医学部専門個別予備校

医学部受験生が知っておくべき「地域医療」の論点

医学部合格を目指す皆さんにとって、「地域医療」は小論文や面接で必ずと言っていいほど頻出するテーマです。しかし、単に「田舎で働くこと」と理解しているだけでは、近年の複雑な入試問題や面接官の鋭い質問には太刀打ちできません。

現代の日本において、地域医療は「日本の医療制度そのものを維持するための生命線」となっています。この記事では、受験生が押さえておくべき地域医療の意義と、各機関の責任、そして現在進行形の課題と解決策を整理して解説します。

地域医療の本質的な意義

地域医療とは、単に地方で診療を行うことではありません。

「その地域に住む人々が、生まれた場所で健やかに暮らし、自分らしく人生を終えられるよう、医療・介護・福祉を包括的に提供するシステム」を指します。

現在の日本は、世界でも類を見ないスピードで少子高齢化が進んでいます。大病院に患者が集中する「病院完結型」から、地域全体で患者を支える「地域完結型(地域包括ケアシステム)」への転換が急務となっているのです。

各ステークホルダーの責任と役割

地域医療を支えるために、国や大学はそれぞれ異なる役割を担っています。

区分主な責任と役割
国(厚生労働省)医療法などの法整備、医師養成数の決定、医療費(診療報酬)のコントロール、全国的な医師偏在解消のグランドデザイン策定。
都道府県「地域医療計画」の策定。二次医療圏(入院医療を完結させる単位)ごとの病床数管理や、医師確保計画の実行。
国公立大学医学部その地域の医療の核としての機能。高度医療の提供だけでなく、地域枠の設置や関連病院への医師派遣を通じた地域医療の安定化。
私立大学医学部独自の建学の精神に基づいた人材育成。近年は国からの補助金要件もあり、地域枠の設置や特定地域への医師派遣を強化。

現代日本が直面している「地域医療の3大問題」

受験生として特に意識すべきなのは、以下の3点です。

① 医師の偏在(数ではなく分布の問題)

日本全体の医師数は過去最多を更新し続けていますが、「地域偏在」(都市部に集中し地方に不足)と「診療科偏在」(内科・外科の不足、眼科・皮膚科への集中など)が深刻です。

② 2024年問題(医師の働き方改革)

2024年4月から医師に残業時間の上限規制が適用されました。これにより、これまで「若手の長時間労働」で成り立っていた地方病院の救急体制や夜間当直の維持が困難になる可能性が指摘されています。

③ 医療資源のミスマッチ

人口減少が進む地域では、過剰な病床数が経営を圧迫する一方、在宅医療や訪問看護のマンパワーが圧倒的に足りないという逆転現象が起きています。

考えられうる対策と現在進行中の解決策

これらの難問に対し、現在以下のような取り組みが進んでいます。

  • 地域枠入試の拡充: 卒業後、特定の地域で一定期間勤務することを条件とした入試枠です。現在、医学部定員の約2割がこの枠で占められています。
  • タスク・シフティング: 医師の業務の一部(点滴や説明補助など)を看護師や事務作業補助者に移管し、医師が「医師にしかできない仕事」に集中できる環境を作ります。
  • オンライン診療・遠隔診断: DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、専門医のいない離島や山間部を都市部の専門医がサポートする仕組みです。
  • 総合診療医の育成: 臓器別ではなく「人」を丸ごと診る総合診療医(ジェネラリスト)を増やすことで、地域医療の窓口を広げる取り組みです。

受験生へのアドバイス:自分の言葉で語るために

面接で「地域医療についてどう思いますか?」と問われた際、教科書通りの回答では印象に残りません。

「私は、最新の専門技術を磨くことと、地域の患者さんの生活に寄り添うことは対立するものではないと考えています。地域医療の現場でこそ、多職種連携をリードし、ICTを活用して効率的かつ温かい医療を実践できる医師になりたいです。」

このように、「課題(偏在や過重労働)」+「解決への姿勢(DXや総合診療)」+「自分の将来像」をセットで語れるよう準備しておきましょう。

地域医療を学ぶことは、日本の未来の形を考えることと同義です。高い志を持って、学習に励んでください。

関連記事

TOP