し、その覚悟を固めるプロセスが重要になります。面接官もそこを見ていますし、入学後の6年間・卒後の研修と長い道のりを歩むためには強い意志が不可欠です。
もちろん高校生の時点で将来を完全に決めるのは容易ではありません。しかし逆に言えば、明確な志を持って入学した学生は在学中もブレずに努力を続けられるメリットがあります。川崎医科大学も「入学から卒業、専門医取得まで一貫サポート」を掲げているように、あなたの夢の実現を全力で後押ししてくれるでしょう。川崎医科大の総合型選抜は高校評定も不要で再受験生にも門戸が開かれているため、多様な背景の受験生にチャンスがあります。年齢や経歴にとらわれず、自分の志を信じてぜひ挑戦してみてください。
まとめ: 川崎医科大学の特定診療科専攻枠は、「全人的な医療」に情熱を持つ皆さんにとって魅力的な道です。制度の目的・概要、出願要件、選考方法から卒業後のキャリアまで解説してきましたが、最後にもう一度強調したいのは「熱意と誠意は必ず評価される」ということです。試験対策を万全にするとともに、自分の思いをまっすぐ伝えられるよう準備して、本番に臨んでください。
よくある質問(FAQ)
Q: 特定診療科専攻枠と一般入試・地域枠入試の違いは何ですか?
A: 最大の違いは、将来の進路に関するコミットメントを要する点です。特定診療科枠は入学前に将来の専門志望を表明し、卒業後も一定期間その分野の研修を行うことを誓約します。一方、一般入試や通常の地域枠入試では卒後の進路の拘束はありません。また選考方法も異なり、特定診療科枠はAO入試形式で学科試験だけでなく志望理由書や面接による総合評価が行われます。定員も特定診療科枠は約4名とごく少数ですが、一般入試は約45名が募集されています。
Q: 地方出身でなくても受験できますか?
A: できます。特定診療科専攻枠には出身地域の制限がありません。首都圏や海外の学校出身者でも応募可能です。実際、出願資格に「出身県等は問わない」と明記されています。中国・四国地域出身者枠など他の地域枠とは異なり、全国の志願者に門戸が開かれています。
Q: 他の入試方式との併願は可能ですか?
A: 出願自体は可能ですが、合格した場合は併願先を放棄する必要があります。特定診療科枠は専願扱いのため、もしこの入試で合格すると一般入試や他大学には進めません。出願段階では他大学との併願は制度上禁止されていませんが、11月中旬に合格発表が出た時点で進路を一本化することになります。特定診療科枠に合格した後に辞退することは原則想定されておらず、誓約に反する行為となりますので注意してください。
Q: 落ちた場合、一般入試で再チャレンジできますか?
A: できます。特定診療科枠で不合格だった場合、その後の一般入試や他大学受験には何の支障もありません(専願は「合格したら入学」の約束なので、不合格であれば拘束力はありません)。むしろ11月のAO入試に挑戦した経験は大いに糧になるでしょう。一次試験で課された小論文は一般入試でも類似の形式が出題されますし、面接練習も積めたはずです。それらを活かして2〜3ヶ月後の一般入試に臨めます。また川崎医科大の場合、総合型選抜と一般入試を同時出願することも可能です。総合型選抜でも一般の筆記試験に挑めるよう、出願戦略を立てることも検討してください。
Q: 奨学金や学費の免除など特典はありますか?
A: 入試時点で特定診療科枠専用の奨学金制度はありません。合格者は通常の私立医学部生として所定の学費を納める必要があります。ただし他の地域枠とは異なり、自治体からの修学資金貸与などは条件付けられていません(例えば川崎医科大の静岡県地域枠なら「静岡県医学修学資金」の貸与が出願条件になっていますが、特定診療科枠にはそういった指定はありません)。在学中は日本学生支援機構の奨学金や大学独自の奨学金に応募することは通常通り可能です。経済的支援については一般の医学部生と同様と考えてください。
Q: 面接ではどんなことを聞かれますか?
A: 志望理由と適性について多角的に質問されます。具体的には「本学志望の理由」「この診療科を選んだ理由」「将来の医師像」「高校生活で力を入れたこと」「自己PRや長所短所」などが想定されます。加えて一次試験で書いた小論文の内容に関する質問も高い確率であります。例えば小論文で書いた自分の意見について深掘りされたり、関連する社会問題について意見を問われたりします。面接官3名による個人面接で、雰囲気は穏やかですが回答内容の整合性や熱意がシビアに見られます。想定問答集を作り、何度も練習して本番に備えましょう。
Q: 入学後に他の診療科に興味が移ったらどうなりますか?
A: 基本的には特定診療科のいずれかを選ぶことが前提です。在学中に様々な科の勉強をする中で心変わりする可能性はゼロではありません。しかし特定診療科枠は「将来は指定3科の医師になる」ことを条件に選抜された経緯があり、その約束は極力守るべきです。大学もあなたをそのつもりでサポートします。どうしても他科志望に転じる場合は、誓約違反となるため大学側と十分に協議する必要があります。最悪の場合、関連する奨学金等を受けていた場合は返還義務が生じるケースも他大学では見られます。そうならないよう、受験前によく考えて決断することが大切です。ただし、特定診療科の3つの中でどれを選ぶかは入学後に決められます。最初から1つに絞り切れなくても、この3領域に貢献したい気持ちが確かならば出願して構いません。在学中の経験を踏まえて、自分に最も合う専門を選択してください。
Q: 将来は地元に戻って勤務することもできますか?
A: 可能です。卒後の初期・後期研修6年間は川崎医科大学附属病院(岡山県)や指定病院で行う必要がありますが、その後について勤務地の縛りはありません。地元自治体の地域医療に従事するも良し、引き続き川崎医科大学関連の病院で経験を積むも良しです。むしろ特定診療科枠で得た専門性を持って地元に戻れば、地元の医療に大いに貢献できるでしょう。例えば救急医として地元の救命センターを支えたり、総合診療医として地域住民のかかりつけ医になることも考えられます。川崎医科大学で培ったネットワークは全国に広がっていますので、卒後もOB・OG同士の連携を活かしながらキャリアを築いていけます。地元に戻る場合、自治体の医師確保策(奨学金返還免除など)が受けられることもありますので、卒業時に情報収集すると良いでしょう。
以上が川崎医科大学・特定診療科専攻枠に関する主な質問と回答です。受験を検討する上での参考になれば幸いです。疑問や不安がある場合は、遠慮なく川崎医科大学の入試担当に問い合わせたり、オープンキャンパス等で直接質問してみてください。
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