近年、医学部入試における採点ミスや出題ミスが全国で相次いで発覚しています 。英語の記述問題の採点基準のばらつきや問題文の誤記、得点入力ミスなど、多様なミスによって本来合格すべき受験生が不合格となり、追加合格者の発表に至るケースも出ています 。医学部を目指す受験生や保護者にとって、人生を左右する入試でのミスは大きな不安材料です。ここ記事では、過去5年間(2020年~2025年)に全国の国公立・私立医学部で発覚した入試ミスの事例をまとめ、背景や大学の対応、再発防止策を考察します。
目次
- 1 全国医学部入試ミス事例一覧(2020~2025年)
- 1.1 関西医科大学(2020年)- 英語試験問題の誤記
- 1.2 金沢医科大学(2022年)- 物理の出題ミスで追加合格12名
- 1.3 帝京大学(2023年)- 物理の選択肢ミスで追加合格者1名
- 1.4 山形大学(2023年)- 理科の解答例誤り・採点ミスで5人追加合格
- 1.5 新潟大学(2023年)- 共通テスト得点の合算漏れで追加合格者1名
- 1.6 東北医科薬科大学(2024年)- 物理の正答重複で繰上げ合格1名
- 1.7 東邦大学(2024年)- 生物の採点ミスで5名が繰上げ合格
- 1.8 愛知医科大学(2024年)- 共通テスト利用入試で得点入力ミス、80名を追加合格
- 1.9 京都府立医科大学(2025年)- 英語記述の採点基準ミスで追加合格2名
- 2 入試ミス防止のために
全国医学部入試ミス事例一覧(2020~2025年)
まず、過去5年間に判明した主な医学部入試ミスの事例を以下の表にまとめます。
大学名(入試年度) | ミスの内容 | 追加合格者数 | 大学の対応・備考 |
関西医科大学(2020年) | 英語試験問題の誤記(大文字・小文字の表記ミス) | なし(全員正解扱い) | 該当設問を全員正解とし採点修正 |
金沢医科大学(2022年) | 物理の設問で出題ミス(選択肢に正答なし) | 1次合格8名、最終合格4名 | 全員正解とし再判定、合格者12名追加 |
帝京大学(2023年) | 物理の設問で正答選択肢が存在しないミス | 1名 | 当該箇所全員正解とし再判定、1名を追加合格 |
山形大学(2023年) | 物理・化学の解答例誤り、および採点ミス | 5名(医学部2名、工学部3名) | 採点や合否判定をやり直し、追加合格者に入学支援 |
新潟大学(2023年) | 共通テスト得点の合算漏れ(システム不具合) | 1名 | 点検で判明、追加合格者に補償と履修支援 |
東北医科薬科大学(2024年) | 物理の設問で正答肢重複(解答2つ存在) | 1名 | 両方正解とみなし再判定、繰上げ合格を通知 |
東邦大学(2024年) | 生物の採点ミス(正答の誤設定) | 5名 | 解答訂正を公表し再判定、繰上げ合格者に個別対応 |
愛知医科大学(2024年) | 共通テスト利用入試の得点入力ミス | 1次合格80名 | 誤不合格80名を追加合格、追加二次試験を実施 |
京都府立医科大学(2025年) | 英語記述問題の採点ミス(採点基準のばらつき) | 2名 | 採点やり直しで追加合格発表、入学希望者を支援 |
以下、それぞれの事例について詳しく見ていきましょう。
関西医科大学(2020年)- 英語試験問題の誤記
関西医科大学では2020年度一般入試(前期日程)の英語において問題文の誤記が発覚しました。大問IIの設問で、本来小文字の「w」で表記すべき箇所が誤って大文字「W」となっていたという単純なミスです。この誤記により正解が選べない状態になっていましたが、大学は速やかに該当設問を全受験生正解とする措置を取り、受験生の不利益を回避しました。追加合格者は発生しなかったものの、公式に謝罪と報告が行われています。
大学の対応・影響: 誤記と判明したのは試験実施直後で、大学は「受験者ならびに関係各位にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます」と謝罪し、該当箇所の採点処理を修正しました 。幸い合否判定への影響はなく追加合格者も出ませんでした。しかし受験生にとっては試験当日の混乱要因となりかねないため、問題作成段階でのチェック体制強化が求められます。
再発防止策: このような印字ミスを防ぐには、出題前の入念な校正作業が不可欠です。関西医科大学も教職員全員で再発防止に努めると表明しており、今後は複数人によるチェックで問題文の細部まで確認する体制を整えるものと期待されます。
金沢医科大学(2022年)- 物理の出題ミスで追加合格12名
金沢医科大学では2022年2月実施の一般入試(前期)で、物理の設問に正答が存在しない出題ミスが起きました。問題1の(3)および(4)で正解と設定した選択肢が誤りで、正答が選択肢中に無い状態だったのです。大学はミス判明後、当該部分を全員正解扱いとして再採点しました。
その結果、一次試験で8名、最終合格で4名の受験生が新たに合格となりました。大学はホームページ上でこの事実を公表し、該当者に個別連絡のうえ追加合格者への対応を行っています。
大学の対応・背景: 金沢医科大による公表によれば、問題の出題ミスは大学側のチェック不足によるものでした。当該問題を含む物理は多くの志願者が選択しており、ミス訂正による合否逆転者が合計12名に上ったため、影響は小さくありません。大学は速やかに追加合格者を発表するとともに、対象者には個別に入学意思を確認するなどの対応を取ったとされています 。中には既に浪人を決めていたり他大学に進学していた人も考えられるため、慎重なフォローが必要です。
再発防止策: 大学側は「二度とこのようなことがないよう教職員一同で再発防止に努める」とコメントしています。具体的には、入試問題の作問・校正プロセスの見直しや、複数担当者による点検の徹底、PDCAサイクルに基づく継続的改善を図るとしています。受験生側から見ても、入試問題集を出版する外部業者の指摘で判明するケースも多く(本件もおそらく出版社からの指摘)、大学には出題段階でのチェック強化が強く求められます。
帝京大学(2023年)- 物理の選択肢ミスで追加合格者1名
帝京大学医学部でも、2023年度一般入試(一次試験)で物理の出題ミスが発生しました。2023年1月27日の一次試験2日目・物理の問題において、大問〔1〕の設問で本来正解となる選択肢が存在しないミスが2問発覚しました(空欄(4)および(5))。大学はこの2問について全受験者を正解扱いとし、採点をやり直しています。
再判定の結果、新たに1名の追加合格者が出ました。帝京大学は4月10日付で公式にお詫びを公表し、受験生・関係者への深い謝罪と再発防止の決意を述べました。
大学の対応: この物理の問題ミスでは、一次試験合格者の追加発表という形になりました。通常、帝京大医学部は一次試験(学科)合格者のみが二次試験(面接)に進みます。しかし追加合格が判明したのは入学手続き後の4月となったため、この1名については特別な救済措置が取られた可能性があります。大学は「本人の意向を尊重し、不利益が生じないよう支援する」としており、仮にその受験生が別の進路に進んでいた場合でも転入学など柔軟に対応する姿勢を示しました(※京都府立医大の類似ケース)。
再発防止策: 帝京大学は「教職員全員で再発防止に努める」とコメントしています。今後は入試問題チェック体制の一層の強化が図られるでしょう。具体的には、物理など理系科目で専門教員複数による検証や模擬解答を実施し、正答が必ず存在するか、ミスがないかを入念に確認することが期待されます。
山形大学(2023年)- 理科の解答例誤り・採点ミスで5人追加合格
山形大学では令和5年度(2023年度)一般選抜(前期日程)において、大規模な入試ミスが明らかになりました。2023年2月25日の学力試験で、物理および化学の解答例に誤りがあり、一部の受験生の解答が正しく採点されていなかったのです。さらに、その再採点作業中に工学部化学の採点ミス(解答例誤りに起因しない単純ミス)が判明し、工学部の全科目を再度点検する事態にまで発展しました。
山形大学は公式サイト上で入試ミスの発生を公表し(上記画像はそのお知らせページ)、受験生や保護者に深く謝罪しました。同大学の調査によると、まず物理・化学の解答例誤りにより450件の得点修正が生じ、再判定の結果医学部医学科で2名、工学部機械システム工学科で2名の計4名が新たに合格となりました。さらに採点ミスの追加発覚に伴い再度採点し直した結果、工学部でさらに1名の追加合格者が出ています。合計5名(医学部2名・工学部3名)の追加合格者には大学から電話で合格とお詫びの連絡を行い、合格通知書の郵送も開始されました。
大学の対応・影響: 山形大学は7月26日に記者会見を開き、「受験生や保護者の皆様に多大な迷惑と心配をかけ深くお詫びします」と陳謝しました。追加合格となった5名には、入学希望者がいれば最大限配慮して受け入れる準備を進めるとしています。実際問題、合格発表から約5か月後(年度途中)での追加合格となったため、該当者が既に他大学に進学していたり浪人を決めている可能性があります。そこで大学は「追加合格者の支援」を表明し、必要に応じ転学科・編入学などの措置も講じる方針を示しました。また今回のミスを受け、7月13日付で学内に調査・検証・改善の委員会および総合対策本部を設置し、原因究明と再発防止策の徹底に乗り出しています。
原因と再発防止策: 外部の出版社からの指摘で解答例ミスが発覚したことからも、試験問題の検証プロセスの不備が浮き彫りになりました。大学は全学的な対策本部で原因を調査中ですが、判明している範囲では「解答例作成時の確認不足」や「採点段階でのダブルチェック不足」が問題でした。今後は基本的な点検作業の確実な実施と複数担当者によるチェック体制の強化を図るとしています。受験生の信頼を取り戻すためにも、入試問題作成から採点・集計までのプロセスを全面的に見直し、再発防止に努める方針です。
新潟大学(2023年)- 共通テスト得点の合算漏れで追加合格者1名
国立の新潟大学でも2023年度前期日程において合否判定ミスが起きました。原因はシステム上の不具合で、大学入学共通テストの得点を合算すべきところを、一部受験生について合算漏れのまま判定してしまったことです。
具体的には、共通テストの「数学」で「簿記・会計」または「情報関係基礎」を選択した受験者2名について、共通テスト得点が個別学力試験の点数に加算されずに合否判定資料が作成されてしまいました。その結果、本来合格ラインに達していたにもかかわらず1名の受験生が不合格と判定されていたのです。
大学の対応: このミスは、6月1日から実施された入試成績の開示請求で受験生からの問い合わせにより発覚しました 。「自分の共通テスト得点が成績に反映されていないのでは」との指摘を受け、大学がシステムを点検したところミスが判明しました。新潟大学は直ちに該当2名の得点データを再集計し合否を再判定、そのうち1名を新たに合格者と認定。6月5日付で学長による合格認定を行い合格通知を発送、当該2名には6月3日に謝罪と経緯説明を行ったとしています。
追加合格となった受験生に対して新潟大学は、「入学を希望する場合は2023年4月入学者と同時期に卒業できるよう最大限配慮し履修支援を行う」と表明しました。さらに、4月に入学していれば負担しなかったであろう費用(例えば他進路で支払った学費等)についても相談のうえ社会通念上相当な補償を行うとしています。この対応からも、半年遅れの合格による不利益を極力解消しようとする大学側の真摯な姿勢がうかがえます。
再発防止策: 新潟大学は「厳正・確実であるべき入学試験でこのような事態となり深くお詫び申し上げます」とコメントし、直ちに検証チームを設置しました。全学部の過去6年間(平成30年度~令和5年度)の入試データを総点検し、他に誤りがないことも確認しています。原因はシステムへの得点データ入力ミスでしたが、チェック体制が機能していなかった点が問題です。今後は合否判定システムのプログラム検証や複数担当者による得点データ突合などを徹底し、再発防止に努めるとしています。
東北医科薬科大学(2024年)- 物理の正答重複で繰上げ合格1名
宮城県の私立医大である東北医科薬科大学でも、令和6年度入試(2024年1月実施)で物理の出題ミスが判明しました。医学部一般選抜(一次試験)で受験生が選択した物理の問題において、本来正解とされた選択肢のほかにもう1つ正答となりうる選択肢が存在することが試験後の検証でわかりました。
大学は外部から2024年6月13日に問い合わせを受けて誤りを確認し、公式に「出題の誤りがあった」と公表しました。該当の物理1問について2つの選択肢を正解扱いに変更して再判定を行った結果、2次試験まで含めた総合判定で1名の追加合格(繰上げ合格)が発生しました。
大学の対応: 東北医科薬科大は6月19日付で学長名の「お詫びとご報告」を発表し、厳正であるべき入試でミスが起きたことを深く反省・謝罪するとともに経緯を説明しました。一次試験合格者数自体には変動がなかったものの、最終的な合否判定で1名が「不合格→繰上げ合格」に逆転しています。大学はその受験生に事情説明と謝罪を行い、合格通知とお詫び状を送付しました。追加合格者には既に個別連絡済みで、入学の意思確認や手続きについてフォローしました。
原因と再発防止策: ミスの原因は、物理の設問でダミー選択肢が実は正答になりうる内容だったことです。試験実施前に複数人で問題検証をしていれば発見できた可能性があります。本件では当初の採点では誤答として扱われた選択肢を選んだ受験生が不利を被ったため、合否に影響しました。大学は「試験問題のチェック体制をより強化し再発防止に努める」と表明しており 、問題作成段階での入念なチェック(例えば出題者とは別の教員による解答確認)を徹底する方針です。
東邦大学(2024年)- 生物の採点ミスで5名が繰上げ合格
首都圏の東邦大学医学部では、2024年度入学者選抜試験において理科(生物)の採点ミスが判明しました。2024年2月6日に実施した一般入試一次試験の生物で、ある1問の正解選択肢に誤りがあったため、本来正答すべき解答が不正解と処理されていました。この問題について8月に大学が解答訂正を公表し 、改めて採点し直したところ5名の受験生が新たに繰上げ合格となりました。
東邦大学はこの事実を受けて2024年12月17日付で公式サイトに「お詫びとご報告」を掲載し、「厳正であるべき入試でこのような事態を起こし心よりお詫び申し上げます」と謝罪しました。繰上げ合格となった5名には個別に対応し、ご理解をいただいたと報告されています。
大学の対応・背景: 生物の正答ミスは、試験後半年以上経ってから受験生などからの指摘で判明したものと思われます。大学は8月に問題と正解の訂正を公表していましたが 、追加合格者への対応状況は12月の時点で「個別に対応し、理解を得た」と記しています。おそらく該当者には合格の連絡とともに、入学辞退者が出た場合の補欠合格に準じた対応(例えば翌年度入学や他学部からの転学部受け入れなど)が提示された可能性があります。5人全員が東邦大学医学部に進学したのか、公表文面からは定かではありませんが、「ご理解をいただきました」という表現から、大学側提案に受験生側が納得したことが伺えます。
再発防止策: 東邦大学は今回のミスを受け、採点業務のチェック体制強化を宣言しました。今後は複数教員による採点確認や、問題作成段階での検証プロセス改善などが図られる見込みです。また受験生側も、万一不自然な採点結果を感じた場合には大学に問い合わせることが許されています(実際、成績開示などを通じて受験生がミスを指摘した例が新潟大など複数あります )。大学・受験生双方の協力で入試の公平性を確保していくことが重要です。
愛知医科大学(2024年)- 共通テスト利用入試で得点入力ミス、80名を追加合格
愛知医科大学で起きたミスは、その規模の大きさから「信じられないミス」と形容されています 。令和6年度医学部共通テスト利用入試(前期)において、共通テストの得点入力ミスがあり、本来一次試験合格とすべき受験生80名が誤って不合格と判定されていたのです。
この入試は募集人員約15名に対し872名が出願する狭き門でしたが 、大学入試センターから提供された受験生ごとの共通テスト得点を大学側のパソコンに入力する際にミスが生じ、一部科目で本来の得点より低い値が入力されてしまいました。その結果、一次試験合格発表(2月8日)時点で80人もの受験生が本来は合格ラインに達していたにも関わらず不合格とされていたことが、後日判明しました。
大学の対応: 愛知医科大学は2月20日、「共通テスト利用入試前期一次試験の合否判定にミスがあった」と公表し、該当の80名を追加一次合格としました。大学から80名全員に個別に電話やメールで連絡を行い、既に周知したとのことです。翌日の2月22日に予定されていた二次試験(面接)には、本来不合格とされた80名も追加で受験できるよう手配し、都合がつかない受験生のために別日程(2月25日)にも二次試験を実施する対応をとりました。
このミスは、受験生側のSNS投稿がきっかけで判明したという経緯も特筆されます。 によれば、一次合格にならなかった受験生の中から「自分より自己採点得点の低い知り合いが合格しているのはおかしい」という趣旨の書き込みが相次ぎ、大学がそれに気づいて精査し直したところ判明しました。本来、重要な得点データの扱いは複数人で二重三重にチェックすべきものですが、それをすり抜けたことになります 。
影響と受験生への配慮: 誤って不合格とされた受験生の心理的影響は甚大です。発表から訂正まで10日以上経過しており、その間に他大学の医学部入試を受けた人もいたでしょう。幸い追加二次試験が設定され救済措置は講じられましたが、追加試験日の2月25日が国公立大二次試験日と重なり「なぜ日程が重複するのか」との批判もSNSでみられました。これは国公立と併願していた受験生にとって難しい選択を迫るもので、大学の苦渋の決断ではありますが、更なる配慮の余地もあったかもしれません。
再発防止策: 本件は人的ミスであり、大学は「大失態と言わざるを得ない」とまで評されました。他大学に対しても教訓となったようで、「これを見て気を引き締めてほしい」と受験指導の専門家も述べています。再発防止には、得点入力時の複数担当者によるクロスチェックや、異常値検出システムの導入などが考えられます。愛知医科大学自身も入試課でのチェック体制を全面的に見直し、同様のミスが二度と起きないよう対策を講じるでしょう。何より、「自己採点と結果が合わない」と感じた受験生が声を上げやすい環境(今回SNSが果たした役割)も大切であり、大学には透明性ある情報公開と迅速な訂正対応が求められます。
京都府立医科大学(2025年)- 英語記述の採点基準ミスで追加合格2名
京都府立医科大学では、2025年度一般選抜(前期日程)の英語(二次試験)で採点ミスが発生しました。小説文を題材に登場人物の状態を英語で記述させる記述式問題だったのですが、採点者によって採点基準にばらつきが生じており、解答例に対する正誤判断が統一されていませんでした。本来は複数教員で点検すべきところ、この設問では1人の教員が採点し、もう1人による十分な点検がなされていないケースがあったことが原因です。
このミスは入学者の登校開始後、4月7日に学習塾関係者から大学に「採点誤りがあるのでは」と指摘があり判明したと報じられています。大学が採点をやり直した結果、医学科で新たに2人が合格最低点を上回り追加合格となりました。
大学の対応: 京都府立医科大は6月12日に記者会見を開き、副学長が頭を下げて謝罪しました。追加合格となった2名には「ご本人の意向を最優先し、本学への入学を希望される場合は不利益が生じないよう支援する」と約束しています。具体的には、もし既に他大学に進学していた場合でも転学措置や学費補填などを検討し、本学へ改めて入学したい場合には万全を期すという意味合いです。実際にどのような進路選択になったかは公表されていませんが、対象者の将来に配慮した手厚いフォローを行う方針が示されました。
再発防止策: 大学は速やかに学内教員からなる委員会を設置し、採点ミスが起きた経緯を詳しく検証する予定です。そして採点マニュアルの見直しやチェック体制強化など、再発防止策を策定すると発表しました。記述式問題の採点は主観が入りやすく難しい面もありますが、だからこそ必ず複数人で基準をすり合わせ、ダブルチェックする原則を徹底する必要があります。京都府立医科大のケースは、そうした基本が守られていなかったことへの戒めとなりました。受験生にとっては「自分の答案は適切に評価されているのか」という不安が残る出来事ですが、大学側も真摯に受け止め改善すると約束しています 。
入試ミス防止のために
過去5年の事例を見ると、医学部入試における採点ミス・出題ミスは決して稀なことではなく、全国の大学で起きていることが分かります。問題の難化・多様化や入試制度改革の過渡期にあって、入試実務の負担が増している背景も指摘されています。しかし、入試は受験生の人生に直結する「ハイステークス」な場です。一つひとつのミスが合否を左右し、受験生の進路や精神面に大きな影響を与えます。
大学側への要望: 各大学には、これらの事例を教訓に入試問題作成から採点・集計・合否判定までのチェック体制を総点検していただきたいと思います。具体的には、問題校正時の複数人チェック、マーク式の場合はダブルスキャンやプログラム検証、記述式の場合は複数採点者によるクロスチェックや採点基準の事前統一、得点データ入力時の二重確認など、ヒューマンエラーを防ぐ仕組みを強化すべきです。また、万一ミスが判明した場合には迅速かつ丁寧に公表・訂正し、受験生に寄り添った救済措置を講じることが信頼回復には欠かせません。
受験生へのメッセージ: 受験生としては、自分ではコントロールできない入試ミスに直面する可能性もゼロではありません。しかし重要なのは、万一不測の事態が起きても落ち着いて対応することです。成績開示制度などを活用し、「おかしい」と思ったら声を上げることも必要です(実際に新潟大学の事例では受験生の指摘がきっかけで救済されました )。とはいえ基本的には、大学も受験生もミスなく公正な入試を望んでいます。受験生の皆さんは過度に不安がることなく、自分の実力を発揮することに集中してください。万が一トラブルが起きても、多くの大学は誠意を持って追加合格や補償など対応しています。納得できないことがあれば相談窓口に問い合わせるなど適切に対処し、次のステップへ進みましょう。
最後に、入試ミスはあってはならないものですが、人の関与する以上ゼロにする努力とともに起きてしまった際のリカバリー体制も重要です。受験生・保護者の立場からすれば防ぎようのない部分もありますが、各大学の再発防止策が実効性を帯び、今後「医学部採点ミス」のニュースが聞かれなくなることを願っています。
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