大阪公立大学医学部医学科に合格すると、6年間の学生生活でどのキャンパスに通うのか気になると思います。大阪公立大学は大阪市内・府内に複数のキャンパスを持つ総合大学です。医学部生の場合、 1年次と2年次以降で通学キャンパスが大きく異なります。本記事では2026年度入学の医学部生をモデルに、年次ごとの通学キャンパスとその特徴をわかりやすく解説します。公式情報に基づいた正確な内容ですので、受験生のみなさんや保護者のも参考になさってください。
目次
1年次: 2025年秋以降は基幹教育は森之宮キャンパス
1年生では、まず一般教養にあたる「基幹教育科目」を森ノ宮キャンパスで学びます。2025年9月24日に大阪市城東区の森之宮キャンパスが開設され記念式典が行われ、大学全体の新たなメインキャンパスとなりました。森之宮キャンパスはJR・Osaka Metroの森ノ宮駅から徒歩という好立地にあり、最新の設備を備えた都市型キャンパスです。2026年度入学の学生からは、この森之宮キャンパスで基幹教育科目が開講されます。つまり、2026年の新入生は従来1年次に通っていた杉本キャンパスに代わり、森之宮キャンパスで教養科目を履修することになります。



注意:森ノ宮キャンパスという名称ですが、現時点ではJR環状線大阪城公園駅からのほうが徒歩11分、JR環状線森ノ宮駅・大阪メトロ森ノ宮駅からは徒歩15分かかります。大阪メトロは森ノ宮駅から分岐する森ノ宮新駅(仮称)を建設中で、2028年春には森ノ宮キャンパスまで徒歩数分の場所に新駅が開業予定です。
一方、医学部生の1年次には教養科目だけでなく、「医学教育の基盤」となる専門科目の導入も始まります。具体的には、心肺蘇生法実習(BLS講習)や早期臨床実習といったプログラムが1年生から取り入れられており、医療人としての第一歩を踏み出します。これら医学の導入教育や実習は、医学部附属病院のある阿倍野キャンパスで行われます。阿倍野キャンパスの医学部学舎(大阪市阿倍野区旭町)までは、JR・大阪メトロの天王寺駅あるいは近鉄大阪阿部野橋駅から徒歩約10分ほどでアクセスできます。大学附属病院内で行われる早期臨床実習では、医師や看護師の仕事ぶりを間近で見学し、医療に携わる者の心構えやチーム医療の大切さを学びます。初年度から天王寺エリアの阿倍野キャンパスと住吉エリアの杉本(森之宮)キャンパスを行き来することで、医学へのモチベーションが一層高まるでしょう。
注意: 大阪公立大学には他にも中百舌鳥キャンパス(堺市中区)がありますが、こちらは主に現代システム科学域、理学部、工学部、農学部などの学生向けで、医学部生が授業で通うことはありません。医学部医学科(医師養成課程)のキャンパスは基本的に杉本・森之宮と阿倍野に集約されています。
2年次: 阿倍野キャンパスで専門教育が本格スタート
2年生になると、阿倍野キャンパスがいよいよ主戦場になります。2年次からは医学の専門教育が本格的に始まり、講義・実習の開講場所はすべて阿倍野キャンパスに集約されます。大阪公立大学医学部の専門教育カリキュラムでは、解剖学や生理学などの基礎医学分野から病理学・薬理学、公衆衛生などの社会医学分野まで、医師に必要な知識を体系的に学びます。2年次前半には、人体の構造と機能を分子レベルから個体レベルまで総合的に学ぶ科目が配置され、続いて病気の成り立ちや感染症・免疫・薬物治療の基礎を習得していきます。座学だけでなく、実習やグループ学習を通じてチーム医療や問題解決能力も培われる時期です。


阿倍野キャンパスは医学部の本拠地だけあって、その設備・施設は非常に充実しています。キャンパス内には医学部の講義棟・研究棟はもちろん、医学部附属病院(大学病院)が直結しており、医学生は常に臨床現場と隣り合わせの環境で学べます。附属病院は病床数900床以上、診療科も60以上を有する大規模病院で、最先端医療の提供と医学教育の場を兼ねています。2年次以降はこの病院を見据えた形で日々の講義・実習が行われ、医学の学びが臨床と地続きになっていきます。
さらに阿倍野キャンパスには、スキルスシミュレーションセンター(SSC)と呼ばれる医療技能トレーニング施設があります。高度なシミュレーション機材を備えた全国屈指の施設で、年間1万人以上もの学生や医療者が利用しているというデータもあるほどです。ここでは、注射や縫合など基本手技の練習から、模擬患者を使った診察トレーニングまで、安全な環境で繰り返し技術を磨くことができます。2年生の段階でこうした設備に慣れておくことで、後の臨床実習にスムーズに入れるでしょう。
阿倍野キャンパスへの通学は非常に便利です。前述のように最寄りの天王寺駅・大阪阿部野橋駅から徒歩圏内で、大阪の中心部に位置するためアクセス抜群です。キャンパス周辺は日本一高い超高層ビル「あべのハルカス」や大型商業施設(キューズモールなど)が立ち並ぶエリアで、都会的な学生生活を送れるのも魅力です。医学部生にとって阿倍野は、「勉強」と「生活利便性」の両面で恵まれた環境と言えるでしょう。
3年次: 阿倍野キャンパスで基礎・社会医学の集大成
3年生も、引き続き阿倍野キャンパスが学びの拠点です。3年次前半までは基礎医学および社会医学系の科目を修了し、医学知識の土台を完成させる時期です。例えば病理学各論や微生物学、公衆衛生学など、臨床に踏み出す前に必要な領域をこの年次でしっかり身につけます。講義や実習はすべて阿倍野キャンパス内で行われ、教授陣や先輩医学生とも顔なじみになり、医学部コミュニティになじむ頃合いでしょう。
また3年次には、医学研究推進コースといったプログラムが用意されているのも大阪公立大学医学部の特徴です。例えば3年次の8~11月には、各学生が基礎系または社会医学系の研究室(講座)に配属され、教員の指導のもとミニ研究プロジェクトに取り組む機会があります。いわゆる研究実習(ポリクリ研究コース)で、論文講読や実験を通じて医学研究のマインドを養います。配属も阿倍野キャンパス内の各教室で行われるため、キャンパス内の設備(実験室や図書館など)をフル活用して最先端のテーマに触れられます。
3年生の後半あたりからは、徐々に臨床医学への橋渡しも始まります。4年次以降の臨床講義に備え、基礎で学んだ知識を統合しつつ、症例ベースの学習や病院での見学実習が増えていきます。幸い阿倍野キャンパスには附属病院が隣接していますから、講義で学んだ病態生理を実際の患者さんで確認する、といった能動的な学びも可能です。講義室を出ればすぐ目の前に病院があるという環境は、医学部生にとって大きなアドバンテージですね。
4年次: 阿倍野キャンパスで臨床医学の講義と模擬患者実習
4年生になると、いよいよ臨床医学の教育が本格スタートします。阿倍野キャンパスで開講される講義も、内科・外科をはじめとする各専門診療分野の内容が中心となり、ユニット型の臓器別講義によって系統立てて学びます。たとえば循環器ユニット、消化器ユニットというように、関連する科がまとまって講義と症例検討を行い、病気を全人的に理解するカリキュラムが組まれています。
4年次前半には臨床医学の座学に加え、学内での臨床技能実習も始まります。具体的には、臨床実習入門(臨床スターター実習)として診察の基本手技を学んだり、標準化患者(模擬患者)を相手に問診や身体診察の訓練を積んだりします。大阪公立大医学部では4年次にOSCE(客観的臨床能力試験)を実施し、これまで培った知識と技能を統合して適切に患者対応できるか評価します。OSCEは全国の医学部で取り入れられている関門試験ですが、阿倍野キャンパス内のSSCや臨床実習室で事前に十分練習できるため、安心して本番に臨めます。
4年次後半になると、5年次から始まる本格的な病院実習(ベッドサイド実習)に向けた準備が加速します。附属病院の各診療科を回って見学・短期実習を行い、自分の興味のある専門領域を意識し始める学生も出てくるでしょう。大学側も、学生が円滑に5年次の臨床実習へ移行できるよう、シミュレーション実習の時間を多く設けたり、臨床推論トレーニングを行ったりと手厚くサポートしています。このように、4年生は阿倍野キャンパス内での学習と模擬実習を通じて“医学生から臨床実習生へ”の助走をつける時期といえます。
5年次: 阿倍野キャンパス附属病院での本格的な臨床実習
5年生になると、医学部生活はいよいよ病院実習が中心になります。阿倍野キャンパスにある大阪公立大学医学部附属病院(旧市大病院)が、まさに5年次学生の主な「キャンパス」となります。5年次からは講義(座学)の時間は必要最小限にとどめられ、週の大半を病棟・外来での臨床実習に充てるカリキュラムに移行します。学生は白衣を着て医療チームの一員として振る舞い、指導医の監督のもと患者さんの診療補助や処置見学などを行います。これはクリニカル・クラークシップ(臨床参加型実習)と呼ばれる方式で、実際の医療現場で学ぶことで机上では得られない多くのことを吸収できます。
大阪公立大学医学部附属病院は先述の通り規模・症例数ともに充実した教育病院であり、5年生の臨床実習では主要な診療科は一通り経験します。内科系なら循環器内科・呼吸器内科・消化器内科など、外科系なら消化器外科・整形外科・脳神経外科などと、各科をローテーションしながら約2週間〜4週間ずつ実習を回るのが一般的です(各科の日程は大学が定めたクール制によります)。大学病院での実習を通じて、多くの患者さんと接し、問診から診察、検査説明、症例プレゼンテーションに至るまで、医学生として貴重な経験を積むことができます。
場合によっては、大阪公立大学と提携する教育協力病院(関連病院)でも一部実習を行います。たとえば高度専門医療を学ぶ目的で他の大病院に短期実習に行ったり、地域医療を学ぶため市中病院で研修したりと、バリエーションに富んだ臨床教育が受けられます。とはいえ拠点は阿倍野キャンパスの附属病院ですから、多くの場合は阿倍野キャンパスに朝登校し、そのまま病院内で実習、夕方にカンファレンスや症例報告会、といった流れになります。
5年次はまさに「飛躍の一年」です。日々の実習を重ねるごとに、医学知識が実体験として身についていくのを実感できるでしょう。阿倍野キャンパス内のスキルスラボや図書館も、この時期は国家試験対策や手技練習のためにフル活用されます。医学部附属病院にはMedCity21という予防医療センターや、最新設備の手術室などもあり、世界最先端の医療に触れられるのも刺激的です。大学公式情報でも「最先端の先進医療に触れることができる」ことが本学医学部の強みとして挙げられています。
6年次: 阿倍野キャンパスと関連病院で実習集大成&国試準備
6年生は医学部の最終学年。引き続き阿倍野キャンパス(附属病院)を拠点に、実習の集大成を迎えます。6年次前半は5年次に引き続き主要科での臨床実習を行いつつ、後半には各自の希望に応じた選択臨床実習(選択型クリニカル・クラークシップ=選択CC)が用意されています。大阪公立大学医学部では、4週間×5クールの選択CCプログラムがあり、学生の自主性を尊重して希望の診療科・実習先を選べる仕組みです。たとえば「小児科医になりたいから小児科を重点的に実習する」「離島医療を体験するため提携病院に行く」「最新の研究に触れるため海外の病院で実習する」など、多様な選択が可能です。選択先によっては阿倍野キャンパス以外の病院に行くケースもありますが、実習終了後は阿倍野の医学部に戻って報告会や試験を受けるなど、常に阿倍野キャンパスが活動の中心となる点は変わりません。
6年次の後半になると、いよいよ医師国家試験に向けた勉強も本格化します。阿倍野キャンパスの医学情報センター(図書館)や講義室は、国家試験対策講座やグループ勉強会の場としても開放されます。附属病院での実習で得た経験は国家試験の臨床問題を解く上でも大いに役立つでしょう。教授陣もチューターとして勉強の支援をしてくれるなど、大学全体で合格を後押ししてくれます。
総じて6年生は、実習の総仕上げと卒業試験・国家試験準備の一年です。キャンパス移動も阿倍野と実習先病院との間が主で、1年次のように遠方キャンパスへ通う必要はありません。卒業直前には、医学部での6年間の思い出が詰まった阿倍野キャンパスで謝恩会や卒業式関連行事が行われることも多く、仲間とともに学生生活を締めくくる場ともなります。
まとめ:6年間のキャンパスライフを見通して
以上、大阪公立大学医学部における年次ごとの通学キャンパスについてまとめました。簡単に振り返ると、1年次は教養科目の履修のため杉本キャンパス(2026年度以降は森之宮キャンパス)に通いながら、一部阿倍野キャンパスで医学の導入教育を受けます。2年次以降は一貫して阿倍野キャンパスが学びの場となり、講義・実習から附属病院での臨床研修まで、阿倍野を中心に医学教育が展開されます。大阪公立大学医学部のカリキュラムとキャンパス配置は、「まず総合大学の一員として幅広い教養を身につけ、その後は附属病院のある専門キャンパスで徹底的に医学を学ぶ」という理想的な流れになっているのです。
各キャンパスの所在地やアクセスも押さえておきましょう。杉本キャンパス(大阪市住吉区杉本)はJR杉本町駅から徒歩すぐで、関西空港からも電車で約1時間と遠方からの通学もしやすい場所にあります。森之宮キャンパス(大阪市城東区森之宮)は大阪環状線・長堀鶴見緑地線の森ノ宮駅近くで、大阪市内中心部へのアクセス良好です。そして医学部の阿倍野キャンパス(大阪市阿倍野区旭町)はJR・地下鉄天王寺駅および近鉄阿部野橋駅から徒歩10分圏内の都心に位置し、附属病院を有する医学の拠点です。一方、中百舌鳥キャンパス(堺市中区学園町)は主に他学部向けであり、医学部生が通学する必要は基本的にありません。
6年間の医学部生活は決して平坦ではありませんが、キャンパスごとの特色を活かしながら成長できる環境が大阪公立大学には整っています。入学前に「自分はどの年にどのキャンパスにいるのか」を把握しておくことで、住まいや通学の計画も立てやすくなり、不安の解消につながるでしょう。大阪公立大学医学部での学びが、皆さんにとって充実したものとなるよう応援しています。未来の医師として羽ばたく日まで、杉本・森之宮、そして阿倍野の各キャンパスで得られる経験を大切にしてください。
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