共通テスト英語リスニングで高得点を狙う受験生の多くは、「問題の先読み」という高度な戦略を駆使しています。リスニング音声を待っている間や音声が流れている最中に、次の設問文や選択肢に目を通しておくことで、何に注意して聞けば良いかを事前に頭に入れておく方法です。ここでは、特に前半の設問を解答中に後半の設問文を先読みして正答率を高めるテクニックに焦点を当て、主に上位層(偏差値60以上)の受験生が実践する戦略を詳しく解説します。集中力や情報処理速度に応じた実践的なアドバイスに加え、効果的なメモの取り方についても掘り下げます。リスニングを「聞き取りテスト」ではなく「戦略的ゲーム」へと変えるヒントをつかみ、2026年度共通テストで英語リスニングの得点力を向上させてください。
目次
先読み戦略とは何か?その効果とメリット
リスニングにおける「先読み」とは、音声が流れる前に設問文や選択肢にざっと目を通し、どの部分に注目して聞けばよいかの指針を得ておく作業を指します。事前に問題の要点を把握しておくことで、音声中に「今どの場面を聞かされているのか」「何を探せばいいのか」が明確になり、焦らず正確に内容を聞き取れるようになります。
先読みの主なメリットは以下の通りです。
- 必要な情報を明確化できる:質問で問われているポイントがわかるため、集中すべき単語やフレーズを瞬時に拾いやすくなります。例えば「理由を問う問題」なら because や so といった語に注意を払う、といった具合に脳内にアンテナを立てることができます。
- 聞き逃しを防ぎ自信に繋がる:漫然と音声を聞くのではなく、「答えの根拠を探す」という明確な目的を持って臨めるため、重要なキーワードを効率よくキャッチできます。結果としてリスニングへの不安感が減り、自信を持って問題に挑めるようになります。
- 限られた時間を有効活用できる:設問を先読みしておけば、音声が流れている最中でも頭の中で情報を整理しやすく、リアルタイムで不正解の選択肢を消去する余裕も生まれます。この「リアルタイム消去法」により、音声が終わった瞬間には答えがほぼ絞り込めている理想的な状態を作り出せます。
こうした先読みの重要性は、多くの英語試験対策本や指導者も指摘しています。実際、共通テスト英語リスニングで安定して高得点を叩き出す受験生の多くは、むやみにメモを取らず、先読みを軸とした合理的な解答プロセスを実践しています。彼らはリスニング中に脳のリソースを「聞く・解く」ことだけに集中させ、問題文の内容把握と音声理解を同時並行で行っています。
上位層が実践する先読みテクニック:前半で後半を攻略
それでは、上位層が行っている具体的な先読みテクニックについて見ていきましょう。ポイントは、リスニング前半の問題を解答しながら後半の問題文を先読みしてしまうという戦略です。共通テスト英語リスニングでは第1問・第2問の音声が各2回流れますが、1回目で正解を導けた場合は2回目の音声を待たずに次の設問文や選択肢の先読みを始めます。例えば第1問A・Bでは、1回目で答えがわかったら2回目は確認程度に聞き流しつつ次の問題(あるいは後半の第3問)の文を読むようにします。同様に第2問でも初回で手応えを掴んだら、すぐに次の大問の設問チェックに移るのです。
この戦略により、本来ぼんやり音声を聴くだけになりがちな2回目のリスニング時間を有効活用し、後半の難問に備えることができます。特に共通テスト後半の第3問以降は音声が1度しか流れず、内容も複雑になります。先読みの有無で正答率に大きな差が出るため、前半の「余裕時間」はすべて後半攻略の準備に充てる意識を持ちましょう。
具体的なテクニックは以下の通りです。
- 試験開始直後に第3問に目を通す:「試験開始後はまず第3問を見る。第3問と第5問以外は直前の無音時間で設問を読んでもなんとかなるので、暇なときは第3問と第5問の先読みをしておく」。つまり、大問1・2の合間や音声待ちのわずかな時間に、あらかじめ難度の高い第3問や第5問の設問に目を通しておくのです。これにより、いざその問題に突入した時に焦らずに済み、選択肢の内容も頭に入っている分だけリードできます。
- 後半の長文問題は音声前の先読み時間を死守:共通テストでは第5問で長めの文章を聞き、複数の問いに答える形式が登場します。このパートでは音声が流れる前に約15秒程度の問題文閲読時間が設けられていますが、ここをフルに活用することが鉄則です。上位層は「先読み15秒を死守する」という原則にしたがって、全力で問題文と選択肢を読み込み、内容の見通しを立ててから音声に臨んでいます。
さらに、音声を途中で見切って先読みに移る大胆な戦略もあります。例えば大問4B(条件に合う選択肢を選ぶ問題など)では、「休憩地帯」と割り切り、条件に合わない選択肢が一つでも判明したら残りの音声を深追いせずに早々に次の第5問の先読みを始めるという方法です。また、全ての条件に合致する答えが明らかになった場合も、残りの選択肢を聞き終える前に確信を持って次に進むことで時間を稼ぎます。ただしこのような方法は、聞き逃しや勘違いのリスクも伴うため、自身のリスニングの実力と相談して慎重に実践してください。
集中力・処理速度に応じた先読み活用法
先読みの効果を最大化するには、受験生自身の集中力や情報処理速度に合わせた戦略調整が重要です。処理速度が高く、一度に多くの情報を並行処理できるタイプの上位層であれば、上記のような積極的な先読みをどんどん活用すべきでしょう。しかし、もし先読みになれていない状態で本番にぶっつけ本番で試すと、うまくいかない可能性もあります。特に「次の問題を読もうとして今の問題の音声を聞き逃してしまった」という事態は避けねばなりません。そこで以下のポイントを念頭に置き、自分に無理のない形で先読みを取り入れてください。
- 模試で先読みの練習を積む: 先読みのタイミングやペース配分は、過去問演習や模擬試験で繰り返し練習して体に染み込ませておきましょう。限られた時間内でどの程度素早く問題文を把握できるか、自分の処理速度を事前に確認しておくことが大切です。練習の中で「第1問ではここまで読めた」「第2問終了時には第3問の選択肢まで目を通せた」等、自分なりのルールを作って慣れておくと本番でも落ち着いて対処できます。
- マルチタスクの範囲を見極める: 音声を聞きながら先読みする際は、自分の集中力が維持できる範囲で行うことが大前提です。例えば、第1問の1回目音声で答えが確定した場合のみ先読みする、難しい場面では無理に読まず音声に全集中する、といったメリハリをつけましょう。処理速度に自信がないうちは、音声が流れていない無音の時間や2回目音声の時間帯に限定して先読みを行う方が安全です。
- 集中力の維持に努める: リスニング60分間を通して高い集中力を保つこと自体が一つの戦略です。「集中が切れたら終わり」という言葉通り 、一度気を抜くとその後の音声についていけなくなります。前日はしっかり睡眠を取り、本番では適度に緊張感を持って音声開始から終了まで走り抜けましょう。先読みをしている最中も、意識の半分は常に今流れている音声に向け、「ながら聞き」になりすぎないよう注意します。
- わからない問題は引きずらない: 万一、聞き逃しなどで手ごたえのない問題があっても深追いしないことも集中力維持の秘訣です。とりあえず現時点で最も可能性が高い選択肢にマークして気持ちを切り替え、次の問題に集中しましょう。一題に固執してパニックになるより、切り替えて次で取り返すほうがトータルの得点をのばすことができます。
自分の集中力・処理能力を考慮しながら先読み戦略を取捨選択することが重要です。先読みは強力な武器ですが、あくまでリスニング力という土台があって初めて活きるものでもあります。平素から音声そのものの聞き取り練習や速読力アップも並行し、総合力で本番に臨みましょう。
効果的なメモの取り方:必要最小限で最大の効果を
先読み戦略と並んで重要なのはリスニング中のメモ取りです。結論から言えば、メモは「諸刃の剣」であり、基本は必要最小限に留めるべきです。闇雲にペンを走らせることは、音声を聞き取る集中力を削ぎ、肝心な情報を聞き逃す原因になりかねません。実際、「音声を書き留めようとした一瞬に決定的な一言を聞き逃す」というのは真面目な受験生ほど陥りやすい悲劇です。高得点常連者の多くが「メモを取るくらいなら頭で理解する」ことを選ぶのは、メモによる聞き逃しスパイラルを嫌うからに他なりません。
一方で、適切なメモはリスニングを補助する心強いツールともなり得ます。ポイントは「書くべき内容を厳選し、素早く簡潔に記す」ことです。すべての音声を書き留める時間は当然ありませんから、事前に先読みした問題を解く上で必要だと思われる部分だけをピックアップして書き留めます。例えば数字や固有名詞など、聞き逃すと致命的なデータはメモしておくと安心です。逆に先読みが十分できず問題の要点を把握できていない場合は、手がかりになりそうな数字・日時・人名だけでもメモしておく、といった割り切りも有効でしょう。
効果的なメモ術のコツをいくつか挙げます。
- 言語は英語で、略記号を駆使: メモを書く言語は日本語でも英語でも構いませんが、英語のまま簡略に書く方がオススメです。長々とした日本語に訳している暇はないため、聞こえたキーワードを自分だけがわかる略語や記号で即座に記します。完全なスペルを書く必要はなく、単語の最初の数文字だけを書いて後で思い出せれば十分です。
- 符号や記号で素早く記録: 「以上・以下」「○・×」など、使える記号は積極的に使いましょう。例えば「~以上/以下」は不等号(≥/≤)で表現し、書く手間を省きます。複数人の会話では、各人の賛否を○×でメモするとひと目で立場整理ができます。実際、第6問のような複数人討論では各登場人物が賛成か反対かを○×で控えておくだけで、質問への答えを迷わず選べるケースが多々あります。
- 数字はできるだけ簡潔に: 数字データは聞き取った瞬間に頭の中で変換し、極限まで短くメモします。例えば「5000」は末尾の0を省略して「5」と書く、「2500」は「25」と書くなど、自分にだけ通じる短縮形で構いません。後で見返したとき一瞬で元の数字を思い出せればOKです。
- メモは最小限、聞き逃しに注意: メモはあくまで補助であり、書くことに気を取られて音声という本体を疎かにしてはいけません。メモを取る際は文字通り“一筆書き”で素早く済ませ、すぐ耳と目線を音声に戻しましょう。もしメモを取っている間に次の内容を聞き逃したら本末転倒です。メモを取るべきか迷う場面では「書くより聞く」を優先し、どうしても不安な点だけを書き留めるように意識してください。
なお、共通テスト本番では問題冊子の余白にメモを書いても構いませんので(リスニング試験中に配布された問題冊子への書き込みは許可されています)、上記のようなメモ術を駆使することができます。ただしメモに気を取られすぎず、「聞く」と「解答を選ぶ」ことに脳のリソースを最大限振り向けるという本来の目的を忘れないようにしましょう。
おわりに:先読み+メモ術でリスニングを制する
共通テスト英語リスニングは、単なる英語の聞き取り能力を試す試験ではなく、限られた時間内でいかに効率良く情報を処理し正解を導くかという「情報処理能力テスト」の側面が非常に強いと言えます。その戦いにおいて、ここで紹介した先読み戦略は、上位層の受験生たちが正答率を高めるための強力な武器です。音声の合間や余裕のあるタイミングで次の問題文に目を通し、聞くべきポイントに意識のアンテナを張って臨むことで、リスニングは「聞こえてくる音を受け身で処理するテスト」から「自ら答えを探しに行く能動的なゲーム」へと変わります。
また、メモの取り方ひとつをとっても結果は大きく変わります。不要なメモを排し、必要な情報だけを素早く書き留める技術を身につければ、メモはあなたのリスニングを助けこそすれ邪魔にはならないでしょう。実力者たちは「ペンを置く勇気」 と「最小限のメモ術」のバランスを磨き上げ、本番で最大のパフォーマンスを発揮しています。
最後に、こうしたテクニックは日々の練習によってこそ身につくものです。先読みもメモ術も、一朝一夕に習得できる魔法ではありません。過去問演習の中で試行錯誤し、自分に合った方法を洗練させてください。ここで紹介した内容はあくまで参考です。最終的には「自分が最も解きやすい方法」を見つけ出すことが何より大切です。十分な準備と適切な戦略で、2026年度共通テスト英語リスニング本番では是非とも自信を持って音声に向き合い、高得点を勝ち取ってください。
