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九州大学医学部医学科が長年二次試験に面接を行わなかったのはなぜか

九州大学医学部医学科。旧帝国大学の一角として、また九州の最高学府として君臨するこの名門が、長らく「二次試験に面接を課さない」という異色の方針を貫いていたことは、医学部受験界では有名なことです。

2020年度入試からついに面接が導入されましたが、それまで頑なに「筆記試験一本勝負」を続けていた背景には、九大ならではの「硬派な哲学」がありました。

ここでは、その理由について掘り下げてみます。

「学力こそが最も公平な基準」という信念

九大が面接を課さなかった最大の理由は、客観性と公平性の徹底的な追求にあります。

  • 採点者の主観を排除: 面接は、どうしても面接官の主観が入ります。「なんとなく感じが良い」「受け答えがハキハキしている」といった要素で、一生を左右する合否が決まることへの強い抵抗感が大学側にはありました。
  • 「筆記で点数を取れる=努力の証明」: 難解な入試問題を解く能力は、長期にわたる自己研鑽の賜物です。その「努力できる才能」こそが、医学を志す者にとって最も信頼できる指標であるという考え方です。

短時間の面接による「人物評価」への懐疑

多くの大学が10〜15分程度の面接を行いますが、九州大学医学部は「そんな短時間で人の本質が見抜けるのか?」という極めて合理的な疑問を抱いていました。

「付け焼き刃の対策で取り繕った態度は見抜けないし、それで合否を決めるのは医学教育のプロとして不誠実である」

このような、ある種の「職人気質」とも言える誠実さが、面接導入を遅らせた一因だと言われています。

「研究者」としての素養を重視

九州大学は、臨床医(目の前の患者を治す医師)だけでなく、「医学研究者(Physician Scientist)」の育成を重んじる伝統があります。

研究の世界では、何よりも論理的思考力と、真理を追究する執念が求められます。それらを測るには、口先でのコミュニケーション能力よりも、難問に立ち向かう「数学」や「物理・化学」の力、そして深く読み解く「英語」の力こそが適していると判断されていたのです。

なぜ2020年に面接を導入したのか?

そんな九州大学医学部も、ついに2020年度入試から面接を導入しました。これには以下の背景があります。

  • 文科省からの要請: 全国的に「多面的・総合的評価」を求める圧力が強まったこと。
  • 最低限のスクリーニング: 医師としての適性(倫理観やコミュニケーション能力)に著しく欠ける受験生を、事前にはじく必要性が議論されるようになったこと。

ただし、導入された今でも九州大学医学部の面接は「段階評価」であり、「学力重視」のスタンスは他大学に比べても依然として強いのが特徴です。

九州大学が守りたかったもの

九州大学が長年面接を行わなかったのは、決して手抜きということではなく、「受験生の努力を、数字という最も残酷で、かつ最も公平な指標で評価したい」という、最高学府としてのプライドでした。かつての「面接なし」時代を知る医師たちは、今もその圧倒的な筆記試験を突破してきたという自負を持って現場に立っています。

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